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ブログ 小論文対策 看護学科志望者のための実践ガイド

思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第15回 「模擬問題演習②とシリーズのまとめ」

こんにちは。あんちもです。

前回は「模擬問題演習①」として、「医療と人間関係」と「看護と倫理」という2つのテーマで模擬問題に取り組みました。今回は「模擬問題演習②」として、「医療と技術」と「共生社会と看護」という2つのテーマの模擬問題に挑戦します。そして最後に、全15回のシリーズを振り返り、小論文対策のポイントをまとめます。

これまで学んできた小論文の書き方を活かして、より実践的な力を身につけていきましょう。

模擬問題3:医療と技術

問題

以下の課題文を読み、問いに答えなさい。

近年、人工知能(AI)やロボット技術、遠隔医療システムなど、医療分野においても様々な技術革新が進んでいます。AI診断支援システムは膨大な医療データを分析し、医師の診断をサポートするようになり、手術支援ロボットの導入により、より精密な手術が可能になりました。また、遠隔医療システムの発展は、地理的な制約を超えた医療サービスの提供を可能にしています。

こうした技術の発展は、医療の質の向上や医療アクセスの改善に貢献する一方で、様々な課題も指摘されています。例えば、AIやロボットによる判断の責任の所在、患者データのプライバシー保護、対面診療と比較した際の医療の質の担保、さらには医療従事者の業務内容の変化などです。

これからの医療では、技術の利点を最大限に活かしながらも、「人にしかできないケア」の価値を再認識し、技術と人間の関わりのバランスを取っていくことが求められています。特に看護においては、患者に直接触れ、言葉にならないニーズを察知する「人間ならではの感性」が重要であり、技術の進歩の中でもその本質は変わらないとも言われています。

問い:医療における技術の活用と「人にしかできないケア」のバランスについて、あなたの考えを600字程度で述べなさい。

課題文の読み解き方

この課題文では、医療技術の進歩と「人にしかできないケア」のバランスがテーマとなっています。

テーマ:医療における技術の活用と「人にしかできないケア」のバランス

課題文のポイント

  1. 医療分野でもAI、ロボット技術、遠隔医療など様々な技術革新が進んでいる
  2. これらの技術は医療の質の向上や医療アクセスの改善に貢献している
  3. 一方で責任の所在やプライバシー保護、医療の質の担保などの課題もある
  4. これからは技術の利点を活かしながら「人にしかできないケア」の価値を再認識することが重要
  5. 看護では「人間ならではの感性」が重要であり、技術進歩の中でもその本質は変わらない

論点の整理

この問題に対して、以下のような論点が考えられます。

  1. 医療技術の進歩がもたらすメリット
    • 診断・治療の精度向上
    • 医療アクセスの改善
    • 医療者の負担軽減
  2. 技術活用に伴う課題
    • 人間関係の希薄化
    • 責任の所在の不明確さ
    • プライバシーやセキュリティの問題
  3. 「人にしかできないケア」の本質
    • 共感や情緒的サポート
    • 非言語的コミュニケーション
    • 個別性に応じた柔軟な対応
  4. 技術と人間のバランスの取り方
    • 技術を補完的に活用する視点
    • 技術によって生まれる時間を人間的ケアに充てる
    • 技術の限界を理解した上での活用

構成の立て方

600字という制限の中で、自分の考えを明確に伝えるためには、論点を絞り込む必要があります。例えば以下のような構成が考えられます。

序論(約100字):

  • 医療技術の進歩と「人にしかできないケア」のバランスについての問題提起
  • 自分の主張(例:技術は「人にしかできないケア」を充実させるために活用すべき)を簡潔に示す

本論(約400字):

  • 「人にしかできないケア」の本質について説明
  • 技術活用のメリットと課題
  • 両者のバランスをどう取るべきかについての自分の考え

結論(約100字):

  • 看護師として技術とどう向き合うかについてのまとめ
  • 将来展望や決意

解答例

医療分野における技術革新は、診断精度の向上や医療アクセスの改善など多くの恩恵をもたらしている。一方で、こうした技術の進歩により、ケアの本質である「人と人との関わり」が希薄化するのではないかという懸念も生じている。私は、医療技術は「人にしかできないケア」を充実させるための手段として活用すべきであり、両者は対立するものではなく、相互補完的な関係にあると考える。 「人にしかできないケア」の本質は、患者の言葉にならない思いや感情を察知し、共感的理解を示しながら寄り添うことにある。例えば、術後の痛みを訴える患者に対して、バイタルサインや表情から苦痛の程度を読み取り、手を握って声をかけながら不安を和らげる関わりは、現時点ではどんな高度な技術も代替できない。また、その人の価値観や生活背景を考慮した個別的なケア、患者の変化に応じた柔軟な対応なども、人間の感性と判断力があってこそ可能になる。 一方、技術の活用によって得られるメリットも大きい。例えば、バイタルサインの自動測定やAIによる異常検知システムにより、データ収集や記録にかかる時間が削減されれば、その分を患者との対話や精神的ケアに充てることができる。また、遠隔医療システムは地理的制約を超えた医療提供を可能にし、特に医療資源の乏しい地域の患者にとって大きな福音となる。 技術と人間のバランスを取るためには、「技術でできること」と「人にしかできないこと」を明確に区別し、それぞれの強みを活かす視点が重要だ。技術は定型的な業務や数値的評価に優れており、人間は共感性や創造性、個別的判断に優れている。看護師として、私は技術を「ケアの質を高めるための道具」として積極的に学び活用していく一方で、人間の温かみや共感的理解の重要性を常に意識し、テクノロジーに依存しすぎない姿勢を持ち続けたい。

解説

この解答例では、以下のポイントを押さえています。

  1. 序論では、医療技術と「人にしかできないケア」のバランスについての問題提起をし、「両者は対立するものではなく、相互補完的な関係にある」という自分の主張を明確に示しています。
  2. 本論では、まず「人にしかできないケア」の本質について具体例(術後患者への対応)を交えながら説明しています。
  3. 次に、技術活用のメリットとして「患者との対話や精神的ケアの時間確保」「医療アクセスの改善」を挙げています。
  4. そして、両者のバランスの取り方として「それぞれの強みを活かす視点」の重要性を論じています。
  5. 結論では、看護師として技術をどう捉えるかという自分の姿勢を示し、技術を「ケアの質を高めるための道具」として位置づけながらも「人間の温かみや共感的理解」も大切にするという展望を述べています。
  6. 全体を通して、対立図式ではなく、相互補完的な関係として技術と人間のケアを捉える視点が示されています。

模擬問題4:共生社会と看護

問題

以下の課題文を読み、問いに答えなさい。


日本社会は少子高齢化が進み、また価値観や生活様式の多様化が進んでいます。国籍や文化的背景、性的指向、能力の違いなど、様々な特性を持った人々が互いを尊重し、共に生きる「共生社会」の実現が求められています。

医療の現場においても、多様な背景を持つ患者に対応する機会が増えています。例えば、言語や文化の異なる外国人患者、認知症や知的障害を持つ患者、性的マイノリティの患者など、画一的なケアでは対応できないケースが増加しています。このような状況において、医療者には「多様性への理解」と「個別性に応じたケア」が一層求められるようになっています。

特に看護師は、患者に最も身近な医療者として、患者一人ひとりの背景や価値観を理解し、その人らしさを尊重したケアを提供する役割を担っています。また、患者と他の医療者をつなぐ架け橋としての役割も重要です。

共生社会における看護の役割は、単に医療的なケアを提供するだけでなく、患者の社会的背景も含めた全人的なケアを行い、すべての人が尊厳を持って生きられる社会づくりに貢献することにあると言えるでしょう。

問い:共生社会における看護の役割と課題について、あなたの考えを600字程度で述べなさい。

課題文の読み解き方

この課題文では、多様性が増す社会における看護の役割と課題がテーマとなっています。

テーマ:共生社会における看護の役割と課題

課題文のポイント

  1. 少子高齢化や価値観の多様化により「共生社会」の実現が求められている
  2. 医療現場でも多様な背景を持つ患者に対応する機会が増えている
  3. 医療者には「多様性への理解」と「個別性に応じたケア」が求められている
  4. 看護師は患者に最も身近な存在として「その人らしさを尊重したケア」を提供する役割がある
  5. 共生社会における看護の役割は「全人的なケア」と「社会づくりへの貢献」にある

