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思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第8回 「なぜ看護師になりたいのか」の深掘り

こんにちは。あんちもです。

前回は「時事問題と医療・看護の関連性」について解説しました。今回は「なぜ看護師になりたいのか」の深掘りをテーマに、志望動機を説得力のある形で表現する方法を解説します。

「なぜ看護師を目指すのですか?」——これは看護学科の小論文や面接でほぼ必ず問われる質問ですよね。でも「人の役に立ちたいから」「看護師の仕事に憧れているから」といった表面的な回答では、あなたの本当の思いは伝わりません。今回は、みなさんが心の中に持っているはずの「看護師になりたい」という気持ちを、どう掘り下げ、どう表現すれば良いかを一緒に考えていきましょう!

志望動機を深掘りする意義

なぜ志望動機が重要なのか?

看護の道を志す理由は、あなたの看護観の原点となり、将来の看護実践の基盤となります。また、看護の道は決して平坦ではなく、困難に直面したときに踏みとどまる力にもなります。さらに、あなたならではの志望動機は、他の志願者との差別化にもつながるのです。

ありがちな志望動機の例

多くの受験生が書きがちな志望動機をいくつか挙げてみましょう:

  • 「人の役に立つ仕事がしたいから」
  • 「家族が病気になった時に看護師さんに助けられたから」
  • 「医療ドラマを見て憧れたから」
  • 「人と接することが好きだから」

これらの動機自体は決して悪くありません。でも、このままでは何千人もの志願者と同じ答えになってしまいます。大切なのは、こうした基本的な動機を掘り下げ、あなただけの物語にすることです。

志望動機を深掘りする5つの方法

1. 「原体験」を掘り下げる

看護師を目指すきっかけとなった原体験があるなら、その時の具体的な状況、あなたが感じたこと、考えたことを掘り下げましょう。

掘り下げ前: 「祖母の入院をきっかけに看護師を目指すようになりました」

掘り下げ後: 「祖母が入院した際、看護師さんが忙しい中でも祖母の話に耳を傾け、不安を和らげる姿に心を動かされました。特に印象的だったのは、祖母が夜間に痛みを訴えた時、看護師さんが単に痛み止めを与えるだけでなく、祖母の手を優しく握りながら『大丈夫ですよ』と声をかける姿でした。その時、専門的な医療行為だけでなく、患者さんの心に寄り添うことの大切さを実感し、私もそのような看護師になりたいと強く思うようになったのです」

2. 「なぜ?」を5回繰り返す

自分の志望理由に対して「なぜ?」を5回繰り返し問いかけることで、表面的な理由から本質的な動機へと掘り下げられます。

  • 「看護師になりたい」→「なぜ?」
  • 「人の役に立ちたいから」→「なぜ人の役に立ちたいのか?」
  • 「人が喜ぶ姿を見ると嬉しいから」→「なぜそれが看護という形なのか?」
  • 「直接的に人の支えになれる仕事がしたいから」→「なぜ直接的な支援が重要なのか?」
  • 「人生の大切な場面に寄り添える仕事に価値を感じるから」

このように掘り下げていくと、「人の役に立ちたい」という一般的な動機から、あなた固有の価値観や看護に対する思いが見えてきます。

3. 自分の強みと看護を結びつける

自分の強み、得意なこと、価値観と看護という仕事の特性を結びつけることで、あなたならではの志望動機が生まれます。

: 「私は小さい頃から観察力が鋭いと言われてきました。家族の小さな表情の変化に気づいたり、友人の悩みを察知したりすることが多いのです。この『気づく力』は看護において重要な要素だと考えています。患者さんの微細な変化や言葉にならないサインを見逃さず、早期に対応することで、より質の高いケアが提供できると思います。将来は特に急性期医療の現場で、この観察力を活かした看護を実践したいと考えています」

4. 看護の多様性を理解する

看護の仕事は病院だけでなく、在宅、学校、企業、国際協力など多岐にわたります。看護のどの側面に魅力を感じるのかを考えることで、志望動機が具体的になります。

: 「私が特に関心を持っているのは地域看護の分野です。私の祖父母が住む田舎では、高齢化が進み、医療機関まで遠い中で生活している高齢者が多くいます。そんな方々が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう支援する訪問看護の仕事に魅力を感じています。将来は訪問看護師として、医療過疎地域での在宅療養支援に携わりたいと考えています」

5. 看護の社会的意義を考える

看護という仕事が社会においてどのような意義を持つのかを考えることで、志望動機に深みが出ます。

: 「私は、医療が高度に専門化する現代社会において、看護師は『人間らしさ』を守る最後の砦になり得ると考えています。テクノロジーが進化しても、患者さんの不安や痛みに共感し、その人らしい生活を支える役割は、看護にしかできないものだと思います。特に超高齢社会において、単なる延命ではなく、一人ひとりの尊厳ある生を支える看護の役割はますます重要になると考え、その一翼を担いたいと思っています」

志望動機を表現する際のポイント

1. 具体的なエピソードを入れる

抽象的な言葉よりも、具体的な体験や場面の描写の方が説得力があります。「祖母の入院時に…」「ボランティア活動で…」「実際に看護師の方にお話を聞いて…」など、あなたの体験に基づいたエピソードを織り交ぜましょう。

2. 自己分析を深める

自分の性格、価値観、強み・弱みをしっかり分析し、それらが看護という仕事とどう結びつくのかを考えましょう。自己分析が深いほど、説得力のある志望動機になります。

3. 看護の理解を示す

看護という仕事の現実や課題についての理解を示すことで、単なる憧れではなく、現実を踏まえた上での志望であることをアピールできます。書籍、インターネット、オープンキャンパス、看護師へのインタビューなどを通じて知識を深めましょう。

4. 将来展望を含める

「看護師になりたい」という現在の思いだけでなく、看護師になった後どのような看護を実践したいのか、どのような分野で活躍したいのかなど、将来展望も含めると良いでしょう。

5. 素直な言葉で表現する

難しい言葉や飾り過ぎた表現よりも、あなたの思いが素直に伝わる言葉で表現することが大切です。読み手に「この人の言葉は本当だな」と感じてもらえる文章を心がけましょう。

実践演習:志望動機を深掘りしてみよう

以下の例を参考に、自分自身の志望動機を深掘りしてみましょう。

テーマ:「あなたが看護師を目指す理由と、どのような看護師になりたいかを述べなさい」(600字程度)

解答例

私が看護師を目指す原点は、中学生の時の祖母の入院体験にある。認知症を患っていた祖母は、環境の変化に混乱し、夜間に大声で叫んだり、点滴を抜こうとしたりしていた。そんな祖母に対し、担当の看護師さんは決して怒ることなく、祖母の目線に合わせて穏やかに話しかけ、不安を和らげていた。特に印象的だったのは、看護師さんが祖母の若い頃の話を引き出し、その会話の中で祖母が徐々に落ち着いていく様子だった。人は病気になっても、一人の人間として尊重されることで安心感を得られるのだと実感した瞬間だった。 この体験から、私は「その人らしさを守る看護」に強く惹かれるようになった。現代医療は高度に専門化し、効率性が重視される傾向にあるが、そうした中でも患者さん一人ひとりの個性や生活背景、価値観を大切にする看護を実践したいと考えている。 私は幼い頃から「聴く力」が得意だと言われてきた。友人の悩みを聞く際も、相手の言葉の奥にある思いを汲み取ることを心がけている。この力を活かし、患者さんの言葉にならないニーズや思いを察知できる看護師になりたい。 将来は、特に高齢者看護や緩和ケアの分野で活躍したいと考えている。人生の最終章を生きる方々が、最期まで自分らしく尊厳を持って生きられるよう支援することに、看護の深い意義を感じるからだ。そのためには、コミュニケーション能力だけでなく、確かな医学的知識や技術も必要であることを理解している。看護学を学ぶ中で、人間理解と科学的思考の両方を深め、「その人らしさを守る」という私の看護観を形にしていきたい。

ポイント解説

  • 具体的なエピソード(祖母の入院体験)から始まり、そこから得た気づきを説明
  • 「聴く力」という自分の特性と看護を結びつけている
  • 看護の中でも特に関心のある分野(高齢者看護・緩和ケア)に触れている
  • 「その人らしさを守る看護」という自分なりの看護観を示している
  • 現実的な理解(知識や技術の必要性)も示している

まとめと次回予告

今回は「なぜ看護師になりたいのか」の深掘りについて解説しました。表面的な志望動機から一歩踏み込み、あなただけの看護への思いを掘り下げることの重要性、そのための具体的方法について学びました。

志望動機は小論文や面接だけのためのものではありません。あなた自身の看護の原点として、これからの学びや実践の根幹となるものです。ぜひ時間をかけて、自分の看護師になりたい理由を深く掘り下げてみてくださいね。

次回は「看護現場の課題発見と解決策の提案」について解説します。医療・看護の現場にはどのような課題があるのか、そしてそれらの課題に対してどのような解決策を提案できるのかについて、具体的な手法を学んでいきましょう。

皆さんの小論文学習が実り多きものになることを願っています!

