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前回、フランス語の不思議について書きました。

英語では、

I eat.
私は食べます。

I am eating.
私は食べています。

と、現在形と現在進行形をきちんと区別します。

ところがフランス語では、どちらも基本的には、

Je mange.

でOK。

「食べてる最中かどうか?」

そんなもん文脈で分かるやろ。

どうもフランス語は、時制については意外とおおらかなようです。

ところがDuolingoを続けていると、さらに衝撃的な問題が出てきました。

「今朝からずっと水を飲んでいます」

出てきた英文がこちら。

I have been drinking a lot of water since this morning.

「私は今朝からずっと、たくさん水を飲んでいます」

英語を勉強した人なら、

have been drinking

を見て、

「おお、現在完了進行形やな」

と分かります。

中学・高校時代に苦労した、あれです。

have + been + ~ing

過去のある時点から現在まで、ずっと動作が続いている。

だから、

I drink.

でも、

I am drinking.

でもなく、

I have been drinking.

英語はここをきっちり区別します。

ではフランス語ではどう言うのでしょう。

答えは、

Je bois beaucoup d’eau depuis ce matin.

……。

Je bois.

これ、普通の現在形です。

「私は飲みます」です。

ちょっと待て。

英語がわざわざ、

have + been + drinking

と3段重ねにして表現しているものを、

bois

だけで済ませるんかい!

フランス語には現在完了形がないの?

正確には、そういうわけではありません。

フランス語には、

passé composé(複合過去)

という時制があります。

たとえば、

J’ai mangé.

「私は食べました」

です。

形を見ると英語の、

I have eaten.

にそっくりです。

フランス語の ai は avoir、つまり英語の have に近い動詞。

だから構造だけ見ると、

J’ai mangé.
I have eaten.

よく似ています。

ところが、この2つは使い方が同じではありません。

フランス語の passé composé は、現代フランス語では普通に「過去に起きたこと」を表すために使います。

つまり英語の、

I ate.

に相当する場面でも、

J’ai mangé.

を使います。

ですから、

「英語の現在完了形 = フランス語の複合過去」

と単純に覚えると、ややこしくなります。

では「今朝からずっと」はどこへ行った?

ここで重要なのが、

depuis

です。

「~以来」「~からずっと」という意味があります。

先ほどの、

Je bois beaucoup d’eau depuis ce matin.

なら、

depuis ce matin

=「今朝からずっと」

です。

つまりフランス語としては、

Je bois
私は飲んでいる

+

depuis ce matin
今朝からずっと

これで、

「今朝からずっと飲んでいる」

と分かるわけです。

なるほど。

言われてみれば確かに分かります。

でも英語を習った身としては言いたくなります。

「have been drinking はどこ行ったんや!」

「10年間ここに住んでいます」も現在形

もう一つ比べてみましょう。

英語なら、

I have lived here for ten years.

「私はここに10年間住んでいます」

過去に住み始めて、今も住んでいる。

だから現在完了です。

ところがフランス語なら、

J’habite ici depuis dix ans.

です。

J’habite

は普通の現在形。

「私はここに住んでいます」

そこに、

depuis dix ans

「10年前からずっと」

をくっつける。

それだけ。

フランス語としては、

「10年前からって言うてるんやから、今も住んでるって分かるやろ」

ということなのでしょう。

またそれか!

英語は動詞、フランス語は文脈?

ここまで比べると、両言語の違いが見えてきます。

英語では、

I eat.
I am eating.
I have eaten.
I have been eating.

と、動詞の形を変えることで時間関係をかなり細かく表します。

一方、フランス語では英語なら進行形や現在完了になる場面でも、

Je mange.

のような現在形と、

maintenant(今)

depuis(~からずっと)

などを組み合わせて表現できる場合があります。

英語が、

「動詞の形を見れば分かるようにしときました」

なら、

フランス語は、

「周りの言葉もちゃんと読んでや」

という感じでしょうか。

でも「今日」には異様にこだわる

ここで前回の記事に戻ります。

フランス語で「今日」は、

aujourd’hui

です。

歴史的な成り立ちをざっくり見ると、

「今日という日の、この日」

みたいな、えらく念入りな表現です。

「今日」というだけなのに、

aujourd’hui

一方、

「今朝からずっと水を飲み続けています」

という複雑な時間関係になると、

Je bois … depuis ce matin.

現在形+depuis。

……。

そこは簡単に済ますんかい!

でも、考えてみれば英語のほうが不思議なのかもしれない

ただ、ここで少し見方を変えてみます。

Je bois beaucoup d’eau depuis ce matin.

「私は水を飲んでいる。今朝からずっと」

これで意味は十分伝わります。

そう考えると、

I have been drinking …

と、

have を出して、

been を出して、

さらに drinking にして……。

フランス人からすれば、

「なんでそこまで動詞をいじるねん?」

と思うのかもしれません。

私たちは学校で英語を習ったので、英語の仕組みを「普通」だと思っています。

でも外国語をもう一つ勉強すると、その「普通」が崩れてきます。

英語には英語の理屈があり、

フランス語にはフランス語の理屈がある。

どちらが合理的というより、

時間をどう言葉にするかという発想そのものが違う

のでしょう。

そして今日もフランス語を勉強する

というわけで今回分かったこと。

英語:

I have been drinking a lot of water since this morning.

フランス語:

Je bois beaucoup d’eau depuis ce matin.

英語を習った人間からすると、

「現在完了進行形まで現在形で済ますんかい!」

とツッコミたくなります。

でも、それが分かってくると、フランス語が少し面白くなってきます。

そして今日もDuolingoを開く。

そう。

あの長ったらしい、

aujourd’hui

――「今日という日の、この日」に。

だから、いったいどの日やねん!