論点の整理

この問題に対して、以下のような論点が考えられます。

  1. 共生社会における看護の役割
    • 多様性を尊重したケアの提供
    • 患者のアドボケート(代弁者)としての機能
    • 多職種・地域連携の促進
    • 健康格差の是正への貢献
  2. 多様性に対応するための課題とその解決策
    • 文化的感受性・多様性理解の向上
    • コミュニケーション方法の工夫
    • 偏見や先入観の払拭
    • 組織としての取り組み
  3. 具体的な対象者別の対応
    • 外国人患者への対応
    • 認知症や障害のある患者への対応
    • LGBTQなど性的マイノリティへの対応
    • 経済的困難を抱える患者への対応
  4. 看護師自身の成長と学びの必要性
    • 多様性に関する継続的学習
    • 自己の価値観や偏見の振り返り
    • 異文化対応能力の育成

構成の立て方

600字という制限の中で、共生社会における看護の役割と課題を論理的に述べるには、以下のような構成が考えられます。

序論(約100字):

  • 共生社会と看護の関係性について述べる
  • 自分の主張(例:多様性を尊重した個別的ケアの重要性)を簡潔に示す

本論(約400字):

  • 共生社会における看護の役割について2〜3点挙げて説明
  • それを実現するための課題と解決策
  • 具体的な事例を交えながら論じる

結論(約100字):

  • 共生社会における看護の意義を再確認する
  • 看護師としての自分の決意や展望を述べる

解答例

近年、多様性が尊重される共生社会の実現が求められるなか、医療現場においても様々な背景を持つ患者への対応が必要となっている。共生社会における看護の役割と課題について、私は「多様性を理解した個別的ケア」と「社会的包摂の促進」の二つの視点から考察したい。 第一に、看護師は多様な背景を持つ患者一人ひとりの個別性を理解し、尊重したケアを提供する役割がある。例えば、異なる文化的背景を持つ外国人患者に対しては、その文化における健康観や病気の捉え方、宗教的禁忌などを理解した上でケアを提供することが重要である。また、認知症の方には、その人の生活史や価値観を理解し、残存能力を活かした支援を行うことで、その人らしさを保つことができる。 しかし、この役割を果たす上での課題として、看護師自身の文化的感受性の向上や多様性に対する理解の深化が挙げられる。この課題に対しては、継続的な学習と自己の価値観の振り返りが必要である。私自身、高校時代の多文化交流活動を通じて、「当たり前」が人によって異なることを学んだ経験から、常に自分のバイアスを意識することの重要性を感じている。 第二に、看護師は患者の社会的包摂を促進する役割も担っている。例えば、障害を持つ患者が社会復帰する際には、単に医療的ケアを提供するだけでなく、地域の資源につなげたり、就労支援の情報提供を行ったりすることで、その人が社会の一員として尊厳を持って生活できるよう支援する。また、患者の代弁者として、医療チームや地域社会に患者のニーズを伝え、必要な支援体制の構築を促す役割も重要である。 この役割を果たすための課題として、多職種連携や地域連携の強化が挙げられる。看護師一人の力には限界があるため、様々な専門職や地域住民と協働し、包括的な支援体制を構築することが必要だ。 共生社会における看護とは、単なる医療行為を超え、多様性を尊重しながら一人ひとりの社会参加を支援することにある。私は将来、多様な背景を持つ人々に寄り添い、誰もが尊厳を持って生きられる社会づくりに貢献できる看護師になりたい。

解説

この解答例では、以下のポイントを押さえています。

  1. 序論では、共生社会における看護について「多様性を理解した個別的ケア」と「社会的包摂の促進」という二つの視点から考察するという主張を示しています。
  2. 本論では、まず「多様性を理解した個別的ケア」の役割について説明し、外国人患者や認知症の方への対応を具体例として挙げています。
  3. その役割を果たす上での課題と解決策として、看護師自身の文化的感受性の向上や自己の価値観の振り返りの必要性に言及しています。
  4. 次に「社会的包摂の促進」の役割について説明し、障害を持つ患者の社会復帰支援などを例に挙げています。
  5. その役割の課題として、多職種連携や地域連携の強化の必要性を指摘しています。
  6. 結論では、共生社会における看護の意義をまとめ、自分自身の将来の看護師像を示して締めくくっています。
  7. 全体を通して、抽象的な議論だけでなく、具体的な患者群(外国人、認知症の方、障害を持つ方)への対応例を挙げることで、実践的な視点を示しています。

小論文力を高めるためのシリーズまとめ

全15回にわたる「思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド」も、いよいよ最終回です。ここでは、これまでの内容を振り返り、看護学科の小論文対策として特に重要なポイントをまとめてみましょう。

1. 看護小論文の基本

看護学科の小論文には、以下のような特徴があります。

  • 医療・看護に関する基本的知識や理解が問われる
  • 「患者中心」「生活者の視点」など看護の視点が重視される
  • 単なる知識ではなく、思考力や価値観が評価される
  • 論理的思考力と共感性のバランスが求められる

小論文を書く際の基本的な流れは以下の通りです。

  1. 課題文を丁寧に読み、テーマと論点を把握する
  2. 自分の主張と根拠を明確にする
  3. 序論・本論・結論の構成を立てる
  4. 具体例を交えながら論理的に記述する
  5. 看護の視点を意識して結論づける

2. 看護小論文で重視される視点

看護学科の小論文で特に重視される視点として、以下のようなものが挙げられます。

患者中心の視点

医療者視点だけでなく、患者の立場に立って考える姿勢が重要です。

例文:「医療の高度化が進む一方で、患者が『何を大切にしたいか』という価値観に基づいた選択を支援することが、これからの医療には不可欠である」

生活者としての視点

疾患だけでなく、患者の生活全体を視野に入れる視点が求められます。

例文:「糖尿病患者への指導は、単に食事内容や運動方法を伝えるだけでなく、その人の職業、家族構成、趣味など生活全体を理解した上で、実現可能な方法を共に考えることが重要である」

多角的な視点

問題を一面的ではなく、多角的に捉える姿勢が評価されます。

例文:「認知症患者のケアでは、医学的側面だけでなく、心理的側面、社会的側面、そして倫理的側面からも検討する必要がある」

共感と客観性のバランス

感情に流されすぎず、かといって冷たすぎない、バランスの取れた視点が大切です。

例文:「患者の苦痛や不安に共感しながらも、専門的知識に基づいた客観的な判断を行うことが、看護師には求められる」

3. 表現力を高めるためのテクニック

以下のようなテクニックを活用することで、より説得力のある文章を書くことができます。

具体例の活用

抽象的な議論だけでなく、具体的な事例を挙げることで、説得力が増します。

例文:「コミュニケーションの重要性について理解したのは、祖母が入院した際、看護師が『どうしました?』ではなく『何かお困りのことはありますか?』と声をかけた場面を見たときだった。この小さな言葉の違いが、祖母の不安を和らげていたのである」

比較と対比

二つの考え方を比較することで、自分の主張をより明確にできます。

例文:「従来の『医学モデル』では疾患の治療が中心だったのに対し、『生活モデル』では患者のQOL向上が重視される」

トピックセンテンスの活用

段落の冒頭で主題を明確に示すことで、読み手に伝わりやすくなります。

例文:「看護師に求められる資質として、私は特に『観察力』を重視したい。例えば…」

自分の経験と結びつける

抽象的な議論を自分の具体的な経験と結びつけることで、説得力と個性が生まれます。

例文:「私がチーム医療の重要性を実感したのは、ボランティアで訪れた老人ホームで、看護師、介護士、リハビリ専門職が連携して一人の高齢者を支える姿を目の当たりにしたときだった」