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思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第6回 「共感と客観性のバランス」

共感と客観性のバランス:看護小論文における重要性

看護は患者や家族の苦痛や不安に寄り添う「共感性」と、冷静な判断で適切なケアを提供する「客観性」の両方が求められる専門職です。看護小論文でも同様に、この二つの視点をバランスよく文章に反映させることが重要です。

共感と客観性の意味と看護における重要性

共感(エンパシー)とは 共感とは、他者の感情や状況を理解し、その人の立場に立って考えたり感じたりする能力です。看護における共感は、感情的共感、認知的共感、共感的コミュニケーション、共感的行動などの要素を含みます。

客観性とは 客観性とは、個人的な感情や先入観にとらわれず、事実や証拠に基づいて状況を判断する姿勢です。看護における客観性には、科学的思考、批判的思考、公平性、専門的判断などの側面があります。

バランスの重要性 看護において共感と客観性のいずれかに極端に偏ると様々な問題が生じます。共感に偏りすぎると感情的巻き込まれによる燃え尽き症候群のリスクや客観的判断が曇る可能性があります。一方、客観性に偏りすぎると患者を「症例」としてしか見ず、信頼関係が構築できないことがあります。

小論文における共感性の表現方法

  1. 具体的な事例や状況の描写:抽象的な議論だけでなく、具体的な患者や家族の状況を描写する
  2. 患者・家族の視点からの考察:医療者側からだけでなく、患者や家族の視点を取り入れる
  3. 感情や価値観に関する言及:患者のQOLや尊厳に関わる感情面や価値観について触れる
  4. 言葉遣いや表現の工夫:「患者を管理する」ではなく「患者さんに寄り添う」など
  5. 自己の経験や感情の適切な開示:自分自身の経験や感情を適切に開示する

小論文における客観性の表現方法

  1. データや根拠の活用:統計データや研究結果を適切に引用し、主張に説得力を持たせる
  2. 多角的な視点の提示:様々な立場や観点から課題を検討する
  3. 論理的構成と明確な根拠づけ:感情に訴えるだけでなく、論理的な文章構成を心がける
  4. 専門的知識や概念の適切な活用:看護や医療の専門的知識や概念を適切に活用する
  5. 偏りのない中立的な表現:特定の立場に偏った表現を避ける

共感と客観性のバランスを取る具体的方法

  1. 「共感から客観へ」の展開パターン:導入部分では共感的な事例から始め、徐々に客観的な分析へと展開する
  2. 「客観から共感へ」の展開パターン:客観的なデータから始め、患者や家族の心情に焦点を当てる
  3. 並列型の展開パターン:同じテーマについて、共感的側面と客観的側面の両方を並列的に述べる

テーマ別のバランスの取り方

終末期ケアに関するテーマの場合:共感的側面をより強調しつつ、専門的知識も示す
医療安全や感染対策に関するテーマの場合:客観的側面をより強調しつつも、患者体験にも触れる

共感と客観性のバランスを評価するチェックリスト

共感性の評価

  • 患者・家族の視点や体験について具体的に言及しているか
  • 対象者の感情や心理状態について考察しているか
  • 生活者としての患者の日常や価値観に触れているか など

客観性の評価

  • 主張に対して具体的な根拠を示しているか
  • 多角的な視点から問題を分析しているか
  • 論理的な文章構成になっているか など

バランスの評価

  • 共感的記述と客観的記述の両方が含まれているか
  • 共感的理解から客観的分析へ、あるいはその逆の流れがあるか
  • 主観的意見と客観的事実が明確に区別されているか など

小論文でよくある問題点

  1. 共感に偏りすぎる例:感情的な表現が多く、具体的な根拠や論理的思考が不足している
  2. 客観性に偏りすぎる例:データや理論が中心で、人間への温かみや共感的理解が感じられない
  3. 両者が分断されている例:共感的記述と客観的記述が別々に存在し、統合されていない

まとめ

看護における共感と客観性の両立は、質の高い看護の本質です。小論文でも、患者・家族の気持ちに寄り添う温かい共感性と、医療者として冷静に判断する客観性の両方を表現することが重要です。この二つの視点をバランスよく文章に反映させることで、看護師を志す者としての資質をアピールできるでしょう。

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思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第5回 「データを読み解く力」

こんにちは。あんちもです。

前回は「医療倫理のケーススタディ」について、倫理的ジレンマの分析方法を解説しました。今回は「データを読み解く力」をテーマに、医療や看護に関する統計データを正確に理解し、小論文で効果的に活用する方法について詳しく解説します。

看護の現場では、根拠に基づいた実践(Evidence-Based Practice:EBP)が重視されています。データに基づいた思考ができることは、看護師にとって必須のスキルです。また、看護学科の小論文では、グラフや表などのデータを読み解き、そこから考察を展開する問題も頻出します。データを正確に読み取り、適切に解釈し、論理的な考察につなげる力を養いましょう。

データリテラシーとは

データリテラシーとは、統計データや数値情報を正確に読み解き、解釈し、活用する能力のことです。これは単に数字を読むだけでなく、データの意味や限界を理解し、適切な文脈で活用する力を含みます。

看護学科の小論文において、データリテラシーは以下の点で重要です:

  1. 問題の客観的把握:感覚や印象ではなく、具体的な数値で社会課題や医療課題を捉えることができる
  2. 根拠のある主張:自分の意見や提案の裏付けとして、具体的なデータを示すことができる
  3. 多角的な分析:様々なデータを組み合わせることで、複雑な問題を多面的に分析できる
  4. 論理的思考の基盤:データに基づく考察は、論理的で説得力のある文章の土台となる

看護小論文で扱われる主なデータ

看護学科の小論文でよく扱われるデータには、以下のようなものがあります。それぞれの特徴と読み解き方のポイントを解説します。

1. 人口統計データ

少子高齢化、人口動態、世帯構成などに関するデータです。

:年齢階級別人口構成、高齢化率、出生率、平均寿命など

読み解きのポイント

  • 経年変化に注目する(増加・減少のトレンド)
  • 地域間や国際間の比較を意識する
  • 将来予測データの根拠や前提条件を確認する

2. 疾病や健康状態に関するデータ

特定の疾患の有病率や死因などに関するデータです。

:主要死因別死亡率、生活習慣病の有病率、特定疾患の年代別発症率など

読み解きのポイント

  • 性別・年齢・地域などの属性による差異に注目する
  • 時系列変化から社会背景との関連を考察する
  • 複数の疾患データを比較し、健康課題の優先順位を検討する

3. 医療・介護サービスに関するデータ

医療機関の状況や介護サービスの利用状況に関するデータです。

:病床数、看護師数、平均在院日数、介護サービス利用率など

読み解きのポイント

  • 需要と供給のバランスを考察する
  • 地域間格差の背景要因を分析する
  • 制度変更による影響を読み取る

4. 患者満足度や医療の質に関するデータ

患者経験や医療の質を評価するデータです。

:患者満足度調査結果、医療安全インシデント報告数、褥瘡発生率など

読み解きのポイント

  • 数値の背景にある患者の実際の経験を想像する
  • 改善可能な要因と困難な要因を区別する
  • データ収集の方法や限界を意識する

5. 国際比較データ

日本と他国の医療や健康状態を比較するデータです。

:各国の医療費対GDP比率、看護師一人当たり患者数、平均寿命の国際比較など

読み解きのポイント

  • 制度や文化の違いを踏まえて解釈する
  • 単純な「良い・悪い」の評価に陥らない
  • 日本の医療・看護の特徴や課題を客観視する視点を持つ

データを読み解く基本的なステップ

データを小論文で活用するための基本的なステップを解説します。

ステップ1:データの基本情報を確認する

まず、提示されたデータの基本的な情報を正確に把握します。

  • 調査の目的と方法:誰が、何のために、どのような方法でデータを収集したのか
  • 調査対象:どのような人々や施設が対象となっているのか
  • 調査時期:いつのデータなのか、最新のものか、経年変化を示すものか
  • 単位や指標の定義:パーセンテージ、実数、割合、率など、何を表しているのか

ステップ2:データの全体像を把握する

次に、データから読み取れる全体的な傾向を把握します。

  • 最大値と最小値:どの項目が最も高く(低く)なっているか
  • 平均値や中央値:全体的な傾向はどうか
  • 分布の特徴:均等に分布しているか、偏りがあるか
  • 経年変化:増加傾向か、減少傾向か、変動はあるか

ステップ3:特徴的なパターンや差異を見つける

データの中から特徴的なパターンや注目すべき差異を見つけます。

  • 顕著な差異:大きく異なる点は何か
  • 予想外のパターン:一般的な認識と異なる点はないか
  • 相関関係:複数の項目間に関連性はあるか
  • 例外的なデータ:全体の傾向から外れている点はないか

ステップ4:データの背景や文脈を考える

データが示す数値の背後にある社会的・制度的背景を考察します。

  • 社会的要因:社会の変化や価値観の変化との関連
  • 制度的要因:医療制度や政策の影響
  • 地域特性:地域の人口構成や産業構造などとの関連
  • 時代背景:時代による変化や特定の出来事の影響

ステップ5:データの意味や示唆を解釈する

データが看護や医療、社会にとって何を意味するのかを解釈します。

  • 現状の課題:データが示す現在の問題点や課題
  • 将来の予測:このデータから予測される今後の展開
  • 看護への示唆:看護実践にどのような影響や示唆があるか
  • 対策や提案:データに基づいてどのような対策が考えられるか

データ解釈における注意点

データを解釈する際に気をつけるべき点をいくつか紹介します。

1. 相関関係と因果関係を混同しない

二つの現象に相関関係(一方が増えると他方も増える関係)があっても、必ずしも因果関係(一方が他方の原因となる関係)があるとは限りません。

: 「高齢化率が高い地域では介護サービス利用率も高い」というデータがあった場合、単純に「高齢化が進むと介護サービス利用が増える」と結論づけるのではなく、地域の介護基盤整備状況や家族構成なども影響している可能性を考慮すべきです。

2. データの限界を理解する

すべてのデータには限界があります。調査方法や対象の偏り、測定誤差などを考慮する必要があります。

: 患者満足度調査のデータを解釈する際は、「回答できる患者のみが対象」「意見を言いにくい立場の患者の声が反映されにくい」といった限界を意識する必要があります。

3. 平均値だけに注目しない

平均値は全体的な傾向を示す指標として有用ですが、データの分布や格差を見落とす可能性があります。

: 「全国の看護師一人当たりの患者数の平均」だけでなく、「地域間や病院種別による格差」にも注目することで、より実態に即した分析ができます。

4. グラフの表現方法に惑わされない

同じデータでも、グラフの縦軸のスケールや開始点によって、印象が大きく変わることがあります。

: 縦軸を0から始めずに一部分だけを拡大表示すると、小さな変化が大きく見えることがあります。グラフの形だけでなく、実際の数値の変化量に注目しましょう。

5. 文脈や背景情報を考慮する

データは収集された時期や社会状況によって解釈が変わることがあります。

: 2020年以降の医療データを解釈する際は、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮する必要があります。通常時とは異なる特殊な状況下でのデータであることを念頭に置く必要があります。

