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腹が立つったらありゃしない! 昭和の日本語は味わい深い

「腹が立つったらありゃしない!」

最近、こんな言い回しを耳にすることが少なくなった気がします。

昭和のドラマや落語ではおなじみの表現ですが、今の若者なら「マジでムカつく!」「めっちゃ腹立つ!」でしょうか。

しかし、この「〜ったらありゃしない」、よく考えるとなかなか不思議な日本語です。

今回は、このちょっと古風な言い回しについて考えてみます。

「ありゃしない」って、何がないの?

例えば、こんな表現があります。

  • 腹が立つったらありゃしない!
  • うるさいったらありゃしない!
  • 情けないったらありゃしない!
  • かわいいったらありゃしない!

いずれも「ものすごく〜だ」という意味です。

ところが「ありゃしない」は「ありはしない」が縮まったもの。

つまり、否定形なんですね。

腹が立っているのに「ありはしない」とは、これいかに?

実は「これほど腹が立つことは、ほかにありはしない」というような、程度の甚だしさを強調する表現なのです。

もっとも、普段こんな文法を意識して使っている人はいないでしょう。

「といったら」だけでも十分伝わる

そもそも「〜といったら」だけでも、感情を強調できます。

「昨日の暑さといったら!」

これだけで、相手は「よほど暑かったんやな」と理解してくれます。

そこへ「ありゃしない」を付け加えるわけです。

「昨日は暑いったらありゃしない!」

もう、暑さに対する不満があふれ出しています。

単に「非常に暑かった」と説明するより、ずっと感情が伝わってきませんか?

昭和の日本語には芝居っ気がある

この表現の面白さは、少し大げさなところです。

「腹が立つったらありゃしない!」

と言われると、怒っている本人の表情まで浮かんできます。

腰に手を当てて、眉間にしわを寄せているような……。

落語の登場人物が言っても違和感がありません。

一方、現代の「マジでムカつく!」は、短くて直接的です。

どちらが優れているという話ではありませんが、昔の言い回しには、感情をちょっと芝居がかった形で伝える面白さがあります。

日本語は否定形で感情を強調する?

考えてみると、日本語には否定形を使って感情を強調する表現がたくさんあります。

「うれしくてたまらない」

「面白くてしょうがない」

「気になって仕方がない」

どれも否定形なのに、伝えたいのは感情の強さです。

英語でも I can’t stand it!(我慢できない!)のように否定形で強い感情を表すことがあります。

言葉というのは、なかなか面白いものですね。

こういう日本語、残ってほしいですね

言葉は時代とともに変わります。

「超」「めっちゃ」「マジ」「ヤバい」など、短い言葉で感情を伝えるのも便利です。

ただ、「〜ったらありゃしない」のような、ちょっと回りくどくて大げさな表現にも独特の魅力があります。

意味だけでなく、話し手の表情や声の調子まで想像できるからです。

こういう日本語が少しずつ使われなくなるのは、寂しい気もします。

もっとも、若い人に無理やり使ってもらう必要はありません。

昭和世代が堂々と使い続ければいいのです。

「最近の若者は『ヤバい』ばっかりで、語彙が少ないったらありゃしない!」

……なんて言ってしまうと、今度は若者から、

「昭和の人って、説教くさいったらありゃしない!」

と返されそうですね(笑)。