4. 看護小論文のよくあるテーマと対策

看護学科の小論文でよく出題されるテーマと、それに対するアプローチ方法を確認しておきましょう。

1) 医療と人間関係

患者-医療者関係、チーム医療における人間関係などがテーマとなります。

アプローチ:信頼関係の重要性、コミュニケーションの工夫、多職種連携の意義などを、具体例を交えて論じる。

2) 看護と倫理

患者の権利尊重、インフォームドコンセント、終末期医療などの倫理的問題がテーマとなります。

アプローチ:倫理的原則(自律尊重、善行、無危害、公正)に触れながら、具体的な事例での倫理的判断のプロセスを述べる。

3) 医療と技術

医療技術の進歩と課題、AIやロボットの導入、遠隔医療などがテーマとなります。

アプローチ:技術のメリットと課題をバランスよく論じ、「人にしかできないケア」の本質について自分の考えを示す。

4) 共生社会と看護

多様性、障害者や高齢者の支援、健康格差などがテーマとなります。

アプローチ:多様性を尊重することの意義、個別性に応じたケアの重要性、社会的包摂への貢献などを論じる。

5) 看護師を目指す理由

志望動機を問う問題も頻出です。

アプローチ:単なるエピソードの羅列や感動体験ではなく、その経験から何を学び、どのような看護観を形成したのかを深く掘り下げる。

5. 本番で力を発揮するために

最後に、本番の入試で実力を発揮するためのアドバイスをまとめておきます。

日頃からの準備

  • 医療・看護に関するニュースや記事に関心を持つ
  • 様々な角度から物事を考える習慣をつける
  • 自分の考えを言語化し、論理的に説明する練習をする
  • 時間を計って小論文を書く練習を重ねる

本番での心構え

  • 落ち着いて課題文を読み、問われていることを正確に把握する
  • 時間配分を意識して取り組む
  • 結論から書き始めるのではなく、序論・本論・結論の構成を意識する
  • 看護の視点を忘れずに、自分の考えを誠実に表現する

見直しのポイント

  • 問いに対して適切に答えているか
  • 主張と根拠が明確か
  • 具体例が適切に用いられているか
  • 誤字・脱字はないか
  • 文と文、段落と段落のつながりは自然か

おわりに

全15回にわたる「思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド」はいかがでしたか?小論文は、単なる知識の量や文章の美しさだけでなく、あなたの思考力や看護に対する姿勢、人間性そのものが問われる試験です。

小論文を書く力は、看護学科の入試に合格するためだけのものではありません。論理的に考え、自分の考えを適切に表現する力は、看護師になってからも、患者さんやご家族との関わり、チーム医療での意見交換、看護研究など、様々な場面で活かされます。

この連載が、皆さんの小論文対策の一助となれば幸いです。皆さんが志望校に合格し、理想の看護師に近づいていけるよう、心から応援しています!

あんちも

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ブログ 小論文対策 看護学科志望者のための実践ガイド

思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第14回 「模擬問題演習①」

こんにちは。あんちもです。

前回は「自己の経験を看護に結びつける」について解説しました。今回から2回にわたって「模擬問題演習」を行います。これまで学んできた小論文の書き方のポイントを活かして、実際の看護学科入試で出題されるような問題に取り組んでみましょう。

模擬問題演習では、課題文の読み解き方から論理的な文章の組み立て方まで、総合的に学ぶことができます。また、実際に制限時間を設けて取り組むことで、本番の入試を想定した練習になります。

今回は2つの模擬問題を用意しました。それぞれの問題について、課題文の読み解き方、論点の整理、構成の立て方、そして解答例と解説を提供します。ぜひ、自分でも解答を作成してみてください。

模擬問題1:医療と人間関係

問題

以下の課題文を読み、問いに答えなさい。


現代の医療現場では、高度な医療技術の発展により、かつては治療が困難だった疾患の多くが治療可能になってきました。一方で、医療の高度化・専門化に伴い、医療者と患者の関係性も変化しています。「医学モデル」では疾患の治療に焦点が当てられ、患者は治療の対象として位置づけられがちでした。これに対し、近年では「生活モデル」が重視され、患者の生活や価値観を尊重する医療が求められています。

また、インターネットの普及により、患者も医療情報に容易にアクセスできるようになり、医療者と患者の情報格差が縮小しています。こうした変化の中で、医療者には専門的知識や技術だけでなく、患者との信頼関係を構築するコミュニケーション能力がより一層求められるようになっています。

しかし、医療現場の多忙さや業務の効率化が進む中で、患者とじっくり向き合う時間の確保が難しいという課題も指摘されています。医療者と患者の良好な関係構築は、治療効果にも影響するとされており、医療の質向上のためには欠かせない要素です。


問い:現代の医療における「人間関係」の重要性について、あなたの考えを600字程度で述べなさい。

課題文の読み解き方

まずは課題文を丁寧に読み、何がテーマとなっているか、どのような論点が含まれているかを整理しましょう。

テーマ:現代の医療における「人間関係」の重要性

課題文のポイント

  1. 医療の高度化・専門化が進み、「医学モデル」から「生活モデル」への転換が起きている
  2. インターネットの普及により患者も医療情報にアクセスできるようになった
  3. 医療者と患者の信頼関係構築が重要になっている
  4. 多忙さや業務効率化の中で患者とじっくり向き合う時間確保が難しい
  5. 医療者と患者の良好な関係は治療効果にも影響する

論点の整理

この問題に対して、以下のような論点が考えられます。

  1. なぜ現代の医療において人間関係が重要なのか
    • 治療効果への影響
    • 患者中心の医療の実現
    • 治療方針の共有と自己決定の支援
  2. 医療者と患者の関係性の変化
    • 情報格差の縮小
    • 患者の主体性の増大
    • 医療者の役割の変化
  3. 人間関係構築の課題と工夫
    • 時間的制約の中での効果的なコミュニケーション
    • チーム医療の中での役割分担
    • ICTの活用と限界
  4. 看護師の立場から見た人間関係の意義
    • 24時間患者に寄り添う立場としての特性
    • 医師と患者をつなぐ役割
    • 患者の生活全体を視野に入れたケア

構成の立て方

600字程度という字数制限を考慮すると、すべての論点を深く掘り下げることは難しいため、特に重要と思われる点に絞り込んで論じる必要があります。例えば以下のような構成が考えられます。

序論(約100字):

  • 現代医療における人間関係の位置づけについて端的に述べる
  • 自分の主張(人間関係が重要である理由)を簡潔に示す

本論(約400字):

  • 人間関係が重要な理由を2〜3点挙げて説明する
  • 具体例や自分の経験も交えながら説得力を持たせる
  • 人間関係構築の課題と解決策についても触れる

結論(約100字):

  • 医療における人間関係の重要性を再確認する
  • 看護師を目指す立場からの決意や展望を述べる

解答例

現代の医療において、人間関係の重要性はますます高まっている。医療技術の高度化が進み、治療の選択肢が増える中で、患者の価値観や生活背景を考慮した医療が求められるようになった。また、インターネットの普及により患者の医療情報へのアクセスが容易になり、医療者と患者の関係性も変化している。このような背景から、現代医療における人間関係の重要性について考察する。 医療における人間関係が重要である第一の理由は、治療効果への直接的な影響である。医療者と患者の間に良好な関係が構築されると、患者の治療への信頼感や前向きな姿勢が生まれ、治療効果の向上につながる。例えば、術後のリハビリテーションでは、患者の不安や痛みを理解し、励ましながら支援することで、患者の回復意欲が高まり、結果的に早期回復につながることが多い。 第二に、患者中心の医療を実現するためには、患者の価値観や生活背景を理解することが不可欠である。同じ疾患でも、患者によって望む生活や優先する価値は異なる。医療者が患者としっかりとした関係性を築き、対話を重ねることで、その患者にとって最適な治療方針を共に見出すことができる。 一方で、医療現場の多忙さの中で、患者との関係構築に時間を確保することは容易ではない。しかし、限られた時間でも患者の話に耳を傾け、目線を合わせることで信頼関係の基盤を作ることは可能である。また、チーム医療の中で情報を共有し、患者に一貫したケアを提供することも重要である。 看護師は24時間患者に寄り添い、医師と患者をつなぐ役割も担う。だからこそ、患者との関係構築において中心的な役割を果たすことができる。私は将来、専門的知識や技術の習得に努めるとともに、一人ひとりの患者と真摯に向き合い、信頼関係を築ける看護師を目指したい。