小論文でのデータ活用の具体例

実際の小論文でデータをどのように活用するか、具体例を通して解説します。

例1:高齢化社会と地域包括ケアに関する小論文

提示データ: 「65歳以上の高齢者人口の割合の推移と将来予測」「要介護認定者数の推移」「地域別の在宅医療資源の分布」

データ活用例

厚生労働省の統計によれば、我が国の高齢化率は2020年に28.7%に達し、2036年には33.3%に達すると予測されている。この数値は単なる割合の増加ではなく、社会構造の根本的な変化を示唆している。さらに注目すべきは、要介護認定者数の増加率が高齢者人口の増加率を上回っていることである。2010年から2020年の10年間で高齢者人口が約20%増加したのに対し、要介護認定者数は約40%増加している。この不均衡な増加は、単に長寿化が進んでいるだけでなく、介護を必要とする期間が延びていることを示唆している。 一方、在宅医療資源の地域分布に目を向けると、都道府県別の訪問看護ステーション数には最大で5倍以上の格差が存在する。高齢化率と訪問看護ステーション数の間には正の相関が見られるものの、同程度の高齢化率であっても地域間で大きな差があることは、単純な需要要因だけでなく、地域の医療資源や政策的取り組みの違いも影響していることを示している。 これらのデータから、今後の地域包括ケアシステムの構築においては、全国一律の対応ではなく、各地域の高齢化の進展度合いや既存の医療・介護資源を正確に把握した上で、地域特性に応じた柔軟な対応が求められることが見えてくる。特に看護職には、地域のデータを継続的にモニタリングし、変化するニーズに応じたケア提供体制の調整役としての役割が期待されるだろう。

例2:医療安全と看護の質向上に関する小論文

提示データ: 「医療事故報告件数の推移」「事故の種類別割合」「看護師の労働環境に関する調査結果」

データ活用例

日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業によれば、報告される医療事故件数は年々増加傾向にある。しかし、この増加は単純に医療の質が低下しているということではなく、医療安全文化の醸成により報告率が向上している側面も考慮する必要がある。実際、重大事故の割合は減少傾向にあり、軽微なインシデントの報告割合が増加していることからも、早期発見・早期対応の意識が高まっていることがうかがえる。 事故の種類別に見ると、約30%が薬剤関連、約25%が転倒・転落関連であり、この二つで半数以上を占めている。注目すべきは、これらの事故の発生時間帯に一定のパターンが見られることだ。薬剤関連事故は処方・与薬が集中する時間帯に多く、転倒・転落関連事故は夜間から早朝にかけて増加する傾向がある。 一方、看護師の労働環境に関する調査からは、時間外労働が月平均20時間を超える施設が約40%存在し、夜勤従事者の半数以上が十分な休憩を取れていないと回答している。これらのデータを関連づけて考えると、事故発生の背景には看護師の疲労や業務過多という構造的な問題が存在する可能性が示唆される。 これらの複合的なデータから見えてくるのは、医療安全の向上には個々の看護師の注意喚起だけでなく、システムとしての対策が不可欠だという点である。具体的には、事故データの時間帯別・状況別の詳細分析に基づく業務設計の見直しや、人員配置の最適化、ICTを活用した安全支援システムの導入などが考えられる。エビデンスに基づいたシステム改善こそが、持続可能な医療安全文化の構築につながるのである。

小論文内でのデータ引用の作法

小論文の中でデータを引用する際の基本的な作法を解説します。

1. データの出典を明記する

引用するデータの信頼性を示すために、出典を明確に示します。

良い例

厚生労働省「令和3年国民生活基礎調査」によれば、要介護者等のいる世帯は全世帯の約13%を占めている。

不十分な例

統計によれば、要介護者のいる世帯は全体の約13%である。

2. 数値を正確に引用する

データの数値は、誇張や省略なく正確に引用します。

良い例

日本看護協会の調査では、看護師の離職率は2019年度に10.7%であり、前年度の10.9%から微減している。

不十分な例

看護師の離職率は約10%で高止まりしている。

3. データの文脈や条件を示す

データが収集された条件や対象範囲なども、必要に応じて示します。

良い例

この調査は全国の200床以上の急性期病院を対象としており、精神科単科病院や療養型病床を持つ病院は含まれていない点に留意する必要がある。

不十分な例

この調査結果は全国の病院の状況を表している。

4. 複数のデータを比較・関連づける

単一のデータだけでなく、複数のデータを関連づけて考察することで、より深い分析ができます。

良い例

看護師の離職率が高い地域と看護基礎教育機関の分布を重ね合わせると、教育機関から離れた地域ほど離職率が高い傾向が見られる。これは、教育機関の存在が継続教育や専門性向上の機会提供に寄与している可能性を示唆している。

不十分な例

看護師の離職率は地域によって差がある。また、看護教育機関の数も地域差がある。

5. データの限界や解釈の幅を示す

データの解釈には複数の可能性があることを示すことで、より慎重で多角的な考察ができます。

良い例

この10年間で看護師の時間外労働時間は統計上減少しているが、この変化は実際の労働負担の軽減を意味するとは限らない。業務記録の電子化により、記録時間が勤務時間外に移行している可能性や、サービス残業が可視化されていない可能性も考慮する必要がある。

不十分な例

統計によれば、看護師の時間外労働時間は減少しており、労働環境は改善されている。

実践演習:データ解釈と小論文への活用

以下のデータを分析し、小論文に活用する練習をしてみましょう。

【図表】高齢者の健康状態と介護サービス利用に関するデータ

  1. 65歳以上の高齢者のうち「健康上の問題で日常生活に影響がある」と回答した割合:65-74歳(32.1%)、75-84歳(47.6%)、85歳以上(68.3%)
  2. 要介護度別の主な介護者(%)
    • 同居の家族:要支援(60.2)、要介護1・2(63.5)、要介護3以上(57.8)
    • 別居の家族:要支援(12.5)、要介護1・2(10.2)、要介護3以上(6.4)
    • 事業者:要支援(24.3)、要介護1・2(22.7)、要介護3以上(32.6)
    • その他:要支援(3.0)、要介護1・2(3.6)、要介護3以上(3.2)
  3. 主な介護者の悩みや負担(複数回答、%)
    • 身体的負担:58.3
    • 精神的負担:53.2
    • 介護と仕事の両立:24.7
    • 経済的負担:22.1
    • 家族関係の変化:21.3
    • 自分の時間がない:26.8

テーマ:「高齢者介護における家族支援と看護職の役割」(600字程度)

解答例

提示されたデータからは、高齢者介護の現状と課題が浮かび上がる。まず、年齢階級別の健康状態に着目すると、65-74歳では約3割が日常生活に影響のある健康問題を抱えているのに対し、85歳以上では約7割に達している。このデータは、単純な高齢化率の上昇だけでなく、後期高齢者の増加が介護ニーズを加速度的に高めることを示唆している。 介護の担い手に関するデータを見ると、要介護度に関わらず6割前後が同居家族によって支えられている実態が明らかである。特に注目すべきは、要介護3以上の重度者においても、約6割が家族介護に依存していることだ。一方、事業者による介護は要介護3以上で増加するものの、依然として3割程度にとどまっている。このことは、介護の社会化が理念として掲げられながらも、実態としては家族介護に大きく依存している日本の介護システムの現状を浮き彫りにしている。 さらに、介護者の悩みや負担に関するデータからは、身体的・精神的負担が特に大きいことがわかる。過半数の介護者がこれらの負担を感じていることは、家族介護の持続可能性に疑問を投げかけるものである。また、約4分の1の介護者が「仕事との両立」や「自分の時間のなさ」に悩んでいることは、介護離職や介護者自身の健康問題など、二次的な社会問題に発展する可能性を示唆している。 これらのデータから、看護職には単に要介護者へのケアだけでなく、家族介護者への支援も重要な役割であることが見えてくる。具体的には、①身体的負担を軽減する介護技術の指導、②精神的負担に対する傾聴と共感、③社会資源の情報提供と連携調整、④介護者自身の健康管理支援などが求められる。特に在宅看護や地域包括支援センターの看護職は、これらのデータを地域特性と照らし合わせながら、予防的かつ包括的な家族支援プログラムの構築に貢献することが期待される。

データリテラシーを高めるための学習方法

小論文に活用できるデータリテラシーを高めるための具体的な学習法を紹介します。

1. 信頼できるデータソースに親しむ

以下のような公的機関や信頼性の高い組織が公表しているデータに日頃から触れる習慣をつけましょう。

  • 厚生労働省「厚生労働統計一覧」
  • 内閣府「高齢社会白書」「障害者白書」
  • 総務省「統計局ホームページ」
  • 国立社会保障・人口問題研究所「将来人口推計」
  • 日本看護協会「看護統計資料室」
  • WHO(世界保健機関)の各種統計

2. データの視覚化と整理の練習

収集したデータを自分なりにグラフ化したり、表にまとめる練習をしましょう。

  • 棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフなど、適切なグラフ形式を選ぶ
  • 複数のデータを組み合わせて一つのグラフにまとめる
  • 年代別、地域別など、異なる切り口でデータを整理する

3. データに基づく小論文の模範例を研究する

データを効果的に活用している小論文の例を読み、分析の手法や文章構成を学びましょう。

  • 看護系雑誌に掲載されている論説や総説
  • 医療や福祉に関する白書の分析部分
  • 看護学科の入試問題集に掲載されている模範解答

4. 時事問題とデータを関連づける訓練

ニュースや社会問題について、関連するデータを探し、自分なりの分析を試みましょう。

  • 医療や福祉に関するニュースを読んだら、関連するデータを探してみる
  • 「この問題の背景には、どのようなデータがあるのか」を常に考える
  • データに基づいて、ニュースの内容を批判的に検討する

