はじめに
英検2級の英作文は、内容の質だけでなく、限られた試験時間内にいかに効率よく解答するかも重要なポイントです。第1回から第4回までで、要約問題の攻略法、意見文の書き方、語彙力アップの方法、そして文法ミスを防ぐ対策を解説してきました。今回は時間配分と実践的な解答テクニックにフォーカスします。
英検2級のライティングセクションでは、約25分の制限時間内に要約問題と意見文の両方に取り組む必要があります。時間が足りずに最後まで書けなかったり、見直す余裕がなかったりすると、実力を十分に発揮できません。この記事では、限られた時間を最大限に活用するための具体的なテクニックを紹介します。
英検2級ライティングの時間的制約
英検2級のライティングセクションについて、まず時間的な制約を確認しておきましょう。
- 全体の試験時間: 約85分(リスニング約25分、リーディング&ライティング約60分)
- ライティングのみの目安時間: 約25分
- 要約問題: 目安約10分(45~55語)
- 意見文: 目安約15分(80~100語)
これを踏まえて、効率的な時間配分と解答テクニックを考えていきます。
効率的な5つの時間配分ステップ
ステップ1:試験開始前の準備(試験会場で)
試験が始まる前に、心の準備と簡単な確認をしておくことで、本番での時間を効率的に使うことができます。
ポイント
- 試験前に深呼吸をして、リラックスする
- 腕時計をセットし、開始時間と終了予定時間を確認する
- 筆記用具を複数用意しておく
- 試験時間の逆算計画を頭に入れておく
- 例:「リーディングは35分で終わらせ、ライティングに25分使おう」
ステップ2:ライティングセクションへの移行(リーディング終了後)
リーディングセクションが終わったら、スムーズにライティングに移行するための工夫をしましょう。
ポイント
- リーディングセクションは予定時間内(約35分)で終わらせる
- リーディングが長引いても、最低でもライティングに20分は確保する
- ライティングに入る前に、残り時間を確認する
- 要約問題と意見文の配点と難易度を考慮して時間配分を決める
- 要約問題:10分
- 意見文:15分
ステップ3:要約問題の効率的な解き方(10分)
要約問題は、原文を読んで45~55語にまとめる問題です。効率的に解くためのステップを確認しましょう。
時間配分の目安
- 原文読解: 3分
- キーポイント抽出: 2分
- 要約文作成: 3分
- 見直し・語数確認: 2分
効率化のテクニック
- 原文の最初と最後の段落に注目する(主題が書かれていることが多い)
- 各段落の最初の文に注目する
- 太字や下線などの強調部分があれば、それに注目する
- メモは箇条書きで簡潔に取る
- 語数を数えながら書く習慣をつける
ステップ4:意見文の効率的な解き方(15分)
意見文は、与えられたテーマについて80~100語で自分の意見を述べる問題です。時間を効率的に使うためのステップを確認しましょう。
時間配分の目安
- 問題理解・立場決定: 1分
- 構成メモ作成: 2分
- 本文作成: 9分
- 見直し・語数確認: 3分
効率化のテクニック
- 迷ったら書きやすい方の立場(賛成/反対)を選ぶ
- 定型の構成パターンを持っておく(導入→主張→理由→結論)
- 理由は2~3点に絞る
- 使い慣れた表現を活用する
- 複雑な文より、シンプルで正確な文を心がける
ステップ5:最終チェックの効率的な方法
時間の許す限り、最終チェックを行うことで、減点を防ぎ、高得点につなげることができます。
効率的なチェック方法
- S-V-O-C チェック: 各文に主語と動詞があるか確認する
- 時制チェック: 時制が一貫しているか確認する
- スペルチェック: 特に間違えやすい単語のスペルを確認する
- 語数チェック: 制限語数内に収まっているか確認する
- 読みやすさチェック: 文と文のつながりが自然か確認する
解答スピードを上げる5つのテクニック
解答のスピードを上げるためには、日頃からの練習と具体的なテクニックが重要です。以下に、スピードを上げるための5つのテクニックを紹介します。
テクニック1:定型表現のストックを持つ
よく使う表現をあらかじめ覚えておくことで、考える時間を短縮できます。
覚えておくと便利な定型表現
導入部分:
- The passage discusses the issue of…(この文章は〜の問題について述べています)
- In this essay, I will discuss…(このエッセイでは、〜について論じます)
- I completely agree/disagree with the statement that…(〜という意見に完全に賛成/反対します)
理由を述べる部分:
- There are several reasons why I believe this.(私がこう考える理由はいくつかあります)
- First and foremost,… Secondly,… Finally,…(まず第一に、…第二に、…最後に、…)
- One of the main reasons is that…(主な理由の一つは…ということです)
結論部分:
- In conclusion, it is clear that…(結論として、…は明らかです)
- For these reasons, I strongly believe that…(これらの理由から、私は…と強く信じています)
- Taking all these points into consideration, I am convinced that…(これらすべての点を考慮すると、私は…と確信しています)
テクニック2:アウトラインの作成を習慣化する
書き始める前に簡単なアウトラインを作ることで、迷いを減らし、スムーズに書き進めることができます。
効率的なアウトライン作成法
- 問題を読んだらすぐに自分の立場を決める
- 主張を支える理由を2~3点箇条書きでメモする
- 各理由に簡単な例や説明をつける
- 結論で述べることをメモする
- 必要な語彙や表現をメモしておく
テクニック3:時間を測って練習する
日頃から時間を意識して練習することで、本番での時間感覚が養われます。
時間測定練習のポイント
- ストップウォッチを使って実際の制限時間内で練習する
- 最初は時間オーバーしても気にせず、徐々に速度を上げていく
- 各セクション(読む、メモ、書く、見直す)ごとに目標時間を設定する
- 完成度と速さのバランスを意識する
- 練習の度に、かかった時間を記録して進捗を確認する
テクニック4:書きながら語数をカウントする習慣をつける
書きながら大まかな語数を把握することで、後から大幅な修正をする手間が省けます。
語数カウントのコツ
- 一行あたりの平均語数を把握しておく(例:一行約10語)
- 5行書いたら約50語というように、目安を持つ
- 各段落ごとに語数の目標を設定する(例:導入部20語、本文60語、結論部20語)
- 語数が足りない/多い場合の対処法をあらかじめ考えておく
- 普段から自分の書いた文章の語数を意識する習慣をつける
