「タコは宇宙から来た」
そんな説があるそうです。
いやいや、さすがにそれはないやろ。
……と思うんですが、タコについていろいろ調べてみると、
「まあ、そう言いたくなる気持ちは分からんでもないな」
となってきます。
考えてみたら、タコという生き物、かなり変なんです。
よく考えたら、タコはだいぶ変です
まず腕が8本あります。
まあ、これは誰でも知ってます。
でも、ただ8本あるだけやないんです。それぞれの腕にはたくさんの神経細胞があって、かなり独立して動くことができます。
体の色や模様も、あっという間に変えます。
狭い隙間にもニュルニュル入っていきます。
目もかなり高性能です。
そのうえ頭もよくて、迷路を解いたり、容器のふたを開けたり、道具みたいなものを利用したりすることまであります。
ここまでくると、
「これ、ほんまに地球の生き物なん?」
と言いたくなるのも分かります。
しかもタコの神経系は、私たち人間とはかなり違います。
人間の場合、「脳が司令塔になって手足に命令する」という感じですが、タコは神経細胞のかなりの部分が腕のほうにも分散しています。
ものすごく乱暴に言うと、
8本の腕が、それぞれある程度自分で判断して動いているようなものです。
なんやねん、それ。
もうSF映画に出てくる宇宙生物みたいです。
そこで登場する「宇宙から来た説」
実際、2018年には一部の研究者が、生命が宇宙から地球へやって来た可能性を論じる論文の中で、タコについてかなり大胆な仮説を提示しました。
その背景にあるのが「パンスペルミア説」です。
簡単に言うと、
生命そのもの、あるいは生命の材料が宇宙から地球へ運ばれてきたんちゃうか
という考え方です。
そして、その議論の中では、なんと
「タコの祖先や卵のようなものが、彗星によって地球へ運ばれてきた可能性」
まで持ち出されました。
いやいや。
そこまでいくと、
「タコ、お前どこから来てん?」
という話になってきます。
ただし、証拠はありません
ここは大事なところです。
現在の生物学では、
「タコは宇宙から来た」という説は支持されていません。
タコのDNAを調べれば、地球上のほかの生物との共通点がちゃんと見つかります。
イカや貝など、ほかの軟体動物とも進化的につながっています。
つまり、ある日突然タコが宇宙船から降りてきて、
「こんにちは。今日から地球に住ませてもらいます」
となったわけではありません。
長い進化の歴史の中で、今のような不思議な能力を身につけてきたと考えるほうが、科学的にはずっと自然です。
でも、この話のおもしろいところはそこやないんです
では、「タコ宇宙人説」は単なるトンデモ話なんでしょうか。
私はむしろ、この話のおもしろさは別のところにあると思います。
私たちは無意識のうちに、
「頭のいい生き物というのは、人間みたいなものや」
と思っています。
大きな脳があって、そこから手足に指令を出して、目で世界を見て、手を使って物を操作する。
ところがタコは、そんな私たちの常識とはかなり違う方法で、高度な行動能力を身につけています。
人間とはまったく違う進化の道を通って、
「知能」という同じような場所にたどり着いた生き物
とも言えます。
だからタコを見ると、私たちはどこか「異星人っぽさ」を感じるのかもしれません。
宇宙から来てへんからこそ、おもしろい
結局のところ、現在の科学的な答えは、
「タコはたぶん宇宙から来てません」
ということになります。
ちょっと残念です。
でも、考えてみたら、こっちのほうがすごいんちゃうでしょうか。
宇宙から来た未知の生命体やから変なんではありません。
私たちと同じ地球で進化した結果、あんな生き物ができあがったんです。
8本の腕を自在に動かして、体の色を変えて、狭い穴をすり抜けて、瓶のふたまで開ける。
地球という星は、私たちが思っている以上に、いろんな生き物を生み出す力を持っているようです。
そう考えると、スーパーの鮮魚売り場でタコを見かけたときも、ちょっと見方が変わります。
「こいつ、宇宙人ではないらしいで」
と思いながら眺めてみる。
その横を見ると、
「たこ焼き用」
と書いてあったりします。
宇宙から来たんちゃうかと言われるほど不思議な生命体を、最終的にソースとマヨネーズで食べてしまう。
ひょっとしたら一番謎なのは、タコやなくて人間のほうかもしれません。