5. グループでのデータ分析ディスカッション

友人や勉強仲間と同じデータを分析し、互いの解釈を共有し議論することで、多角的な視点を養いましょう。

  • 同じデータから異なる解釈が生まれる理由を考える
  • 自分が見落としていた視点に気づく
  • データの限界や解釈の幅についての理解を深める

次回予告と今回のまとめ

今回は「データを読み解く力」について解説しました。医療や看護に関する統計データを正確に理解し、小論文で効果的に活用するためのポイントを学びました。データの基本情報を確認し、全体像を把握した上で、特徴的なパターンや差異を見つけ、背景や文脈を考慮しながら意味や示唆を解釈するという基本的なステップを押さえることが重要です。また、データの解釈における注意点や、小論文での引用の作法についても理解を深めました。

次回は「共感と客観性のバランス」について解説します。看護小論文において重要な「患者や家族への共感」と「医療者としての客観的視点」のバランスを取る方法について詳しく解説していきます。

皆さんの看護小論文学習が実り多きものになることを願っています。

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ブログ 小論文対策 看護学科志望者のための実践ガイド

思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第4回 「医療倫理のケーススタディ」

こんにちは。あんちもです。

前回は「患者の視点と医療者の視点」について、多角的な視点の重要性を解説しました。今回は「医療倫理のケーススタディ」をテーマに、看護小論文でよく出題される倫理的ジレンマの考察方法について詳しく解説します。

医療倫理に関する問題は、看護学科の小論文で最も出題頻度の高いテーマの一つです。その理由は、倫理的判断力が看護師にとって不可欠な資質だからです。複雑な医療現場では、「正解」が一つではない状況に日々直面します。そのような状況で、どのように思考し、判断するかというプロセスを評価するために、倫理的ジレンマを題材とした小論文が出題されるのです。

医療倫理の基本原則

まず、医療倫理の考察の基盤となる「4つの基本原則(トム・L・ビーチャムとジェームズ・F・チルドレスによる)」について理解しましょう。

1. 自律尊重(Respect for Autonomy)

患者の自己決定権を尊重する原則です。患者が自分の価値観に基づいて医療に関する決定を行う権利を認め、それを支援します。

キーワード:インフォームド・コンセント、自己決定権、患者の意思、知る権利

:認知症の初期段階にある患者が、今後の治療方針について自分で決定したいと望んでいる場合、その意思を尊重し、理解できる形で情報提供を行う。

2. 無危害(Non-maleficence)

患者に害を与えないという原則です。医療行為によって生じうる害を最小限にとどめることを目指します。

キーワード:リスク回避、安全確保、副作用、合併症予防

:抗がん剤治療において、効果が期待できない段階では、副作用による患者の苦痛を考慮し、治療の中止も検討する。

3. 善行(Beneficence)

患者の利益となるよう行動するという原則です。患者の健康と福利の増進のために最善を尽くします。

キーワード:最善の利益、ケアの質、健康増進、QOL向上

:寝たきり患者の褥瘡予防のために、体位変換や特殊マットレスの使用など、積極的な予防ケアを行う。

4. 公正(Justice)

医療資源を公平に分配し、患者を公正に扱うという原則です。差別なく平等にケアを提供することを目指します。

キーワード:公平性、医療資源の配分、アクセスの平等、社会的弱者への配慮

:災害時のトリアージにおいて、個人的な関係や社会的地位ではなく、医学的な緊急度に基づいて治療の優先順位を決定する。

倫理的ジレンマとは

倫理的ジレンマとは、複数の倫理原則が対立する状況、あるいは一つの倫理原則の中でも価値の対立が生じる状況を指します。看護師は日常的に以下のようなジレンマに直面します:

  1. 自律尊重と善行の対立:患者の希望する治療法が医学的に最善ではない場合
  2. 無危害と善行の対立:侵襲的な治療が将来的な利益をもたらす可能性がある場合
  3. 自律尊重と公正の対立:一部の患者の希望に応えることが他の患者のケアに影響する場合
  4. 自律尊重原則内での対立:患者の現在の意思と事前指示(リビングウィル)が異なる場合

看護師は、こうしたジレンマに対して「正解」を導き出すというよりも、多角的な視点から状況を分析し、最も倫理的に配慮された判断を模索する過程が重要です。

医療倫理的ジレンマを分析する枠組み

小論文で倫理的ジレンマを考察する際に役立つ思考の枠組みを紹介します。

1. ジョンソンの4分割法

倫理的状況を4つの視点から分析する手法です。

  • 医学的適応:医学的事実と適応はどうか
  • 患者の意向:患者は何を望んでいるか
  • QOL(生活の質):治療によってQOLはどう変化するか
  • 周囲の状況:社会的・経済的・法的要因はどうか

2. 倫理的推論のプロセス

  1. 事実の確認:医学的事実、患者の価値観、関係者の立場など
  2. 倫理的問題の明確化:どの倫理原則が関わり、どこに対立があるか
  3. 選択肢の列挙:可能な行動選択肢を幅広く考える
  4. 選択肢の検討:各選択肢の倫理的意味を分析する
  5. 決定と行動:最も倫理的に妥当と考えられる選択を行う
  6. 振り返り:結果を評価し、学びを次に活かす

3. 関係者の視点からの多角的分析

前回学んだ多角的視点を活用し、患者、家族、医療者など異なる立場からジレンマを分析します。

  • 患者にとっての意味は何か
  • 家族にとっての意味は何か
  • 医療チームにとっての意味は何か
  • 社会的・制度的な観点からの意味は何か

代表的な倫理的ジレンマのケーススタディ

看護小論文でよく扱われる倫理的ジレンマの事例と、その分析例を紹介します。

ケーススタディ1:終末期医療と延命治療

事例: 末期がんの80歳の患者Aさんは、積極的な治療を望まず、「自然な形で最期を迎えたい」と表明していました。しかし急変時、家族は「できることはすべてやってほしい」と救命処置を希望しました。

分析例

このケースでは、患者の自律尊重(自然な形での看取りを望む意思)と家族の心情に配慮する善行の原則が対立している。 医学的適応の観点からは、末期がんという状況で積極的な救命処置の効果は限定的であり、むしろ患者の苦痛を増大させる可能性がある。 患者の意向は明確だが、それは事前に表明されたものであり、急変時の意思として確認できない点が難しさを増す。また、患者の自律性を尊重するべきだが、死にゆく家族を救いたいという家族の気持ちも理解できる。 このジレンマへの対応として、まず看護師は患者と家族の間の橋渡し役として、患者の意向を家族に丁寧に伝え、なぜ患者がそう望んだのかを理解してもらうプロセスを支援すべきである。同時に、家族の不安や悲嘆にも寄り添い、「何もしない」ことへの罪悪感を軽減する心理的ケアも重要だ。 急変時に備えて、医療チームで事前にカンファレンスを行い、どこまでの医療行為が患者の意向に沿うのか、何が不必要な苦痛を与えるだけになるのかを議論しておくことも必要である。 最終的な判断は一概に言えないが、患者の自律性を最大限尊重しながらも、家族のケアも含めた包括的なアプローチが求められる。

ケーススタディ2:認知症患者の身体拘束

事例: 認知症の90歳の患者Bさんは、転倒リスクが高く、点滴やカテーテルを自己抜去する危険があります。夜間の人員が限られる中、安全確保のために身体拘束を検討する状況です。

分析例

このケースでは、患者の安全を確保するという善行・無危害の原則と、自由を制限しない自律尊重の原則が対立している。 身体拘束は転倒や自己抜去による害を防ぐ目的がある一方で、拘束自体が患者の尊厳を損ない、身体的・精神的な二次的問題(筋力低下、せん妄悪化、自尊心低下など)を引き起こす可能性がある。 患者は認知症により自己決定能力が低下しているが、それでも尊厳ある扱いを受ける権利がある。一方で、限られた医療資源(夜間の人員配置など)という現実的制約も存在する。 このジレンマへの対応として、まず身体拘束以外の代替手段を最大限検討すべきである。例えば、ベッドの高さを下げる、床センサーの設置、離床を察知するモニタリング機器の活用、患者の行動パターンの観察と環境調整などが考えられる。 また、拘束が必要と判断される場合でも、その範囲と時間を最小限にとどめ、定期的に再評価することが重要である。例えば、「常時拘束」ではなく、最もリスクの高い時間帯や状況に限定するなどの工夫ができる。 さらに、家族への説明と同意取得のプロセスも丁寧に行い、拘束の目的と代替手段の検討状況を共有することで、ケアの透明性を確保することも大切である。 このケースは「正解」のない難しい問題だが、患者の尊厳と安全のバランスを常に意識し、チーム全体で最善の方法を模索し続ける姿勢が求められる。

ケーススタディ3:医療資源の配分

事例: 集中治療室(ICU)のベッドが1床のみ空いている状況で、同時に2人の重症患者が搬送されてきました。一人は85歳の多臓器不全の患者、もう一人は45歳の重症肺炎の患者です。どちらを優先的にICUで治療するべきかという判断を迫られています。

分析例

このケースでは、限られた医療資源(ICUベッド)の公正な分配という問題に直面している。公正の原則に基づけば、すべての患者は平等に治療を受ける権利があるが、現実的には選択を迫られる状況である。 医学的適応の観点からは、各患者の重症度、治療への反応性、予後予測などの客観的評価が必要となる。45歳の患者は相対的に若く、単一臓器(肺)の問題であるため、適切な治療によって回復の可能性が高いと考えられる。一方、85歳の多臓器不全の患者は、年齢と複数臓器の障害により、ICU治療を行っても予後が厳しい可能性がある。 しかし、年齢のみを基準とした判断は年齢差別となる危険性があり、85歳でも以前の健康状態や生活の質が良好であれば、治療への反応も期待できる場合がある。 このジレンマへの対応として、まず客観的な医学的基準(重症度スコアなど)を用いて評価し、治療による利益が最も期待できる患者を優先することが考えられる。同時に、ICUに入室できない患者に対しても、代替の高度医療の提供(例:HCU入室や一般病棟での濃厚治療)を検討し、可能な限りの医療を提供する努力が必要である。 また、このような判断は個人ではなく、医療チーム全体での議論と合意形成によってなされるべきであり、判断の過程と根拠を明確に記録することも重要である。 このケースは、医療資源の有限性という現実と、すべての命の平等な価値という倫理的理念の間の緊張関係を示している。完全に満足のいく解決策はないかもしれないが、公平性、透明性、一貫性のある判断プロセスを確立することが重要である。