解説

この解答例では、以下のポイントを押さえています。

  1. 序論では、課題文の要点を簡潔にまとめながら、テーマを提示しています。
  2. 本論では、医療における人間関係が重要な理由を「治療効果への影響」と「患者中心の医療の実現」という2つの観点から説明しています。
  3. さらに、人間関係構築の課題と工夫についても触れ、現実的な視点を示しています。
  4. 結論では、看護師の立場から見た人間関係の意義に触れ、自分自身の決意も述べることで締めくくっています。
  5. 全体を通して、抽象的な議論にとどまらず、リハビリテーションの例など具体的な事例を挙げることで説得力を高めています。

模擬問題2:看護と倫理

問題

以下の課題文を読み、問いに答えなさい。


近年、医療技術の進歩により、人の生命や健康に関わる様々な選択が可能になりました。例えば、延命治療の選択、遺伝子検査による疾病リスクの予測、生殖補助医療の発展などです。これらの技術の発展は多くの恩恵をもたらす一方で、「何ができるか」ではなく「何をすべきか」という倫理的な問いを私たちに投げかけています。

医療現場では、患者の権利と自己決定の尊重、公平性の確保、プライバシーの保護などの倫理的原則が重視されています。しかし実際の医療現場では、患者の意思と家族の希望が異なる場合や、限られた医療資源の中での公平な分配、患者の最善の利益と自己決定権の間での葛藤など、様々な倫理的ジレンマが生じることがあります。

看護師は患者に最も身近な医療者として、こうした倫理的問題に日常的に向き合っています。患者の意思を尊重しながらも、その人の最善の利益を考え、さらには家族や社会的側面も考慮した倫理的判断が求められるのです。


問い:医療現場における倫理的問題について、あなたが重要だと考える倫理的原則や価値観を挙げ、具体的な事例を交えながら600字程度で述べなさい。

課題文の読み解き方

この課題文では、医療技術の進歩に伴う倫理的問題と、看護師がそれらにどう向き合うかがテーマとなっています。

テーマ:医療現場における倫理的問題と看護師の役割

課題文のポイント

  1. 医療技術の進歩により「何をすべきか」という倫理的問いが重要になっている
  2. 医療現場では患者の権利尊重、公平性、プライバシー保護などの倫理的原則が重視されている
  3. 実際の医療現場では様々な倫理的ジレンマが生じる
  4. 看護師は患者に最も身近な医療者として倫理的問題に向き合っている

論点の整理

この問題に対して、以下のような論点が考えられます。

  1. 医療倫理の基本原則
    • 自律尊重(患者の自己決定権)
    • 善行(患者に最善の利益をもたらす)
    • 無危害(害を与えない)
    • 公正(公平な医療資源の分配)
  2. 具体的な倫理的ジレンマの事例
    • 終末期医療における延命治療の是非
    • 認知症患者のケアにおける自由と安全のバランス
    • 患者の意思と家族の希望の相違
    • 医療資源の限界と公平な分配
  3. 看護師の倫理的判断と行動
    • 患者の代弁者(アドボケイト)としての役割
    • 多職種チームでの倫理的議論への参加
    • 患者と医療者の橋渡し役

構成の立て方

600字という制限の中で、自分が重要と考える倫理的原則を絞り込み、具体的な事例と結びつけて論じる必要があります。例えば以下のような構成が考えられます。

序論(約100字):

  • 医療技術の進歩と倫理的問題の関係性について述べる
  • 自分が特に重要だと考える倫理的原則を簡潔に示す

本論(約400字):

  • 選んだ倫理的原則について詳しく説明する
  • 具体的な事例を挙げて、その原則がどのように適用されるか説明する
  • 原則間の葛藤が生じる場合の考え方にも触れる

結論(約100字):

  • 看護師として倫理的問題にどう向き合うかという自分の考えをまとめる
  • 今後の医療現場での倫理的課題への展望を述べる

解答例

医療技術の進歩は多くの恩恵をもたらす一方で、様々な倫理的問題を生じさせている。医療現場における倫理的判断において、私は特に「患者の自律尊重」と「患者の最善の利益(善行)」という二つの原則のバランスが重要だと考える。 患者の自律尊重とは、十分な情報提供の上での患者自身による決定を尊重することである。例えば、終末期の患者が「これ以上の積極的な治療は望まない」と意思表示した場合、その決定は尊重されるべきである。しかし同時に、医療者には患者の最善の利益を考慮する責任もある。この二つの原則が時に相反するケースとして、認知症のある高齢患者が「点滴を抜きたい」と繰り返す場合が挙げられる。この場合、単に「患者の意思だから」と点滴を中止することは、脱水などのリスクを伴い、患者の最善の利益に反する可能性がある。 このようなジレンマに対して、私は以下の視点が重要だと考える。第一に、患者の意思表示の背景にある思いや価値観を丁寧に理解することである。単なる言葉だけでなく、その人の生活史や大切にしてきた価値観を踏まえた理解が必要である。第二に、患者、家族、医療者間での対話を通じた合意形成である。一度の判断で終わらせるのではなく、状況の変化に応じて継続的に話し合うプロセスが大切だ。 看護師は患者に最も身近な存在として、患者の言葉にならない思いを察知し、代弁する役割を担う。同時に、医学的な側面からの判断も考慮した上で、患者にとって最善の道を多職種チームで模索する必要がある。私は将来、倫理的感受性を磨き、患者の尊厳を守りながらも、その人の真の幸福につながる看護を提供できる看護師になりたいと考えている。

解説

この解答例では、以下のポイントを押さえています。

  1. 序論では、医療技術の進歩と倫理的問題の関係性に触れつつ、特に重要と考える倫理的原則「患者の自律尊重」と「患者の最善の利益」を提示しています。
  2. 本論では、これらの原則について説明し、終末期医療と認知症患者のケアという具体的な事例を挙げて、原則間の葛藤が生じる場合の考え方を示しています。
  3. さらに、倫理的ジレンマに対する自分なりの考え方として、「患者の意思表示の背景理解」と「対話による合意形成」という二つの視点を提案しています。
  4. 結論では、看護師の倫理的役割に触れつつ、自分自身の将来の看護師像を述べて締めくくっています。
  5. 全体を通して、抽象的な原則論だけでなく、具体的な事例と結びつけることで、実践的な倫理観を示しています。

模擬問題挑戦のためのアドバイス

実際に模擬問題に取り組む際には、以下のポイントを意識してみてください。

1. 時間配分を意識する

実際の入試では時間制限があります。模擬問題に取り組む際も、以下のような時間配分を意識しましょう。

  • 課題文読解と構想:15分
  • 下書き:15分
  • 清書:15分
  • 見直し:5分

合計50分程度で解答を完成させる練習をしておくと良いでしょう。

2. 課題文を丁寧に読み込む

課題文には、論じるべき内容のヒントが含まれています。読み飛ばさずに丁寧に読み込み、キーワードや重要な論点を把握しましょう。また、課題文を引用しながら自分の主張を補強することも効果的です。

3. 自分の考えを明確にする

「自分はこの問題についてどう考えるか」という自分自身の立場や主張を明確にしましょう。単に一般論を述べるだけでなく、なぜそう考えるのか、その根拠や具体例も含めて述べることが重要です。

4. 具体例や自分の経験を交える

抽象的な議論だけでなく、具体的な事例や自分の経験を交えることで、説得力のある文章になります。ただし、あくまでも主張を補強するための具体例であり、エピソードの羅列にならないよう注意しましょう。

5. 看護の視点を意識する

看護学科の入試であることを意識し、医療や健康、人間関係などのテーマについて、看護の視点からの考察を含めるようにしましょう。「看護師を目指す自分はこの問題にどう向き合うか」という視点を持つことが重要です。

6. 論理的な構成を心がける

序論・本論・結論という基本的な文章構成を意識し、主張とその根拠が明確に伝わるように書きましょう。また、段落の冒頭で段落の主題を示す「トピックセンテンス」を置くと、読み手に伝わりやすい文章になります。

7. 推敲する習慣をつける

時間に余裕があれば、書き終えた文章を読み返し、誤字脱字や論理の飛躍がないかチェックしましょう。また、文と文、段落と段落のつながりが自然かどうかも確認します。

まとめと次回予告

今回は、「医療と人間関係」と「看護と倫理」という2つのテーマで模擬問題演習を行いました。これらのテーマは、看護学科の入試でよく出題される重要なテーマです。課題文の読み解き方、論点の整理、構成の立て方、そして解答例と解説を通じて、小論文の書き方の実践的なポイントを学びました。

自分で実際に解答を書いてみることで、自分の考えを整理し、論理的に表現する力が身につきます。ぜひ、制限時間を設けて取り組んでみてください。また、書いた解答を友人や先生に読んでもらい、客観的な意見をもらうことも上達の近道です。

次回は「模擬問題演習②」として、「医療と技術」と「共生社会と看護」というテーマで模擬問題に取り組みます。今回の学びを活かして、さらに小論文力を高めていきましょう。

皆さんの小論文学習が実り多きものになることを願っています!

