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思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第8回 「なぜ看護師になりたいのか」の深掘り

こんにちは。あんちもです。

前回は「時事問題と医療・看護の関連性」について解説しました。今回は「なぜ看護師になりたいのか」の深掘りをテーマに、志望動機を説得力のある形で表現する方法を解説します。

「なぜ看護師を目指すのですか?」——これは看護学科の小論文や面接でほぼ必ず問われる質問ですよね。でも「人の役に立ちたいから」「看護師の仕事に憧れているから」といった表面的な回答では、あなたの本当の思いは伝わりません。今回は、みなさんが心の中に持っているはずの「看護師になりたい」という気持ちを、どう掘り下げ、どう表現すれば良いかを一緒に考えていきましょう!

志望動機を深掘りする意義

なぜ志望動機が重要なのか?

看護の道を志す理由は、あなたの看護観の原点となり、将来の看護実践の基盤となります。また、看護の道は決して平坦ではなく、困難に直面したときに踏みとどまる力にもなります。さらに、あなたならではの志望動機は、他の志願者との差別化にもつながるのです。

ありがちな志望動機の例

多くの受験生が書きがちな志望動機をいくつか挙げてみましょう:

  • 「人の役に立つ仕事がしたいから」
  • 「家族が病気になった時に看護師さんに助けられたから」
  • 「医療ドラマを見て憧れたから」
  • 「人と接することが好きだから」

これらの動機自体は決して悪くありません。でも、このままでは何千人もの志願者と同じ答えになってしまいます。大切なのは、こうした基本的な動機を掘り下げ、あなただけの物語にすることです。

志望動機を深掘りする5つの方法

1. 「原体験」を掘り下げる

看護師を目指すきっかけとなった原体験があるなら、その時の具体的な状況、あなたが感じたこと、考えたことを掘り下げましょう。

掘り下げ前: 「祖母の入院をきっかけに看護師を目指すようになりました」

掘り下げ後: 「祖母が入院した際、看護師さんが忙しい中でも祖母の話に耳を傾け、不安を和らげる姿に心を動かされました。特に印象的だったのは、祖母が夜間に痛みを訴えた時、看護師さんが単に痛み止めを与えるだけでなく、祖母の手を優しく握りながら『大丈夫ですよ』と声をかける姿でした。その時、専門的な医療行為だけでなく、患者さんの心に寄り添うことの大切さを実感し、私もそのような看護師になりたいと強く思うようになったのです」

2. 「なぜ?」を5回繰り返す

自分の志望理由に対して「なぜ?」を5回繰り返し問いかけることで、表面的な理由から本質的な動機へと掘り下げられます。

  • 「看護師になりたい」→「なぜ?」
  • 「人の役に立ちたいから」→「なぜ人の役に立ちたいのか?」
  • 「人が喜ぶ姿を見ると嬉しいから」→「なぜそれが看護という形なのか?」
  • 「直接的に人の支えになれる仕事がしたいから」→「なぜ直接的な支援が重要なのか?」
  • 「人生の大切な場面に寄り添える仕事に価値を感じるから」

このように掘り下げていくと、「人の役に立ちたい」という一般的な動機から、あなた固有の価値観や看護に対する思いが見えてきます。

3. 自分の強みと看護を結びつける

自分の強み、得意なこと、価値観と看護という仕事の特性を結びつけることで、あなたならではの志望動機が生まれます。

: 「私は小さい頃から観察力が鋭いと言われてきました。家族の小さな表情の変化に気づいたり、友人の悩みを察知したりすることが多いのです。この『気づく力』は看護において重要な要素だと考えています。患者さんの微細な変化や言葉にならないサインを見逃さず、早期に対応することで、より質の高いケアが提供できると思います。将来は特に急性期医療の現場で、この観察力を活かした看護を実践したいと考えています」

4. 看護の多様性を理解する

看護の仕事は病院だけでなく、在宅、学校、企業、国際協力など多岐にわたります。看護のどの側面に魅力を感じるのかを考えることで、志望動機が具体的になります。

: 「私が特に関心を持っているのは地域看護の分野です。私の祖父母が住む田舎では、高齢化が進み、医療機関まで遠い中で生活している高齢者が多くいます。そんな方々が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう支援する訪問看護の仕事に魅力を感じています。将来は訪問看護師として、医療過疎地域での在宅療養支援に携わりたいと考えています」