小論文での倫理的ジレンマの考察ポイント

倫理的ジレンマを題材とした小論文を書く際に押さえておきたいポイントを紹介します。

1. 倫理原則を明示する

関連する倫理原則(自律尊重、無危害、善行、公正)を明確に示し、それらがどのように対立しているかを説明します。

例文

このケースにおいては、患者の自己決定権を尊重する「自律尊重の原則」と、患者にとって最善の利益を追求する「善行の原則」が対立している。患者は治療拒否の意思を示しているが、その決定が患者自身の健康を著しく損なう可能性がある場合、医療者としてどう対応すべきかという倫理的ジレンマが生じる。

2. 多角的視点から分析する

前回学んだ多角的視点を活用し、患者、家族、医療者などの立場からジレンマを捉えます。

例文

患者の視点からは、たとえ医学的に必要とされる治療であっても、それを拒否する権利は自律性の表現として尊重されるべきである。一方、家族の視点からは、大切な人の命が危険にさらされることへの不安から、積極的な治療を望む心情も理解できる。医療者の視点からは、専門的知識に基づいて患者の生命を守りたいという責務と、患者の意思決定を尊重すべきという倫理的義務の間で葛藤が生じる。

3. 具体的な判断プロセスを示す

単に結論を述べるのではなく、どのような思考プロセスでジレンマを分析し、判断に至ったかを丁寧に説明します。

例文

このような状況では、まず患者の意思決定能力を評価することが重要である。認知機能に問題がなく、治療の利益とリスクを理解した上での拒否であれば、その意思は尊重されるべきだ。次に、なぜ患者が治療を拒否するのか、その背景にある価値観や恐れを理解する必要がある。時に治療拒否は、誤解や不安から生じている場合もあり、丁寧な説明や対話によって解決できることもある。それでも患者が治療を希望しない場合は、代替治療の提案や、最低限必要なケアについて合意形成を図るアプローチが考えられる。

4. 看護師の役割を具体的に考察する

倫理的ジレンマにおける看護師の具体的な役割や行動について述べることで、実践的な思考力をアピールします。

例文

このジレンマにおいて看護師は、まず患者の代弁者として患者の意思や価値観を医療チームに正確に伝える役割がある。また、患者と医療者の間の「翻訳者」として、医学的情報を患者が理解できる形で説明し、患者の疑問や不安に応える役割も担う。さらに、倫理カンファレンスを提案し、多職種での議論の場を設けることで、より多角的な視点からの検討を促すこともできる。日々のケアの中で患者の変化する思いに寄り添い、継続的に対話を続けることも、看護師だからこそできる重要な役割である。

5. 唯一の正解を求めすぎない

倫理的ジレンマには「絶対的な正解」がないことを認識し、多角的な分析と慎重な判断プロセスの重要性を強調します。

例文

このような倫理的ジレンマにおいては、すべての関係者が納得する完璧な解決策は存在しないかもしれない。重要なのは、関係するすべての人の尊厳と権利を尊重しながら、丁寧なプロセスを経て判断を行うことである。また、一度決定したことも状況の変化に応じて柔軟に見直す姿勢が必要であり、継続的な対話と再評価のプロセスこそが倫理的実践の本質であると考える。

実践練習:倫理的ジレンマの小論文

以下のテーマで小論文の練習をしてみましょう。

テーマ:「患者の治療拒否に看護師としてどう対応すべきか、あなたの考えを述べなさい」(600字程度)

解答例

患者の治療拒否は、自律尊重の原則と善行の原則が対立する典型的な倫理的ジレンマである。患者には自己決定権があり、たとえ生命維持に必要な治療であっても拒否する権利がある。一方で医療者には患者の健康と生命を守る責務があり、この二つの価値の間で葛藤が生じる。 このようなジレンマに対して、看護師はまず患者の治療拒否の背景を理解することから始めるべきだと考える。拒否の理由は多様であり、痛みや副作用への恐怖、誤解や情報不足、過去の否定的経験、文化的・宗教的信念、経済的問題など様々な要因が考えられる。 次に、患者の意思決定能力を適切に評価することが重要である。認知機能に問題がなく、治療の利益とリスクを理解した上での拒否であれば、その決定はより尊重されるべきである。ただし、せん妄や重度の不安など一時的に判断能力が低下している場合は、その状態の改善を待って再評価することも必要だ。 看護師の具体的な役割としては、まず「情報の橋渡し役」として患者が治療内容を十分理解できるよう支援することが挙げられる。医学的情報を患者が理解できる言葉で説明し、質問に答え、誤解があればそれを解消する。次に「感情的サポート」として、治療への不安や恐れに共感し、患者が感情を表現できる安全な環境を提供する。さらに「代替案の探索」として、患者が全面的に治療を拒否する場合でも、部分的に受け入れ可能な代替治療や、最低限必要なケアについて話し合うことも重要である。 最終的に患者が治療拒否の意思を変えない場合、看護師はその決定を尊重しつつも、継続的なケアの提供と対話の扉を開いておくことが大切である。治療は拒否しても、看護ケアや精神的サポートは継続して提供できることを伝え、患者が孤立感を抱かないよう配慮することが、患者の尊厳を守る看護の本質であると考える。

医療倫理の学習を深めるための方法

医療倫理についての理解を深めるための学習方法を紹介します。

1. 事例研究の積み重ね

様々な倫理的ジレンマの事例を収集し、分析する練習を重ねることで、倫理的思考力が鍛えられます。看護や医療の教科書、看護倫理の専門書などに事例が掲載されていることが多いです。

2. ディスカッションの活用

友人や勉強会のメンバーと倫理的ジレンマについてディスカッションすることで、自分とは異なる視点や考え方に触れることができます。

3. 倫理委員会の事例や判断を学ぶ

医療機関の倫理委員会で扱われた事例やその判断プロセスについて学ぶことも有益です。一部の医療機関では、倫理委員会の活動報告を公開しています。

4. 映画やドラマの活用

医療現場の倫理的ジレンマを描いた映画やドラマを視聴し、登場人物の判断や行動について考察することも効果的な学習方法です。

次回予告と今回のまとめ

今回は「医療倫理のケーススタディ」について解説しました。医療倫理の4つの基本原則(自律尊重、無危害、善行、公正)を理解し、倫理的ジレンマを多角的に分析する方法を学びました。看護小論文では、単に「正解」を示すのではなく、倫理的ジレンマに対する思考プロセスを丁寧に論述することが重要です。

次回は「データを読み解く力」について解説します。医療や看護に関する統計データを正確に理解し、小論文の中で効果的に活用する方法について詳しく解説していきます。

皆さんの看護小論文学習が実り多きものになることを願っています。

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思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第3回 「患者の視点と医療者の視点」

こんにちは。あんちもです。

前回は看護小論文で効果的に使える医療・看護系キーワードについて解説しました。今回は「患者の視点と医療者の視点」について掘り下げていきます。看護学科の小論文では、同じ医療場面を異なる立場から多角的に考察する力が求められます。この多角的な視点を身につけることは、小論文だけでなく、将来の看護師としての実践においても非常に重要なスキルです。

多角的視点の重要性

看護の現場では、同じ状況に対して患者・家族・医療者など、立場によって全く異なる受け止め方があります。例えば、がん治療において:

  • 患者の視点:「痛みや副作用に耐えられるだろうか」「仕事や家庭はどうなるのか」
  • 家族の視点:「どうサポートすればよいのか」「経済的な負担は大丈夫か」
  • 医師の視点:「最適な治療法は何か」「エビデンスに基づく判断をどう行うか」
  • 看護師の視点:「患者のQOLをどう支えるか」「精神的サポートをどう提供するか」

こうした多角的な視点を小論文に取り入れることで、単一の視点からでは見えてこない問題の複雑さや奥行きを表現することができます。また、看護師は患者と医療者の間に立つ「橋渡し役」としての役割も求められるため、双方の視点を理解し統合する力は特に重要です。

患者の視点を理解する

患者の視点の特徴

患者の視点には以下のような特徴があります:

  1. 主観性と個別性:同じ病気でも、個人の価値観や生活背景によって受け止め方は大きく異なります
  2. 非専門性:医学的知識がないため、不安や誤解が生じやすい面があります
  3. 全人的体験:病気は身体だけでなく、心理・社会的側面にも影響します
  4. 時間的連続性:発症前の生活、治療中、回復後と時間的な流れの中で体験されます

患者の視点を考える際のポイント

  1. 疾患ではなく病い(illness)として捉える:医学的な疾患(disease)だけでなく、患者にとっての主観的な体験(illness)として考えます
  2. 生活者としての側面を想像する:患者は病院では「患者」ですが、本来は家庭や職場、地域での役割を持つ「生活者」です
  3. 心理的プロセスを理解する:診断、治療、回復など各段階での心理的反応(否認、怒り、抑うつ、受容など)があります
  4. 情報の非対称性を意識する:医療者と患者の間には知識や情報の格差があり、それが不安や誤解の原因になることがあります

患者視点の例文

人工呼吸器を装着した患者にとって、自分の意思を伝えることができない不自由さは計り知れない。「のどが渇いている」という単純な訴えさえ伝えられないもどかしさ、「この管をはずしてほしい」という切実な願いを表現できない無力感は、医療者には想像しづらいものかもしれない。加えて、見知らぬ機械音に囲まれた環境での不安や恐怖は、患者の精神的負担をさらに増大させる。このような患者の体験を想像することは、看護師による適切なケア提供の第一歩である。

家族の視点を理解する

家族の視点の特徴

  1. 二重の負担:愛する人の苦しみを見る精神的負担と、介護や経済面での実務的負担
  2. 情報の仲介者:患者と医療者の間の情報伝達役を担うことがある
  3. 決断の責任:患者が意思決定できない場合の代理意思決定者となる
  4. システムの一部:家族は患者を支える重要な社会的資源である