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ブログ 小論文対策 看護学科志望者のための実践ガイド

思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第13回 「自己の経験を看護に結びつける」

こんにちは。あんちもです。

前回は「看護の専門性と社会貢献」について解説しました。今回は「自己の経験を看護に結びつける」をテーマに、皆さん自身の体験や経験をどのように看護と関連づけて表現するかについて解説します。

看護学科の小論文や面接では、「あなたが看護師を目指すきっかけとなった経験は何ですか」「あなたの経験は看護にどのように活かせますか」といった問いがよく出題されます。こうした問いに対して、単なるエピソードの羅列や表面的な感想だけでは説得力に欠けてしまいます。自分の経験を深く掘り下げ、看護の本質と結びつけて表現することが重要です。

今回は、自己の経験を看護に結びつけるための思考法や表現法を学び、説得力のある小論文を書くためのコツを身につけていきましょう。

経験を看護に結びつける意義

まず、なぜ「自己の経験を看護に結びつける」ことが重要なのかを考えてみましょう。

1. 志望動機の真実性を示せる

自分の実際の経験に基づいた志望動機は、説得力と真実性があります。「なぜ看護師になりたいのか」という問いに対して、自分自身の具体的な体験から導き出された答えは、面接官や小論文の読み手に強い印象を与えます。

2. 看護観の土台を形成できる

自分の経験を通して学んだことや感じたことは、その人の看護観(看護に対する考え方や価値観)の土台となります。自己の経験と看護理論や看護の本質を結びつけることで、より深い看護観を形成することができます。

3. 看護実践の原動力になる

自分が実際に体験したことから生まれた思いや考えは、将来の看護実践における強い原動力になります。困難な状況でも踏ん張れる力、看護師として成長し続ける意欲の源泉となるでしょう。

4. 自分の強みや個性を示せる

誰にでもある一般的な理由ではなく、自分だけの経験に基づく理由を述べることで、自分の強みや個性をアピールすることができます。「この人だからこそできる看護」を示すことができるのです。

経験を効果的に振り返るための4つのステップ

自己の経験を看護に結びつけるためには、まず自分の経験を深く振り返り、そこから得た学びや気づきを明確にすることが大切です。以下の4つのステップで、経験を効果的に振り返ってみましょう。

ステップ1: 具体的な体験を思い出す

まず、自分の過去の経験の中から、看護に関連すると思われる具体的な体験を思い出します。以下のような経験が考えられるでしょう。

  • 家族や身近な人の入院・療養を見守った経験
  • ボランティア活動で患者さんや高齢者と関わった経験
  • 自分自身が病気や怪我で医療を受けた経験
  • 学校の看護体験や職場体験で医療現場を見学した経験
  • 部活動やクラブ活動でチームワークや責任感を学んだ経験
  • 困難を乗り越えた経験や人の役に立てた経験

: 「祖母が脳梗塞で入院した際、3ヶ月間ほぼ毎日病院に通い、リハビリの様子を見守った」

ステップ2: その時の状況と自分の感情を詳細に思い出す

次に、その体験の状況や背景、自分がその時に感じた感情や考えを詳細に思い出します。5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識すると、より具体的に思い出すことができます。

: 「高校1年生の夏休み、突然倒れた祖母が地域の総合病院に救急搬送された。最初は言葉も出ず右半身が動かない状態で、家族全員が不安と焦りでいっぱいだった。しかし、看護師さんが毎日笑顔で接し、少しの変化も見逃さず声をかけてくれたおかげで、家族も前向きな気持ちになれた。特に印象的だったのは、祖母が『もう歩けないかもしれない』と泣いた時、看護師さんが『一緒に頑張りましょう』と手を握りながら言ってくれたこと。その言葉が祖母の励みになったようだった。」

ステップ3: その経験から学んだことや気づきを整理する

その体験から自分が何を学んだのか、どのような気づきを得たのかを整理します。単なる感想ではなく、その経験を通して自分の中で何が変わったのか、どのような価値観や考え方が形成されたのかを考えてみましょう。

: 「この経験から、私は三つのことを学んだ。一つ目は、病気や障害は身体だけでなく心にも大きな影響を与えるということ。祖母の『もう歩けない』という言葉には、将来への不安や自己価値の低下が表れていた。二つ目は、専門的な医療知識・技術と同時に、患者の気持ちに寄り添う姿勢が回復に大きく影響するということ。看護師さんの励ましの言葉が、祖母のリハビリへの意欲を高めていた。三つ目は、患者だけでなく家族も支援の対象だということ。看護師さんは私たち家族にも丁寧に説明し、時には励まし、不安を和らげてくれた。」

ステップ4: 看護の本質や価値と結びつける

最後に、その学びや気づきが看護の本質や価値とどのように結びつくのかを考えます。看護の基本概念(人間、健康、環境、看護)や看護の専門性(全人的ケア、予防的視点、生活支援など)と関連づけて考えてみましょう。

: 「この経験を通して、看護とは単に身体的なケアを提供するだけでなく、患者の心理的・社会的側面も含めた全人的ケアであると理解した。看護師は専門的知識と技術を持ちながらも、患者一人ひとりの個別性を尊重し、その人らしさを大切にする姿勢が重要である。また、患者を取り巻く家族などの環境も含めて支援することで、患者のQOL(生活の質)向上や回復を促進する役割を担っている。私はこの看護の本質に深く共感し、将来は患者さんの『生きる』を多角的に支える看護師になりたいと考えるようになった。」

看護に結びつく経験の例と掘り下げ方

次に、どのような経験が看護に結びつくのか、そしてそれをどのように掘り下げればよいのかについて、いくつかの例を見ていきましょう。

1. 病気や入院の経験

自分自身や家族の病気・入院の経験は、看護に直接関連する重要な体験です。

掘り下げるポイント:

  • その時の不安や恐怖、痛みなどの感情をどう乗り越えたか
  • 医療者のどのような言葉や行動に救われたか、または不足を感じたか
  • その経験が自分の「患者の気持ちを理解する力」にどうつながるか
  • 「もし自分が看護師だったら」どのようなケアをしたいと思ったか

例文: 「私が12歳の時、急性虫垂炎で緊急手術を受けた。初めての手術と入院で強い不安を感じていた私に、術前に担当看護師は『どんなことが心配?』と優しく尋ねてくれた。痛みや麻酔への恐怖を正直に話すと、看護師は私の目線に合わせてしゃがみ、『その気持ち、わかるよ。でもきっと大丈夫。私がそばにいるからね』と言ってくれた。この体験から、患者の不安に寄り添い、安心感を与えることの重要性を学んだ。将来看護師として、特に子どもの患者には、目線を合わせて丁寧に説明し、患者の声に耳を傾ける姿勢を大切にしたい。」

2. 介護や看病の経験

家族の介護や看病の経験も、看護に結びつく貴重な体験です。

掘り下げるポイント:

  • どのようなケアを行い、何に難しさを感じたか
  • その人の尊厳をどのように守ろうとしたか
  • その経験が「生活を支援する」という看護の視点とどうつながるか
  • 医療者との関わりの中で気づいたこと