テクニック5:簡潔な表現を心がける
複雑な表現よりも、シンプルで正確な表現を使うことで、書くスピードが上がり、ミスも減ります。
簡潔な表現のポイント
- 一つの文は20語以内を目安にする
- 長い関係詞節よりも、短い文を2つに分ける
- 難しい単語よりも、確実に使える単語を選ぶ
- 冗長な表現を避ける(例:「in spite of the fact that」→「although」)
- 必要最小限の情報で伝える工夫をする
時間切れを防ぐための対処法
時間が足りなくなりそうな場合の対処法も知っておくと安心です。
要約問題で時間が足りない場合
- 原文すべてを読もうとせず、最初と最後の段落、各段落の最初の文に集中する
- 詳細よりも大きなポイントを捉えることを優先する
- 語数が少なくても、主要な点をカバーすることを重視する
- 複雑な言い換えより、原文の重要な部分を使って簡潔にまとめる
意見文で時間が足りない場合
- 理由は1~2点に絞る
- 具体例は最小限にする
- 結論は短くても必ず書く
- 複雑な文構造を避け、シンプルな文を使う
- 時間がなければ見直しよりも書き終えることを優先する
本番で力を発揮するためのメンタル面のコツ
試験当日は緊張するものですが、メンタル面の準備も大切です。力を発揮するためのコツを紹介します。
メンタル面のコツ
- 前日の準備を万全に: 持ち物や会場の確認をして、不安要素を減らす
- 適度な緊張は味方: 適度な緊張は集中力を高めるので、ポジティブに捉える
- 「できる」という自己暗示: 「私はできる」と自分に言い聞かせる
- ミスを引きずらない: ミスをしても次に進み、限られた時間を有効に使う
- 深呼吸でリラックス: 緊張したら深呼吸をして、心を落ち着ける
実際の試験問題で練習してみよう
以下は、英検2級の過去問を参考にした練習問題です。時間を計って解いてみましょう。
問題例(制限時間:25分)
要約問題(10分)
Read the passage and summarize it in 45-55 words.
Technology has changed the way students learn in many schools. Teachers now use computers and tablets in class, which allows for more interactive learning. Students can access information quickly and work at their own pace. However, this technology-based education has drawbacks. Some students get distracted easily and spend too much time on non-educational websites. Additionally, not all students have equal access to technology at home, which can create inequality. Despite these challenges, most educators agree that appropriate use of technology can enhance the learning experience when balanced with traditional teaching methods.
意見文(15分)
Do you agree or disagree with the following statement? “Schools should ban smartphones completely.” Write your opinion in 80-100 words.
時間配分を意識した解答例
要約問題解答例(52語)
The passage discusses how technology has transformed education. Many schools now use computers and tablets, enabling interactive learning and allowing students to work at their own pace. However, there are challenges such as student distraction and unequal access to technology. Most educators believe technology can enhance learning when properly balanced with traditional methods.
意見文解答例(93語)
I disagree with banning smartphones completely in schools. While smartphones can be distracting, they also have educational benefits when used properly.
First, smartphones can be valuable research tools, allowing students to quickly access information. Second, many educational apps can enhance learning in subjects like languages and mathematics. Additionally, learning to use technology responsibly is an essential skill for future careers.
However, clear guidelines are necessary. Students should only use phones for educational purposes during designated times. In conclusion, instead of complete bans, schools should teach responsible smartphone use while taking advantage of their educational potential.
まとめ
英検2級の英作文で高得点を取るためには、効率的な時間配分と解答テクニックを身につけることが重要です。本記事では、以下の点を解説しました:
- 英検2級ライティングの時間的制約を理解する
- 5つのステップで効率的に時間配分を行う
- 解答スピードを上げる5つのテクニックを実践する
- 時間切れを防ぐための対処法を知る
- 本番で力を発揮するためのメンタル面のコツを活用する
これらのポイントを押さえて、日頃から時間を意識した練習を積み重ねることで、本番でも余裕を持って解答できるようになります。次回の第6回では、「テーマ別対策①:教育・学校生活」について解説します。