家族の視点を考える際のポイント

  1. 家族システムの変化を考える:一人の病気は家族全体の役割やバランスに影響します
  2. 介護負担を理解する:特に長期的なケアでは、介護者の疲労やバーンアウトのリスクがあります
  3. 家族間の価値観の違いを意識する:治療方針などで家族内でも意見が分かれることがあります
  4. 社会的・経済的影響を考慮する:仕事の調整や経済的負担など実務的な問題も大きいです

家族視点の例文

認知症の母を介護する娘にとって、「母のために最善を尽くしたい」という思いと「自分の生活も大切にしたい」というジレンマは日常的な葛藤である。日中の仕事と夜間の介護を両立させることの疲労感、「もっとできるはずだ」という自責の念、そして先の見えない介護への不安が絡み合う。さらに、兄弟間での介護方針の相違や責任分担の問題も潜在的なストレス要因となっている。このような家族介護者の複雑な心境を理解することは、看護師が提供する家族支援の質を高める上で不可欠である。

医療者の視点を理解する

医師の視点の特徴

  1. 疾患モデル:症状から診断へ、そして治療へという医学的思考
  2. エビデンスの重視:科学的根拠に基づく判断
  3. リスク・ベネフィット評価:治療効果とリスクのバランスを考慮
  4. 専門性と責任:最終的な医学的判断の責任を負う

看護師の視点の特徴

  1. 生活モデル:日常生活機能の維持・回復に焦点
  2. 継続的観察:24時間体制での患者の状態変化の観察
  3. ケアの調整:多職種間のコーディネート役
  4. 患者・家族との密接な関係:最も身近な医療者として感情的サポートも提供

その他の医療専門職の視点

リハビリテーション専門職、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなど、多様な専門職がそれぞれ独自の視点を持っています。多職種チームの中での各専門職の役割と視点を理解することも重要です。

医療者視点の例文

医師にとって、末期がん患者の症状緩和と生命維持のバランスは難しい判断を要する。モルヒネによる疼痛コントロールは患者のQOL向上に不可欠だが、過量投与による呼吸抑制のリスクも考慮しなければならない。また、科学的エビデンスに基づく標準治療の提供と、患者の価値観や希望を尊重することの間で葛藤することもある。 一方、看護師の視点からは、痛みの評価とケアだけでなく、患者の不安や恐怖への対応、家族のグリーフケア、そして患者が残された時間をどう過ごしたいかという希望を支えることが重要となる。医師が症状や病態に焦点を当てるのに対し、看護師は患者の全体的な体験と生活の質に焦点を当てるのである。

異なる視点を統合する方法

小論文では、これらの多様な視点をどのように統合し、自分の考えを展開するかが重要です。以下に統合のためのステップを紹介します。

1. 視点間の共通点と相違点を整理する

例えば、「治療方針の決定」という場面で:

  • 共通点:患者のためにという思い、よりよい結果を願う気持ち
  • 相違点:重視する価値(医学的効果 vs. 生活の質)、時間的視点(短期的 vs. 長期的)

2. 視点間の対立やジレンマを明確にする

対立する価値や利益を明確にし、そのジレンマを論述することで思考の深さを示せます。

例:「最新の治療を受ける機会」vs.「残された時間を自宅で過ごしたいという願い」

3. 看護の立場からの統合的視点を示す

看護師としての立場から、異なる視点をどう橋渡しし、統合するかという考えを示すことが重要です。

例:「患者の自己決定を支えつつ、十分な情報提供と心理的サポートを通じて、患者・家族と医療チームが共通の目標に向かって協働できるよう支援する」

実践練習:多角的視点を取り入れた小論文例

以下のテーマで、異なる視点を取り入れた小論文の例を紹介します。

テーマ:「終末期医療において、患者の意思決定を支える看護師の役割について、あなたの考えを述べなさい」(600字程度)

解答例

終末期医療における意思決定は、患者、家族、医療者それぞれの視点が交錯する複雑なプロセスである。このプロセスにおいて看護師は、多様な視点を理解し橋渡しする重要な役割を担っている。 患者の視点からは、自分の価値観に基づいた最期を迎えたいという願いがある一方で、「家族に迷惑をかけたくない」という思いや、医学的情報の理解の難しさから、真の意思表示に困難を抱えることも多い。家族の視点からは、「大切な人を失う悲しみ」と「最善を尽くしたい」という思いの中で、特に患者が意思表示できない状況では重い決断を迫られる。医師の視点からは、医学的適応とエビデンスに基づく判断を行う責任がある。 これらの視点が交錯する中で、看護師には三つの重要な役割があると考える。第一に「情報の橋渡し役」として、医学的情報を患者・家族が理解できるよう翻訳し、また患者・家族の思いを医療チームに伝える役割である。第二に「意思決定のプロセス支援者」として、患者が自分の価値観を整理し、選択肢の意味を理解できるよう支援する役割がある。第三に「継続的な擁護者」として、決定後もその人らしさが尊重されるよう見守り続ける役割がある。 特に重要なのは、意思決定を一回の出来事ではなく、継続的なプロセスとして捉える視点である。患者の状態や思いは変化するものであり、常に患者の言葉や反応に注意を払い、必要に応じて再検討の機会を設けることが必要だ。その際、看護師は患者にとっての「最善」と「本人の希望」のバランスを常に考慮しながら、その人らしい最期を支えるための調整を行うのである。

多角的視点を身につけるためのトレーニング法

小論文で多角的視点を効果的に表現するためのトレーニング法を紹介します。

1. 立場入れ替え法

ある医療場面を想定し、患者、家族、医師、看護師など異なる立場になりきって、その状況をどう感じ、考えるかを書き出す練習です。

例題: 「肺がんと診断された65歳の男性患者に対する告知の場面」を、以下の立場からそれぞれ考えてみましょう。

  • 患者本人(会社経営者)
  • 妻(最初は夫に告知しないでほしいと希望)
  • 主治医
  • プライマリーナース

2. 視点マトリックス法

一つの問題や状況に対して、異なる立場からの「事実認識」「感情」「価値観」「行動指針」を表にまとめる方法です。

: 「認知症高齢者の身体拘束」について考える

立場事実認識感情価値観行動指針
患者なぜ縛られているのか理解できない恐怖、怒り、屈辱感自由、尊厳抵抗する
家族転倒防止のための必要措置罪悪感、安心感の混在安全、尊厳安全と尊厳のバランスを求める
看護師転倒リスクと拘束による二次的問題のジレンマ倫理的葛藤安全確保と自律尊重代替手段の検討
施設管理者事故リスクと人員配置の問題責任の重圧効率と安全管理マニュアル整備とリスク管理

3. 医療ドラマ・書籍の分析法

医療を扱ったドラマや小説、ドキュメンタリーを見て、登場人物の立場や視点の違いを分析する方法です。「医療現場の葛藤」を描いた作品は、多角的視点の理解に役立ちます。

4. 事例ディスカッション法

友人や勉強会のメンバーと、医療倫理的ジレンマを含む事例について、それぞれが異なる立場を担当してディスカッションする方法です。

次回予告と今回のまとめ

今回は「患者の視点と医療者の視点」について解説しました。同じ医療場面でも立場によって見え方や感じ方が大きく異なることを理解し、それらの多様な視点を小論文に取り入れることで、考察の深さと広がりを表現することができます。特に看護師は患者と医療チームの間に立つ存在として、これらの視点を理解し統合する力が求められます。

次回は「医療倫理のケーススタディ」について解説します。医療倫理の基本原則を理解し、倫理的ジレンマを含む事例を多角的に分析する方法について詳しく解説していきます。

皆さんの看護小論文学習が実り多きものになることを願っています。

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ブログ 小論文対策 看護学科志望者のための実践ガイド

思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第2回 「医療・看護系キーワードの理解と活用法」

こんにちは。あんちもです。

前回は看護学科の小論文の特徴と対策の基本姿勢についてお伝えしました。今回は、看護小論文で効果的に使える「医療・看護系キーワード」について解説します。適切な専門用語を使いこなすことは、あなたの小論文に説得力と専門性を与え、看護学科の入試で高評価を得るための重要なスキルです。

医療・看護系キーワードの重要性

看護学科の入試において、適切な医療・看護系のキーワードを使用することには、以下のような意義があります:

  1. 志望意欲の証明:基本的な看護用語を理解していることは、看護への関心の高さを示します
  2. 専門的思考の表現:専門用語を適切に使うことで、医療者としての視点や思考が表現できます
  3. 論述の効率化:専門用語を使うことで、複雑な概念を簡潔に伝えることができます
  4. 入学後の学習への準備:入学前から基礎知識を身につけることで、専門教育へのスムーズな移行が期待できます

ただし、注意すべき点もあります。単に専門用語を散りばめるだけでは効果はなく、むしろ誤用は逆効果となります。専門用語は「自分の考えを正確に伝えるための道具」と考え、適切な理解のもとで使用することが大切です。

必ず押さえておきたい基本概念

看護小論文で頻出する基本的な概念とキーワードを、カテゴリー別に紹介します。これらの概念を正確に理解し、適切に使用できるようになりましょう。

1. 看護の基本理念に関するキーワード

  • ケア(Care):看護の本質的な概念。単なる「世話」ではなく、対象者の健康と幸福のための総合的な支援を意味します。
  • QOL(Quality of Life、生活の質):病気の治療だけでなく、患者の生活の質を重視する考え方。「どう生きるか」という質的側面に焦点を当てます。
  • ホリスティックケア(全人的ケア):人間を身体・精神・社会的側面を持つ統合体として捉え、総合的にケアする考え方です。
  • エンパワメント:患者自身が自分の健康や生活をコントロールする力を高めるプロセスを指します。
  • アドボカシー(権利擁護):患者の権利や意思を守り、代弁する看護師の重要な役割です。

小論文での活用例

現代の看護において求められるのは、単に疾患を治すだけでなく、患者のQOLを高める視点である。特に高齢者医療では、最先端の治療技術だけでなく、その人らしい生活を支えるホリスティックケアの実践が重要となる。