例文: 「高校2年生の時、骨折した祖父の在宅介護を家族と共に3か月間経験した。食事介助やトイレの付き添い、服薬管理など、日常生活の援助を通して、人の暮らしを支えることの大変さと尊さを実感した。特に印象的だったのは、『自分のことは自分でしたい』という祖父の強い思いと、安全を確保する必要性のバランスを取ることの難しさだった。この経験から、看護とは単に身体的な世話をすることではなく、その人の自立心や尊厳を守りながら必要な支援を行うことだと理解した。訪問看護師さんが祖父の意思を尊重しながらも、転倒リスクを減らすための環境調整や工夫を提案してくれたことに深く感銘を受け、私も将来このような看護師になりたいと思った。」

3. ボランティアや職場体験の経験

福祉施設でのボランティアや病院での職場体験も、看護に結びつく重要な経験です。

掘り下げるポイント:

  • どのような活動を行い、どのような対象者と関わったか
  • その活動で嬉しかったこと、難しかったこと
  • 医療・福祉の専門職の姿から学んだこと
  • その経験が自分の看護観形成にどう影響したか

例文: 「高校1年生から2年間、地域の特別養護老人ホームでボランティア活動を続けてきた。レクリエーションのお手伝いや傾聴ボランティアとして多くの高齢者と関わる中で、同じ認知症の症状があっても、一人ひとり全く異なる個性や生活史を持っていることを学んだ。最初は『お年寄りを元気づけたい』という単純な思いで始めた活動だったが、実際には私の方が多くのことを学び、人生の知恵をいただいていると感じるようになった。特に印象的だったのは、施設の看護師が利用者一人ひとりの小さな変化に気づき、その人の生活史や好みを踏まえたケアを提供している姿だった。この経験から、看護とは対象者を一方的に援助するのではなく、その人の人生や価値観を尊重し、双方向の関係性の中で行われるものだと理解するようになった。」

4. 部活動やクラブ活動の経験

一見、医療とは関係なさそうな部活動やクラブ活動の経験も、看護に結びつけることができます。

掘り下げるポイント:

  • チームワークや協調性、リーダーシップについて学んだこと
  • 困難を乗り越えた経験や粘り強く取り組んだ経験
  • 相手の立場に立って考えることの大切さを学んだ場面
  • その経験で培った能力が看護にどう活かせるか

例文: 「私は3年間、バスケットボール部に所属し、最終的にはキャプテンを務めた。試合に勝つためには、一人ひとりが自分の役割を理解し、チーム全体として連携することが不可欠だった。特に印象的だったのは、チームメイトの調子が悪い時に、どう声をかけるかを常に考えていたことだ。同じ言葉でも、人によって受け取り方が全く異なることを実感した。この経験は、看護におけるチーム医療の重要性や、患者一人ひとりの個別性に合わせたコミュニケーションの必要性につながると考えている。また、厳しい練習に耐え、何度も失敗を乗り越えてきた経験は、専門的知識と技術の習得が求められる看護師への道において、困難に立ち向かう精神力の基盤になると確信している。」

5. 人間関係や挫折の経験

人間関係の難しさや挫折の経験も、看護に結びつく重要な糧となります。

掘り下げるポイント:

  • その経験をどのように乗り越えたか、または受け入れたか
  • 人間の複雑さや多様性についてどのような気づきを得たか
  • その経験によって自分自身がどう成長したか
  • その経験が「人を理解する」という看護の基本姿勢にどうつながるか

例文: 「高校2年生の時、クラスメイトとの人間関係で深く悩んだ経験がある。価値観の違いから相手を理解できず、互いに傷つけ合ってしまった。しかし、担任の先生のアドバイスもあり、『相手の立場になって考える』ことを意識的に実践するようになると、少しずつ関係が改善していった。この経験から、人間理解の難しさと重要性を学んだ。看護においても、患者さんの言動の背景には必ず理由があり、表面的な言動だけで判断するのではなく、その人の価値観や生活背景、心理状態を理解しようとする姿勢が大切だと考えるようになった。また、自分自身の感情や価値観を自覚し、コントロールすることの重要性も学んだ。この『自己理解』と『他者理解』の経験は、患者さんと信頼関係を築く看護師になるための貴重な糧になると確信している。」

小論文での表現のポイント

自己の経験を看護に結びつけた小論文を書く際の具体的なポイントを紹介します。

1. 具体的なエピソードを挙げる

抽象的な記述ではなく、具体的なエピソードや場面を描写することで、説得力が増します。

抽象的: 「祖母の入院をきっかけに看護師に興味を持った」 具体的: 「祖母が肺炎で入院した際、夜間の高熱と呼吸困難で不安になる祖母に、看護師さんが優しく声をかけながら体位を調整し、痰の吸引を行う姿に感銘を受けた」

2. 経験からの学びを深く掘り下げる

単なる感想や表面的な学びにとどまらず、その経験から何を考え、どう変化したのかを深く掘り下げて表現しましょう。

表面的: 「ボランティア活動で高齢者と関わり、人の役に立つ喜びを知った」 掘り下げた: 「特別養護老人ホームでのボランティア活動では、初めは『お年寄りを元気づける』という一方的な気持ちで参加したが、実際には利用者の方々の人生経験から学ぶことが多く、支援する側・される側という単純な関係ではなく、互いに影響し合う関係性の中にケアの本質があると気づいた」

3. 看護の概念や価値と結びつける

個人的な経験を、看護の基本概念や価値と結びつけることで、看護への理解の深さを示すことができます。

単なる経験の記述: 「妹の入院中、看護師さんが親切で感謝した」 看護と結びつけた記述: 「妹の入院中、看護師さんが医学的ケアを提供するだけでなく、不安を抱える妹の気持ちに寄り添い、また親である母の疲労にも気づいて声をかけてくれる姿から、看護とは患者だけでなく家族も含めた全体を対象とし、身体的・精神的・社会的側面から包括的に支援するものだと理解した」

4. 将来の看護師像と結びつける

経験から学んだことを、将来どのような看護師になりたいかという展望と結びつけることで、志望動機の一貫性と強さを示せます。

単なる抱負: 「優しい看護師になりたい」 経験と結びつけた展望: 「祖父の入院中、夜間せん妄で混乱する祖父に、根気強く同じ説明を繰り返し、時には手を握って安心感を与えてくれた看護師の姿に深く感銘を受けた。この経験から、私も将来、認知機能の低下や混乱状態にある患者さんの心理を理解し、その人の尊厳を守りながら安心感を提供できる看護師になりたいと考えている」

5. 自分の強みや個性を示す

経験を通して培った自分の強みや個性を示すことで、「あなただからこそできる看護」をアピールしましょう。

一般的な記述: 「コミュニケーション能力を活かして看護師になりたい」 個性を示した記述: 「部活動のマネージャーとして様々な性格の部員と関わる中で、相手の表情や態度から心情を読み取り、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを取ることを学んだ。この『観察力』と『適応力』は、患者さん一人ひとりの個別性に合わせたケアを提供する看護において重要な強みになると考えている」

実践演習:自己の経験を看護に結びつける小論文を書いてみよう

以下のテーマで小論文を書く練習をしてみましょう。

テーマ:「あなたが看護師を目指すきっかけとなった経験は何ですか。その経験からどのようなことを学び、将来どのような看護師になりたいと考えていますか。600字程度で述べなさい。」

解答例

私が看護師を目指すきっかけとなったのは、高校1年生の夏、祖母が脳梗塞で倒れ、3ヶ月間入院した経験である。突然の出来事に家族全員が動揺する中、看護師の方々の存在が私たちを支えた。 特に印象的だったのは、右半身麻痺で自力での日常生活が困難になった祖母が、「もう何もできない」と涙する場面だった。その時、担当看護師は祖母の手をそっと握り、「できることから少しずつ一緒に頑張りましょう」と穏やかに語りかけた。そして翌日からは、祖母ができることを見つけ出し、小さな成功体験を積み重ねていくよう援助していた。この関わりにより、祖母は少しずつ自信を取り戻し、リハビリにも前向きに取り組むようになった。 この経験から、私は三つのことを学んだ。一つ目は、病気や障害によって心理的にも大きな影響を受ける患者の気持ちに寄り添うことの重要性。二つ目は、その人の残された機能や強みに着目し、「できること」を支援することの大切さ。三つ目は、希望を持ち続けられるような関わりが回復への意欲を高めるということだ。 また、看護師は患者の身体的ケアだけでなく、精神的支援や生活再建までを視野に入れた包括的な支援を行う専門職だと実感した。私自身が途方に暮れていた時、「焦らなくても大丈夫。一歩ずつですよ」と声をかけてくれた看護師の言葉に救われた経験から、患者だけでなく家族も含めたケアの重要性も理解した。 将来は、この経験から学んだ「患者の気持ちに寄り添う力」「その人の強みを見出す視点」「希望を支える姿勢」を大切にし、特にリハビリテーション看護の分野で、患者さんが自分らしく生きる道を一緒に見つけられる看護師になりたい。