5. 看護の社会的意義を考える

看護という仕事が社会においてどのような意義を持つのかを考えることで、志望動機に深みが出ます。

: 「私は、医療が高度に専門化する現代社会において、看護師は『人間らしさ』を守る最後の砦になり得ると考えています。テクノロジーが進化しても、患者さんの不安や痛みに共感し、その人らしい生活を支える役割は、看護にしかできないものだと思います。特に超高齢社会において、単なる延命ではなく、一人ひとりの尊厳ある生を支える看護の役割はますます重要になると考え、その一翼を担いたいと思っています」

志望動機を表現する際のポイント

1. 具体的なエピソードを入れる

抽象的な言葉よりも、具体的な体験や場面の描写の方が説得力があります。「祖母の入院時に…」「ボランティア活動で…」「実際に看護師の方にお話を聞いて…」など、あなたの体験に基づいたエピソードを織り交ぜましょう。

2. 自己分析を深める

自分の性格、価値観、強み・弱みをしっかり分析し、それらが看護という仕事とどう結びつくのかを考えましょう。自己分析が深いほど、説得力のある志望動機になります。

3. 看護の理解を示す

看護という仕事の現実や課題についての理解を示すことで、単なる憧れではなく、現実を踏まえた上での志望であることをアピールできます。書籍、インターネット、オープンキャンパス、看護師へのインタビューなどを通じて知識を深めましょう。

4. 将来展望を含める

「看護師になりたい」という現在の思いだけでなく、看護師になった後どのような看護を実践したいのか、どのような分野で活躍したいのかなど、将来展望も含めると良いでしょう。

5. 素直な言葉で表現する

難しい言葉や飾り過ぎた表現よりも、あなたの思いが素直に伝わる言葉で表現することが大切です。読み手に「この人の言葉は本当だな」と感じてもらえる文章を心がけましょう。

実践演習:志望動機を深掘りしてみよう

以下の例を参考に、自分自身の志望動機を深掘りしてみましょう。

テーマ:「あなたが看護師を目指す理由と、どのような看護師になりたいかを述べなさい」(600字程度)

解答例

私が看護師を目指す原点は、中学生の時の祖母の入院体験にある。認知症を患っていた祖母は、環境の変化に混乱し、夜間に大声で叫んだり、点滴を抜こうとしたりしていた。そんな祖母に対し、担当の看護師さんは決して怒ることなく、祖母の目線に合わせて穏やかに話しかけ、不安を和らげていた。特に印象的だったのは、看護師さんが祖母の若い頃の話を引き出し、その会話の中で祖母が徐々に落ち着いていく様子だった。人は病気になっても、一人の人間として尊重されることで安心感を得られるのだと実感した瞬間だった。 この体験から、私は「その人らしさを守る看護」に強く惹かれるようになった。現代医療は高度に専門化し、効率性が重視される傾向にあるが、そうした中でも患者さん一人ひとりの個性や生活背景、価値観を大切にする看護を実践したいと考えている。 私は幼い頃から「聴く力」が得意だと言われてきた。友人の悩みを聞く際も、相手の言葉の奥にある思いを汲み取ることを心がけている。この力を活かし、患者さんの言葉にならないニーズや思いを察知できる看護師になりたい。 将来は、特に高齢者看護や緩和ケアの分野で活躍したいと考えている。人生の最終章を生きる方々が、最期まで自分らしく尊厳を持って生きられるよう支援することに、看護の深い意義を感じるからだ。そのためには、コミュニケーション能力だけでなく、確かな医学的知識や技術も必要であることを理解している。看護学を学ぶ中で、人間理解と科学的思考の両方を深め、「その人らしさを守る」という私の看護観を形にしていきたい。

ポイント解説

  • 具体的なエピソード(祖母の入院体験)から始まり、そこから得た気づきを説明
  • 「聴く力」という自分の特性と看護を結びつけている
  • 看護の中でも特に関心のある分野(高齢者看護・緩和ケア)に触れている
  • 「その人らしさを守る看護」という自分なりの看護観を示している
  • 現実的な理解(知識や技術の必要性)も示している

まとめと次回予告

今回は「なぜ看護師になりたいのか」の深掘りについて解説しました。表面的な志望動機から一歩踏み込み、あなただけの看護への思いを掘り下げることの重要性、そのための具体的方法について学びました。

志望動機は小論文や面接だけのためのものではありません。あなた自身の看護の原点として、これからの学びや実践の根幹となるものです。ぜひ時間をかけて、自分の看護師になりたい理由を深く掘り下げてみてくださいね。

次回は「看護現場の課題発見と解決策の提案」について解説します。医療・看護の現場にはどのような課題があるのか、そしてそれらの課題に対してどのような解決策を提案できるのかについて、具体的な手法を学んでいきましょう。

皆さんの小論文学習が実り多きものになることを願っています!