2. 看護実践に関するキーワード

  • 看護過程:アセスメント、診断、計画、実施、評価という一連の問題解決プロセスです。
  • フィジカルアセスメント:視診・触診・打診・聴診などの技術を用いた身体状態の評価です。
  • インフォームド・コンセント:医療行為について十分な説明を受けた上での患者の同意です。
  • リスクマネジメント:医療事故を予防し、安全な医療を提供するための組織的取り組みです。
  • POS(Problem Oriented System):問題志向型システム。患者の問題に焦点を当てた記録・対応法です。

小論文での活用例

看護師は日々のケアの中で、常に看護過程に基づいた実践を行っている。例えば、高齢患者の転倒リスクについてアセスメントを行い、問題点を明確化した上で予防策を計画・実施し、その効果を評価するというプロセスを踏むことで、科学的な看護を提供している。

3. 医療・福祉制度に関するキーワード

  • 地域包括ケアシステム:高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される体制です。
  • 在宅医療:病院ではなく自宅で受ける医療。訪問看護はその重要な一翼を担います。
  • 多職種連携(チーム医療):医師、看護師、薬剤師、理学療法士など多様な専門職が協働して医療を提供する体制です。
  • 医療の質評価:医療サービスの質を客観的に評価し、改善するための取り組みです。
  • 医療資源の適正配分:限られた医療資源を公平かつ効率的に配分する考え方です。

小論文での活用例

超高齢社会の日本では、地域包括ケアシステムの構築が急務となっている。このシステムの中で看護師には、病院と在宅をつなぐ役割や多職種連携のコーディネーターとしての役割が期待されている。

4. 医療倫理に関するキーワード

  • 自律尊重:患者の自己決定権を尊重する原則です。
  • 無危害:患者に害を与えないという原則です。
  • 善行:患者の利益を最大化するという原則です。
  • 公正:医療資源を公平に分配するという原則です。
  • インフォームド・コンセント:十分な情報提供に基づく同意です。
  • 守秘義務:患者情報の秘密を守る義務です。

小論文での活用例

終末期医療における意思決定では、患者の自律尊重と善行原則が時に対立することがある。例えば、医学的に効果が期待できない治療を患者が希望する場合、看護師は患者の意思を尊重しつつも、最善の利益とは何かを多角的に考える必要がある。

5. 現代医療の課題に関するキーワード

  • 医療の高度化・専門化:医療技術の進歩による治療の高度化・専門分化です。
  • 少子高齢化:人口構造の変化による医療ニーズの変化を指します。
  • 医療格差:地域や経済状況による医療アクセスの不平等です。
  • 医療安全:医療事故を防ぎ、安全な医療を提供する取り組みです。
  • メンタルヘルス:心の健康に関する問題と対策です。

小論文での活用例

医療の高度化・専門化が進む一方で、患者の全体像を捉える視点が失われる危険性も指摘されている。このような状況において、看護師には専門的知識を持ちながらも、常に患者を一人の人間として全体的に捉えるホリスティックな視点が求められる。

キーワードの効果的な活用法

看護系キーワードを小論文で効果的に活用するためのポイントを紹介します。

1. 文脈に合った適切な使用

専門用語は、その概念が必要な文脈で使うことが重要です。無理に専門用語を詰め込むと、かえって読みにくい文章になります。

不適切な例

私は看護師になって、インフォームド・コンセント、アドボカシー、エンパワメント、ホリスティックケアを実践したいです。

改善例

私は看護師として、患者さんの意思決定を支える(インフォームド・コンセント)とともに、時に患者の権利を守る代弁者(アドボカシー)となり、自らの力で健康を獲得する力を引き出す(エンパワメント)支援をしたいと考えています。そのためには、患者さんを身体面だけでなく、心理面・社会面を含めた全人的な存在(ホリスティック)として捉える視点が不可欠です。

2. 正確な理解に基づく使用

専門用語の意味を正確に理解し、適切に使用することが重要です。曖昧な理解での使用は避けましょう。

誤用例

患者のQOLを高めるために、看護師はフィジカルアセスメントを活用して心のケアをすることが大切だ。

正しい例

患者のQOLを高めるためには、看護師はフィジカルアセスメントによる身体状態の正確な評価とともに、精神的・社会的側面にも目を向けた全人的なケアを提供することが重要である。

3. 具体例と結びつけた使用

抽象的な概念を具体例と結びつけることで、理解が深まり説得力が増します。

抽象的な例

地域包括ケアシステムは高齢社会において重要である。

具体例と結びつけた例

一人暮らしの認知症高齢者が増加する中、医療・介護・生活支援などが連携した地域包括ケアシステムの構築は、高齢者が住み慣れた地域で尊厳ある生活を続けるために不可欠である。例えば、訪問看護師による定期的な健康管理、デイサービスでの社会交流、見守りボランティアによる生活支援など、多様なサービスを組み合わせることで、施設入所を遅らせることができる。

4. 自分の言葉で噛み砕いて説明

専門用語を使った後に、自分の言葉で補足説明を加えると、理解度が伝わります。

専門用語のみの例

看護師にはアドボカシーの役割が重要である。

噛み砕いた例

看護師にはアドボカシー、つまり患者の権利や意思を守り、時には代弁者となる役割が重要である。例えば、意識の低下した患者に対して医療従事者が事務的に処置を行おうとする場面では、「この方はどのような思いでこの治療を受けているのか」という視点から患者の尊厳を守る働きかけをすることが求められる。

実践練習:キーワードを活用した小論文例

以下のテーマで専門用語を適切に使った小論文の例を紹介します。

テーマ:「高齢化社会における看護師の役割について、あなたの考えを400字程度で述べなさい」

解答例

高齢化社会において看護師に求められる役割は、疾病の治療支援にとどまらず、高齢者のQOL向上を目指したホリスティックケアの実践者となることである。高齢者は複数の慢性疾患を抱え、身体機能の低下とともに社会的孤立などの問題も抱えやすい。そのため看護師には、フィジカルアセスメントによる身体状態の評価だけでなく、精神的・社会的側面も含めた総合的なアセスメント能力が求められる。 特に地域包括ケアシステムの進展に伴い、看護師には病院と在宅をつなぐ役割や多職種連携のコーディネーターとしての機能も期待されている。例えば、退院支援においては、患者の生活背景を考慮した退院計画の立案や、地域の医療・介護資源を活用した継続的なケア体制の構築が重要となる。 これからの看護師には、高齢者の自律性を尊重しながら、その人がその人らしく生きることを支えるエンパワメントの視点に立ったケアが不可欠である。

看護系キーワードを学ぶ方法

看護系のキーワードを効果的に学び、理解を深めるための方法を紹介します。

1. 看護学の入門書を読む

看護学の基本的な教科書や入門書を読むことで、基礎的な概念や用語を学ぶことができます。特に「看護学概論」「基礎看護学」などの分野の本は、看護の基本理念や考え方を学ぶのに適しています。

2. 看護・医療系の雑誌や新聞記事を読む

「看護」「医学のあゆみ」などの専門誌や、新聞の医療・健康欄を定期的に読むことで、最新の医療・看護の動向や課題について学ぶことができます。

3. 看護系大学のオープンキャンパスや公開講座に参加する

看護系大学のオープンキャンパスや公開講座では、看護の専門家から直接話を聞く機会があります。積極的に質問することで理解を深めましょう。

4. 医療ドキュメンタリー番組を視聴する

NHKスペシャルやプロフェッショナル仕事の流儀などの医療・看護を扱った番組では、現場の実態や看護師の思考プロセスを学ぶことができます。

5. 小論文の過去問を分析する

志望校の過去の小論文問題や模範解答を分析し、どのような専門用語が使われているかを研究することも効果的です。

次回予告と今回のまとめ

今回は看護小論文で使える医療・看護系キーワードについて解説しました。適切な専門用語を使いこなすことで、あなたの小論文の説得力と専門性が高まります。ただし、単に用語を羅列するのではなく、正確な理解に基づいて、文脈に合わせて適切に使用することが重要です。

次回は「患者の視点と医療者の視点」について解説します。看護小論文では、複数の視点から問題を考察することが求められます。患者、家族、医療者など、異なる立場からの視点をどのように小論文に取り入れ、多角的な考察を展開するかについて詳しく解説していきます。

皆さんの看護小論文学習が実り多きものになることを願っています。

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ブログ 小論文対策 小論文攻略法

高校生のための小論文攻略法 Part8:遠隔医療の普及 – 小論文の展開と具体的アプローチ

はじめに

新型コロナウイルス感染症をきっかけに急速に普及した遠隔医療は、医療のデジタル化における重要なテーマとなっています。特に地方における医療アクセスの改善や、高齢化社会における医療サービスの効率化において、その役割が注目されています。本記事では、この現代的なテーマについて、小論文でどのように論じるべきか、具体的な展開例とともに解説していきます。

テーマの重要性と社会的背景

1. 医療環境の変化

  • 医師の地域偏在問題
  • 高齢化による医療需要の増加
  • デジタル技術の進歩
  • 新しい生活様式への適応

2. 遠隔医療の利点

  • 通院負担の軽減
  • 地理的制約の解消
  • 感染リスクの低減
  • 医療リソースの効率的活用

3. 課題と懸念事項

  • 対面診療との使い分け
  • データセキュリティ
  • 医療の質の確保
  • 高齢者のデジタルリテラシー

小論文での展開例

序論の書き方

「医療のデジタル化が進む中、遠隔医療は新たな医療提供体制として注目を集めている。この技術が医療アクセスの改善や医療の効率化にどのように貢献し、どのような課題があるのか考察する。」

本論の構成

1. 現状分析

  • 遠隔医療の普及状況
  • 利用分野と適用範囲
  • 技術的基盤
  • 法制度の整備状況

2. メリットと活用事例

  1. 患者側のメリット
    • 通院時間の削減
    • 気軽な相談機会の増加
    • 継続的な健康管理
    • 感染リスクの低減
  2. 医療提供者側のメリット
    • 医療リソースの効率活用
    • 地域医療への貢献
    • 医療情報の共有促進
    • 業務効率の向上
  3. 社会的メリット
    • 地域間医療格差の縮小
    • 医療費の適正化
    • 予防医療の促進
    • 災害時の医療提供