ポイント解説

  • 具体的なエピソード(祖母の入院、看護師の言葉かけの場面)を挙げています
  • この経験から学んだことを3つに整理し、看護の本質と結びつけて考察しています
  • 患者だけでなく家族へのケアについても触れ、看護の包括的な視点を示しています
  • 将来の看護師像が、経験から学んだことと直接結びついています
  • 最後に具体的な希望分野(リハビリテーション看護)にも触れています

まとめと次回予告

今回は「自己の経験を看護に結びつける」について解説しました。自己の経験を看護に結びつけるためには、具体的な体験を詳細に思い出し、そこから学んだことや気づきを整理し、看護の本質や価値と結びつけて考えることが大切です。また、小論文では具体的なエピソードを挙げ、経験からの学びを深く掘り下げ、将来の看護師像と結びつけて表現することがポイントです。

皆さんも、自分の経験を振り返り、それがどのように看護への道につながっているのかを考えてみてください。単なる「きっかけ」にとどまらず、その経験から何を学び、どのような看護観を形成したのかを深く掘り下げることで、より説得力のある志望動機や小論文を書くことができるでしょう。

次回は「模擬問題演習①」です。これまで学んできた小論文の書き方のポイントを活かして、実際の入試で出題されるような問題に取り組んでみましょう。課題文の読み解き方から論理的な文章の組み立て方まで、総合的な演習を行います。

皆さんの小論文学習が実り多きものになることを願っています!

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ブログ 小論文対策 看護学科志望者のための実践ガイド

思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第12回 「看護の専門性と社会貢献」

こんにちは。あんちもです。

前回は「チーム医療の視点からの考察」について解説しました。今回は「看護の専門性と社会貢献」をテーマに、看護という職業がもつ独自の専門性とは何か、そしてその専門性を活かして社会にどのように貢献できるのかについて考えていきましょう。

看護学科の入試、特に小論文や面接では「看護師として何を大切にしたいか」「看護師として社会にどう貢献したいか」といった問いが頻出です。こうした問いに答えるためには、看護の専門性についての理解を深めることが不可欠です。また、高齢化や医療の変化に伴い、看護師の役割は病院内だけでなく地域社会へと広がりをみせています。看護師として社会にどのように貢献できるのかという視点も持っておきましょう。

看護の専門性とは何か

「看護の専門性とは何か」という問いは、一見シンプルですが、実は深く考えると奥が深いものです。ここでは、いくつかの視点から看護の専門性について考えてみましょう。

1. 生活者の視点でのケア

看護の最大の特徴は、「生活者」としての人間を対象としたケアを行うことです。医師が主に「疾患」に焦点を当てるのに対し、看護師は「病を持つ人」全体に焦点を当てます。つまり、単に症状や検査データを見るだけでなく、その人の生活習慣、価値観、家族関係、社会的背景まで含めて総合的に捉えるのが看護の視点です。

例えば: 同じ糖尿病の患者さんでも、独居の高齢者、小さな子どもを育てる母親、長距離トラックの運転手など、生活背景によって必要なケアや指導内容は大きく異なります。看護師はこうした個別性を大切にしながらケアを提供します。

2. 「生きる」を支える実践知

看護の専門性の中核には、人間の「生きる」を支える実践的な知識や技術があります。これは単なる医学的知識だけでなく、人間の発達段階や心理、環境との相互作用など、幅広い知識を統合したものです。

例えば: 呼吸困難のある患者さんに対して、医学的知識(呼吸生理学など)に基づいて状態を観察しながら、その人が最も楽に呼吸できる姿勢の工夫や、不安を和らげるための声かけなど、総合的なケアを提供します。

3. 予防的視点と健康増進

看護の専門性として、すでに起こった問題への対応だけでなく、「予防」と「健康増進」の視点があります。健康障害が起こる前に予防的に関わったり、その人が持つ健康な側面を強化したりするアプローチです。

例えば: 入院患者さんの場合、現在の疾患の治療をサポートするだけでなく、長期の臥床による褥瘡(床ずれ)や廃用症候群を予防するケア、退院後の生活を見据えた健康教育なども看護師の重要な役割です。

4. 継続的な関わりと変化の見守り

看護の専門性として、24時間365日の継続的な関わりがあります。短時間の診察や処置ではなく、継続的に患者さんと関わることで見えてくる変化や回復のプロセスを見守り、支援することが看護の重要な役割です。

例えば: 終末期の患者さんに対して、身体的な症状の変化を捉えながら、心理的な変化や家族の受容プロセスにも寄り添い、その時々に必要なケアを提供します。

5. 代弁者(アドボケイト)としての役割

看護師は、自分の意思を十分に表明できない患者さんの代弁者(アドボケイト)としての役割も担っています。患者さんの権利や尊厳を守り、患者さん中心の医療が実現されるよう働きかけるのも専門性の一つです。

例えば: 認知症の高齢者や意識のない患者さんの場合、そのしぐさや表情から思いを汲み取り、医療チームにその患者さんの意向や必要性を伝える役割を担います。

看護師による社会貢献の形

次に、看護師がその専門性を活かしてどのように社会に貢献できるのかを考えていきましょう。従来の病院中心のイメージを超えて、看護師の社会貢献は多様な形で広がっています。

1. 医療機関での直接的なケア提供

最も伝統的な形ですが、病院や診療所などの医療機関で患者さんに直接ケアを提供することが、看護師の基本的な社会貢献です。

具体例:

  • 急性期病院での救命救急や手術後の患者さんのケア
  • 慢性期病院でのリハビリテーション支援や長期療養患者のケア
  • 診療所での外来患者さんへの処置や健康指導

2. 地域における健康支援

高齢化社会の進展に伴い、地域で生活する人々の健康を支える看護師の役割が重要になっています。

具体例:

  • 訪問看護師として在宅療養者の生活を支援
  • 地域包括支援センターでの高齢者の健康相談や介護予防活動
  • 保健師として地域全体の健康増進や感染症予防活動
  • 産業看護師として職場の健康管理や労働衛生活動

3. 健康教育と予防医療

病気になってからの対応だけでなく、予防的な関わりや健康教育も看護師の重要な社会貢献です。

具体例:

  • 学校看護師として子どもたちの健康教育や心身のケア
  • 生活習慣病予防のための健康教室の開催
  • 母子保健活動での妊産婦や乳幼児の健康支援
  • 感染症対策の啓発や予防接種の推進

4. 災害時の医療支援

災害時における看護師の役割も重要な社会貢献の一つです。

具体例:

  • 災害急性期の救護活動や応急処置
  • 避難所での健康管理や感染症予防
  • 被災者の心のケアやPTSD対策
  • 災害弱者(高齢者・障害者・乳幼児など)への特別なケア

5. グローバルヘルスへの貢献

国境を越えた健康課題にも、看護師は貢献することができます。

具体例:

  • 国際協力機構(JICA)などを通じた途上国への医療支援
  • 難民キャンプでの医療ボランティア
  • 国際的な感染症対策への参加
  • グローバルヘルスに関する研究や政策提言

6. 看護教育と研究

次世代の看護師を育てることや、よりよいケアを追求するための研究も、重要な社会貢献です。

具体例:

  • 看護学校や大学での教育活動
  • 臨床現場での後輩指導や実習生の教育
  • 看護研究による新しいケア方法の開発
  • エビデンスに基づく看護実践の普及

7. 医療政策への参画

より大きな社会システムのレベルでも、看護師はその専門性を活かして貢献することができます。

具体例:

