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「Trump通り」を「TACO通り」に? そもそもなぜカナダにトランプ氏の名前の道路があるの?

ニュースを読んでいて、思わず「ん?」と目が止まりました。

カナダの首都オタワにあるTrump Avenue(トランプ通り)を、「TACO Avenue」に改名する案が出ているというのです。

TACO?

メキシコ料理の「タコス」と何か関係があるんかなと思ったら、そうではありません。

TACO = Trump Always Chickens Out

の頭文字。

「トランプはいつも最後には怖気づいて引っ込む」といった意味で、トランプ大統領の関税政策を揶揄する言葉です。

しかし、このニュースを読んでいて、それ以上に気になったことがありました。

「ちょっと待って。そもそも、なんでカナダの首都にTrump Avenueなんて道路があるん?」

調べてみると、なかなか面白い歴史がありました。

Trump Avenueがあるのは「Central Park」

Trump Avenueがあるのは、オタワのCentral Park地区という住宅街です。

Central Parkと聞けば、ニューヨークを思い浮かべますよね。

実は、そのイメージで正解です。

この地区は1990年代後半から開発された住宅街で、道路にはニューヨークにちなんだ名前が数多く付けられています。

たとえば、

  • Manhattan Crescent
  • Staten Way
  • Madison Park
  • Gotham Private
  • Grammercy Park

