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「ブルペンが強い」って、どういうこと?

野球を見ていると、当たり前のように出てくる「ブルペン」という言葉。

「ブルペンでは○○投手が投球練習を始めました」

なんて実況を聞くので、私はずっと、

ブルペン=投手が投球練習をする場所

だと思っていました。

もちろん、それで間違いではありません。

ところが英語の野球記事を見ていると、こんな表現が出てきます。

The Dodgers have a strong bullpen.

ドジャースは「強いブルペン」を持っている?

ブルペンが強いって何やねん。
壁が頑丈なのか?

……もちろん、そういう話ではありません。

英語の bullpen には、「ブルペンという場所」だけでなく、リリーフ投手陣そのものという意味もあるのです。

ブルペンが試合を壊す?

たとえば、

The bullpen blew the lead.

という表現。

直訳すると「ブルペンがリードを吹き飛ばした」ですが、実際には、

「リリーフ投手陣がリードを守れなかった」

という意味です。

The bullpen is tired.

なら、

「ブルペンが疲れている」

……建物が「もうしんどいわ」と言っているわけではなく、

「リリーフ陣が連投などで疲れている」

ということ。

つまり bullpen は、

場所 → そこにいる投手たち → リリーフ陣という戦力

と意味が広がっているわけです。

ところで、なんで「bull」なの?

ここでもう一つ疑問が湧きます。

そもそも、なぜ bullpen なのでしょう。

英語で、

bull = 雄牛
pen = 家畜などを入れておく囲い

です。

ということは、直訳すると、

「雄牛を入れておく囲い」

です。

急に牧場っぽくなりました。

これがなぜ野球用語になったのかについては諸説あって、実は完全には決着していません。

昔の野球場では、現在のような立派なブルペンがなく、ファウルグラウンドの一角などに投手を待機させる囲いのような場所がありました。それを家畜の pen に見立てた、という説があります。

ほかにも、昔の野球場に掲示されていた Bull Durham というたばこの広告が関係しているという説もあります。

さらに bullpen という言葉は、野球で使われる以前から、人をまとめて待機させたり収容したりする場所という意味でも使われていました。

なので、

雄牛の囲い

人を待機させる場所

投手を待機させる場所

と変化した可能性もあります。

どの説が正解なのかはともかく、「ブルペン」という聞き慣れた言葉の向こうに雄牛がいるとは思いませんでした。

「ブルペンに行く」のは誰?

さらに英語では、

go to the bullpen

という表現もよく使われます。

たとえば、

The manager doesn’t want to go to the bullpen too early.

直訳すると、

「監督はあまり早くブルペンへ行きたくない」

となります。

監督が「ちょっとブルペン行ってくるわ」と席を立つ話ではありません。

これは、

「先発を降ろしてリリーフ投手を投入する」

という意味です。

ブルペンという「場所」が、そこにいる「投手」を表し、さらに「リリーフ投手を使う」という意味にまで広がっているわけです。

よく考えると日本語にもある

こういう表現、実は日本語にもあります。

たとえば、

「永田町が反発している」

永田町の道路やビルが反発しているわけではありません。

政治家や政界のことです。

「官邸が判断した」

これも建物が会議をして決めたわけではありません。

英語でも、

the White House

が建物ではなく「アメリカ政権」を表したり、

the bench

が「ベンチ」ではなく「控え選手」を表したりします。

こういう「場所の名前で、そこにいる人を表す」表現を、言語学では**換喩(メトニミー)**と呼びます。

難しそうな名前ですが、やっていることは意外と身近です。

単語はけっこう自由に育っていく

英語を勉強すると、

bullpen=ブルペン、投球練習場

と覚えて終わりがちです。

でも実際の言葉は、そんなにお行儀よく一つの意味だけに収まってくれません。

場所 → そこにいる人 → その人たちの戦力

と、どんどん意味が広がっていきます。

だから、

The Dodgers have a strong bullpen.

と書いてあったら、

「ドジャースのブルペンは頑丈な造りなんやな」

ではなく、

「ドジャースはリリーフ陣が強い」

ということ。

普段何気なく聞いている野球用語も、ちょっと立ち止まって調べてみると、意外なところにつながっています。

英語の勉強というより、こういう「言葉の寄り道」が私は結構好きです。

そして次に野球中継で「ブルペン」という言葉を聞いたら、ほんの一瞬だけ雄牛の姿が頭に浮かんでしまうかもしれません。

それはそれで、ちょっと困りますが。