3. 課題と解決策

  1. 技術的課題
    • 通信環境の整備
    • セキュリティ対策
    • 操作性の向上
    • システムの標準化
  2. 制度的課題
    • 診療報酬の見直し
    • 責任範囲の明確化
    • 個人情報保護
    • 医療過誤への対応
  3. 社会的課題
    • デジタルデバイド
    • 医療従事者の教育
    • 患者の理解促進
    • 対面診療との併用

結論の書き方

「遠隔医療は、医療アクセスの改善と効率化に大きな可能性を持つ一方で、技術面や制度面での課題も存在する。対面診療との適切な組み合わせと、誰もが利用しやすい環境整備を進めることで、より良い医療提供体制の構築が可能となる。」

効果的な論述のポイント

1. データの活用

具体的な数値を示すことで説得力が増します:

  • 遠隔診療の実施件数
  • 医師の地域偏在データ
  • 患者満足度調査
  • 医療費削減効果

2. 多角的な視点

様々な立場からの考察が重要です:

  • 患者の視点
  • 医療従事者の立場
  • 医療機関の運営面
  • 社会保障制度との関連

3. 具体例の引用

実在の取り組みを紹介することで説得力が増します:

  • 先進的な医療機関の事例
  • 地域医療での活用例
  • 海外での成功事例
  • 技術革新の動向

よくある失敗例と対策

1. 技術偏重の分析

❌ 「技術があれば解決できる」という楽観的な見方 ⭕️ 社会的・制度的課題も含めた総合的な検討

2. 極端な主張

❌ 「すべての診療を遠隔化すべき」という非現実的な提案 ⭕️ 対面診療との適切な組み合わせを考慮

3. 表面的な分析

❌ 利便性のみに注目した議論 ⭕️ 医療の質や安全性も含めた多面的な分析

練習課題

以下のテーマで小論文を作成してみましょう:

  1. 「遠隔医療が地域医療にもたらす可能性について論じなさい」
  2. 「遠隔医療の普及における課題と解決策について考察しなさい」
  3. 「高齢化社会における遠隔医療の役割について論じなさい」

まとめ

遠隔医療は、医療アクセスの改善や効率化において大きな可能性を持つ一方で、様々な課題も存在します。小論文では、技術的な側面だけでなく、社会的・制度的な観点からも検討を加え、現実的な提案を行うことが重要です。特に、データや具体例を効果的に用いることで、説得力のある論述を展開することができます。

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合格体験記

奈良県立医科大学看護学科

新しい年度が始まり、新大学一年生にとっては期待と不安が入り混じる時期です。新たな出会いや経験に胸を膨らませる一方で、未知のことに対する不安も感じることでしょう。しかし、この新たな一歩を踏み出すことで、成長と自己発見の旅が始まります。

 昨年秋の学校推薦型選抜で奈良県立医科大学看護学科に見事合格し、今春から大学に通い始めた生徒さんの合格体験記を、ご本人の了解のもと掲載します。

A.Tさん(奈良)合格体験記

私がこの大学を目指すようになったのは、高校二年生の冬頃です。それまで、看護の道は数ある選択肢の中の一つでした。進路について深く考えた時に、人の命を救える様になりたいと思い、看護の道に進むことを決めました。

高校一年生の時から、学校で良い成績を得ることと部活動を、両立する事に励みました。二年生の夏頃にオープンキャンパスに行き、学校の雰囲気や看護職の事を詳しく知り、奈良医大に行きたいという気持ちが強くなりました。また、看護学科のある他の大学についても調べ、本当に私自身が進学したいのは奈良医大なのかも考えました。部活を引退するまでに上記の事をしておくことで、受験生の時期、必ず合格するという強い気持ちを持てました。夏休み中は、受験で必要な共通テストの科目の基礎固めを主にしていました。併せて、小論文塾にも通い始めました。小論文を書くのは初めてで、何から始めれば良いのか分からなかったのですが、先生が1から教えてくださった為、不安な気持ちを持つことなく、取り組む事が出来ました。推薦入試の日が近づくにつれて、取り組む課題の量を増やしたり、志望理由書を書いたりと、こなさなければならない量が増え、不安が募るようになりました。その際、先生は、様々な種類の小論文の課題を満遍なく出して下さったり、志望理由書の内容を親身になって一緒に試行錯誤して下さったりと、すごく寄り添って支えて下さいました。そのため、当日は不安や緊張を感じず、試験に挑むことが出来ました。

推薦入試がダメだった時の為に、共通テストの勉強もしっかりと行っていました。ですが、小論文と共通テストの勉強という、異なるものを双方真摯に取り組む必要があった為、切り替えをすることが難しかったです。その点に置いて、小論文の授業があると、メリハリをつけて勉強に取り組む事が出来るため、凄く楽に勉強の計画を立てることが出来ました。言葉遣いや内容についての疑問点があっても、直ぐに解消出来るという点はすごく大きいと思います。

時事問題の勉強については、2つ良い方法があります。1つ目は、時事問題のまとめの本を購入し、熟読することです。詳しく丁寧な解説が添付されている事が多いため、理解が深まると思います。2つ目は、移動時間や休憩時間にネットでニュースを調べまとめることです。この時に、自身の考えも一緒にまとめておくと、効率よく様々な事情について考えることが出来ると思います。更に、共通テストの勉強は、英語に重点を置いておくと、推薦入試の対策にもなる為、効率がいいと思います。

併願校の公募推薦を受けたり、検定の資格を取っておいたりすることで、より安心して試験に望むことが出来ると思います。

上記に加えて、先生が適切なアドバイスを下さったり、親身になって一緒に考えて下さったお陰で無事、合格することが出来ました。今は不安な事や分からないことの方が多いと思いますが、真面目に懸命に取り組めばきっと合格できると思います。頑張って下さい!

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合格体験記

奈良県立医科大学看護学科

Y.Iさん(奈良)合格体験記

私はもともと作文など自分の考えを文章に書くことが苦手でした。夏休み前に、学校で受けられる小論文模試を初めて受けましたが、散々で小論文について何も分かっていませんでした。夏休み中に共通テストの勉強と両立しながら、個別塾で何回か講習を繰り返し、小論文の基礎を学びました。そこから共通テストに全力を尽くし、共通テストが終わるまで小論文対策はしていませんでした。11月後半最後の全統模試までずっとE判定でしたが、共通テスト本番でB判定を取ることができ、残り1ヶ月の小論文対策を山田先生にお願いをしました。山田先生から課題を送っていただき、毎日過去問1年分は解くようにしていました。解いたものを山田先生に送り、もらったアドバイスを参考にしながらその問題をもう一度考え、1週間に1回の授業で詳しく丁寧に解説、添削をしていただきました。また、看護の知識を付けるために、樋口裕一さんの「小論文これだけ!」の超基礎編と深掘り編の参考書や学校の家庭科の授業で使っていた「生活学Navi」を毎日読んだり、Youtubeで今の社会問題についての動画を隙間時間にずっと見ていました。後からすぐに見返せるよう、学んだ知識を自分のノートに書き込むなどの工夫もしていました。2次試験の1週間前くらいまで時間内に書き切ることができず、小論文は正解がはっきりとないので、ずっと不安を抱えていましたが、沢山書くことが重要であると私は思います。2月から過去問や参考書内の問題を毎日3題は解いたことで、小論文に慣れることができました。山田先生に毎日のように取り組んだ課題を送っていましたが、毎回丁寧にアドバイスしてくださり、沢山サポートして下さったおかげで合格を掴み取れたと感じています。息抜きも忘れずに、最後まで諦めず走りきれば必ず夢は叶います。

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合格体験記

奈良県立医大看護学科

C.Oさん(奈良)合格体験記

私が志望する大学には小論文と面接が必要でした。しかし、高校3年生の夏休み前の面談で進路が確定し、約4ヶ月で自力で小論文を自分のものにするには難しいと判断したうえに、担任の先生に指導するにも限りがあると言われ、松本小論文教室に通い始めました。
まず小論文を専門とした塾があることをわたしを含め母も知らなかったので、どこに通うかと大いに悩みました。その中で私が松本小論文教室に決めた大きな理由は、「1対1で学べること」、「スケジュールを自分で決めれること」、この二つでした。日にちや授業回数も自由が効くし、大阪の高校に通っている私にとってこれらは大きく作用したと思っています。
また、松本小論文教室は基本的に1人の先生が生徒にずっと付いてくれます。私は私を担当してくれた1人の先生のことしか分からないですが、先生は私との会話を大切にしてくれました。私は正直、この推薦で合格できるとは思っていなかったので共通テストも受験するつもりで並行して勉強していました。そういった不安も汲み取ってくれ、小論文に勉強が偏らないように調節し、宿題なども毎度期間内に可能か聞いてくれました。また、何気ない会話で私が述べたことが面接の模範解答に繋がることも多々ありました。時には小論文の問題のテーマを深く掘り下げて考え、私の意見を否定することなく様々な解答を与えてくださいました。これらのおかげで、当初は不安しかなかった小論文がいつの間にか次はどんなテーマなんだろう?とワクワクし、自分の視野が広がっていることが日に日に感じれることが私の嬉しさになっていました。
最後に、小論文と聞くと少し難しいものだと思う方が大半だと思います。しかし、書き方の型を身につければあとは自分の考えを述べるだけです。小論文は今までの些細なことでも自分が感じてきたことや学んできたことを発揮する場だと思っています。全ては今までの自分です。自分が感じていることを大切にすることを1番に考え、様々なことに対して様々な意見を持ってほしいと思います。そしてその事が自信に繋がると私は思っています。

私の体験を読んでくださった方々が少しでも進路に希望が持てたら大変嬉しく思います。みなさんの未来が明るいものとなるように祈ると同時に、一人の先輩として応援しています。貴重なお時間ありがとうございました。