など。

つまり、街全体がちょっとした**「ニューヨーク風ネーミング」**になっているんですね。

その中の一つがTrump Avenueだったわけです。

25年前の「Trump」は大統領ではない

ここで時代を25年ほど巻き戻してみましょう。

現在、「Donald Trump」と聞けば、ほとんどの人がアメリカ大統領を思い浮かべるでしょう。

しかしTrump Avenueが名付けられた1990年代後半、トランプ氏はまだ政治家ではありません。

当時のトランプ氏は、ニューヨークを拠点に活動する有名な不動産開発業者・実業家でした。

高層ビルやホテル、カジノなどを手掛け、「TRUMP」という名前自体がニューヨークの派手なビジネス文化を象徴するブランドのようになっていました。

ですから当時、

Central Park

Manhattan

Staten

Trump

と並べても、それほど不自然ではなかったのでしょう。

つまりTrump Avenueは、

「アメリカ大統領を称えるために付けられた道路」

ではありません。

「ニューヨークを代表する有名実業家の名前」

として採用されたものだったのです。

ところが約20年後、本当に大統領になった

ところが、その後の展開がすごい。

トランプ氏は2015年に大統領選への立候補を表明。

2016年の大統領選に勝利し、2017年1月に第45代アメリカ大統領に就任しました。

つまり、

「ニューヨークの有名実業家から取った道路名」

だったはずが、約20年後、

「アメリカ大統領の名前が付いた道路」

になってしまったわけです。

道路名を決めた人たちも、さすがにここまでは予想していなかったでしょう。

そして「名前を変えよう」という話に

トランプ氏が政治家になると、その評価は大きく分かれるようになります。

そこでオタワでも、

「Trump Avenueという名前を変えたほうがいいのでは?」

という話が出るようになりました。

実は改名問題は今回が初めてではありません。

2021年にもTrump Avenueの62世帯を対象に意向が調べられ、

改名賛成 21世帯
改名反対 21世帯
回答なし 20世帯

という結果になりました。

なんと21対21。

そのため改名には至りませんでした。

反対した住民も、必ずしもトランプ氏を支持していたわけではなかったようです。

道路名が変われば、住所も変わります。

運転免許証、銀行、保険、クレジットカード、郵便物……。

いろいろなところで住所変更が必要になります。

「名前には思うところがあるけど、住所変更は面倒やなあ」

という現実的な問題もあるわけです。

2026年、再び改名問題が浮上

そして2026年8月、この問題が再び動き出しました。

背景にあるのが、アメリカとカナダの関係悪化です。

トランプ政権による関税政策などをめぐって両国の対立が強まり、オタワの市議から

「カナダの首都にDonald Trumpの名前を冠した道路があるのは恥ずかしい」

という声が上がりました。

オタワ市議会は8月26日、Trump Avenueの名称変更に関する議案を全会一致で可決しました。

ただし、これで新しい名前が決まったわけではありません。

実際に道路名を変更するには住民の支持が必要で、新名称についても今後手続きが行われます。

そこで登場した「TACO Avenue」

そして新しい道路名の候補として出てきた一つが、

TACO Avenue

です。

「Trump」を「TACO」に。

たった一単語の変更ですが、かなり強烈です。

というのも、ここでいうTACOは食べ物ではなく、

Trump Always Chickens Out

の略だからです。

「chicken out」は英語で、

怖くなってやめる、尻込みして撤回する

という意味があります。

つまりTACOは、

「トランプは強硬なことを言うけれど、結局最後には引っ込める」

という批判を込めた言葉なんですね。

もともとは金融市場で、トランプ氏が高い関税を打ち出して市場を混乱させても、最終的には延期や緩和に動くことがあるという見方から広がった表現です。

Trump AvenueをTACO Avenueに変えるとなれば、単なる改名ではありません。

道路そのものが政治的な皮肉になってしまいます。

なかなか強烈ですね。

TACO以外にも候補がいっぱい

しかも候補はTACOだけではありません。

報道によると、

Obama Avenue
Ontario Avenue
Canada Avenue
Beaver Avenue
Canada Goose Avenue
Gulf of Mexico Avenue
Pelosi Avenue

など、さまざまな案が出ています。

中には、長年トランプ氏を批判してきたコメディアンの名前を取ったRosie O’Donnell Avenueという案まであります。

もちろん、これらはあくまで候補として挙がっている段階です。

さらに「Lake America」まで登場

話をさらにややこしくしたのが、Trump Avenue問題の直後に起きた出来事です。

オタワ市議会で議論が行われた翌日の8月27日、トランプ大統領は、アメリカ政府内でオンタリオ湖を**「Lake America(アメリカ湖)」**と呼ぶよう指示する大統領令に署名しました。

オンタリオ湖はアメリカとカナダの国境にまたがっています。

当然ながら、アメリカ大統領が命令したからといって、カナダ側まで正式に「Lake America」になるわけではありません。

しかしタイミングがタイミングだけに、

アメリカ側
「Lake Ontario → Lake America」

カナダ側
「Trump Avenue → TACO Avenue?」

という、なんとも皮肉な「名前合戦」のような状況になっています。

同じ名前でも、時代によって意味が変わる

このニュースで一番興味深いのは、Trump Avenueという名前自体は25年以上ほとんど変わっていないことです。

変わったのは、Trumpという名前が持つ意味です。

1990年代後半なら、

Trump
=ニューヨークの有名不動産王

だった。

2017年には、

Trump
=アメリカ大統領

になった。

そして2026年のカナダでは、

Trump
=関税や米加関係をめぐって強い反発を招く政治家

という意味まで背負うようになっています。

名前は同じなのに、社会の側が変わると、その名前の意味まで変わってしまう。

Trump Avenueは、そのことを非常に分かりやすく示しているように思います。

おわりに

「Trump AvenueをTACO Avenueに変更?」

そんなニュースを見て、

「TACOって何?」

そして、

「そもそも、なんでカナダにTrump Avenueがあるん?」

と疑問に思ったのが今回の話の始まりでした。

調べてみると、Trump Avenueは大統領を称えて付けられた名前ではなく、1990年代後半、ニューヨークをテーマにした住宅街の一部として、当時有名なニューヨークの実業家だったDonald Trump氏から名付けられた道路でした。

それから約30年。

実業家は大統領になり、その大統領とカナダとの関係が悪化し、今度はその名前を揶揄する「TACO」に変えようという案まで出ている。

道路標識一枚にも、時代の変化が映るものなんですね。

さて、最終的にTrump Avenueは何という名前になるのでしょうか。

個人的には、ちょっと気になるニュースです。

CNN「オタワ市の『トランプ通り』、『TACO通り』に変更検討」