  • 行政機関での医療政策の立案や評価
  • 医療安全や感染管理などの専門的立場からの提言
  • 看護師の労働環境改善のための活動
  • 医療資源の適正配分や医療アクセスの公平性への取り組み

小論文で表現する「看護の専門性と社会貢献」

このテーマが小論文で出題された場合、どのように論じればよいでしょうか。以下に、小論文作成のポイントをいくつか紹介します。

1. 具体性を持たせる

抽象的な表現だけにとどまらず、具体的な例や場面を挙げることで説得力が増します。

抽象的な表現: 「看護師は患者の生活全体を見る専門職である」

具体性を持たせた表現: 「看護師は、患者さんの疾患だけでなく、例えば独居の高齢糖尿病患者さんであれば、自己注射が可能かどうか、栄養バランスの取れた食事の準備ができるか、低血糖時の対応ができるかなど、生活全体を視野に入れたケアを提供する専門職である」

2. 自分自身の考えや体験を織り交ぜる

教科書的な説明だけでなく、なぜあなたがそう考えるのか、どのような体験からその考えに至ったのかを述べることで、説得力と個性が生まれます。

例文: 「私が看護の専門性として特に重要だと考えるのは、患者さんの代弁者としての役割である。この考えに至ったのは、祖父が入院した際、認知症のために自分の思いを十分に表現できない祖父の小さなサインを読み取り、適切なケアにつなげてくれた看護師の姿に感銘を受けたからだ」

3. 多角的な視点から論じる

看護の専門性や社会貢献について、一面的ではなく多角的に論じることで、深い理解を示すことができます。

例文: 「看護師の社会貢献は、直接的なケア提供という側面だけでなく、予防的・教育的側面、研究・政策的側面など、多層的に捉えることができる。例えば、糖尿病患者のケアでは、適切な治療をサポートするだけでなく、セルフケア能力を高める教育的関わり、さらには糖尿病予防のための地域活動など、様々なレベルでの貢献が可能である」

4. 現代社会の課題と結びつける

現代社会が直面している健康課題や医療課題と看護の専門性を結びつけることで、社会的意義を強調できます。

例文: 「高齢化と人口減少が進む日本社会において、医療機関中心のケアから地域・在宅中心のケアへのシフトが求められている。このような社会変化の中で、看護師には医療と生活をつなぐ専門職として、地域で暮らす人々の健康を支援する新たな役割が期待されている」

5. 将来展望を示す

現状分析だけでなく、将来の看護や医療がどうあるべきか、自分はどのように貢献したいかという展望を示すことも重要です。

例文: 「今後の超高齢社会においては、治療を中心とした医療から予防と共生を重視した医療へのパラダイムシフトが必要である。私は看護師として、病気の治療だけでなく、人々が自分らしく健康に生きるための伴走者となり、一人ひとりの健康の社会的決定要因にも目を向けた包括的な支援を提供したい」

実践演習:看護の専門性と社会貢献に関する小論文を書いてみよう

以下のテーマで小論文を書く練習をしてみましょう。

テーマ:「看護の専門性とは何か、またその専門性を活かして社会にどのように貢献したいと考えるか、あなたの考えを600字程度で述べなさい。」

解答例

看護の専門性とは、医学的知識と人間理解を統合し、生活者としての人間全体に焦点を当てたケアを提供することにあると考える。医師が主に疾患に焦点を当てるのに対し、看護師は病を持つ人の身体的側面だけでなく、精神的・社会的側面も含めた全人的ケアを行う。また、24時間継続して患者に関わることで見えてくる微細な変化を捉え、予防的視点も持ちながら「生きる」を支援するのが看護の本質である。 例えば、脳卒中後の高齢患者の場合、単に麻痺や言語障害などの症状管理だけでなく、その人の生活史や価値観を尊重しながら、残存機能を活かした生活再建を支援する。また、自分の思いを十分に表現できない患者の代弁者(アドボケイト)となり、その人らしさを守るのも看護師の重要な専門性である。 この専門性を活かした社会貢献として、私は特に地域における予防的健康支援に関心がある。現代社会では、超高齢化と疾病構造の変化により、病院完結型の医療から地域完結型の医療への転換が求められている。この変化の中で、看護師には医療と生活をつなぐ架け橋としての役割が期待されている。 私自身は、将来的に訪問看護師として在宅療養者を支援したいと考えている。祖父の在宅療養を支えた訪問看護師の姿に感銘を受けたことがきっかけだ。専門的な医療処置だけでなく、その人の生活環境を整え、家族も含めたケアを提供することで、住み慣れた地域で自分らしく生きることを支援したい。 また、地域の健康教室などを通じて予防的な健康支援にも取り組みたい。生活習慣病や認知症などは早期からの予防が重要であり、看護の専門的知識を活かした健康教育により、地域全体の健康増進に貢献できると考えている。「治す医療」と「支える医療」の両面から、人々のQOL向上に寄与する看護師を目指したい。

ポイント解説

  • 冒頭で看護の専門性について明確に定義しています
  • 具体的な例(脳卒中後の高齢患者)を挙げて説明しています
  • 自分が特に関心を持つ社会貢献の形(地域における予防的健康支援)を示しています
  • 個人的な体験(祖父と訪問看護師)を織り交ぜて説得力を高めています
  • 現代社会の課題(超高齢化と医療の変化)と結びつけて論じています
  • 具体的な将来ビジョン(訪問看護師、健康教室の開催)を示しています

まとめと次回予告

今回は「看護の専門性と社会貢献」について解説しました。看護の専門性とは、生活者の視点でのケア、「生きる」を支える実践知、予防的視点と健康増進、継続的な関わりと変化の見守り、代弁者としての役割など、多面的に捉えることができます。また、その専門性を活かした社会貢献の形も、医療機関での直接的なケア提供から、地域における健康支援、健康教育と予防医療、災害時の医療支援、グローバルヘルスへの貢献、看護教育と研究、医療政策への参画まで、多様に広がっています。

看護学科の入試で「看護の専門性と社会貢献」について問われた際には、具体的な例を挙げながら、自分自身の考えや体験を織り交ぜ、多角的な視点から論じることが大切です。また、現代社会の課題と結びつけ、将来展望を示すことで、より説得力のある小論文になるでしょう。

次回は「自己の経験を看護に結びつける」について解説します。自分の経験や体験をどのように看護と結びつけて表現するか、説得力のある小論文を書くためのコツを詳しく学んでいきましょう。

皆さんの小論文学習が実り多きものになることを願っています!

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思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第10回 「患者さんとの対話を想定した記述」

こんにちは。あんちもです。

前回は「看護現場の課題発見と解決策の提案」について解説しました。今回は「患者さんとの対話を想定した記述」をテーマに、患者さんとのコミュニケーションを文章で表現する方法や、患者さんの心情に寄り添った対応の書き方について解説します。

看護の現場では、患者さんとの信頼関係を築くコミュニケーション能力が非常に重要です。そして、看護学科の小論文や面接では、「患者さんへの声かけ」や「患者さんとの会話」を想定して記述する問題がよく出題されます。この回では、患者さんの気持ちを理解し、適切な言葉で対応できる力を、文章表現を通して身につけていきましょう。

患者さんとの対話を想定した記述の意義

看護学科の入試で「患者さんとの対話」を問う問題が出題される理由は主に3つあります。

1. コミュニケーション能力の評価

看護師にとって患者さんとのコミュニケーション能力は必須のスキルです。言葉の選び方、伝え方によって、患者さんの不安を和らげることも、逆に増幅させてしまうこともあります。対話を想定した記述は、受験生のコミュニケーション感覚を評価する手段となります。

2. 共感性・人間性の評価

患者さんの立場に立って考え、気持ちに寄り添える人間性があるかどうかは、看護師として重要な資質です。対話の記述を通して、受験生の共感性や人間観を間接的に評価できます。

3. 看護観の評価

患者さんへの言葉かけの中には、自分の看護観が自然と表れます。「看護とは何か」「患者さんとはどういう存在か」といった根本的な考え方が、対話の記述に反映されるのです。

対話記述問題の典型パターン

看護学科の小論文や面接でよく出題される対話記述問題には、いくつかのパターンがあります。

1. 不安を抱える患者さんへの声かけ

例題: 「手術を翌日に控えた患者さんが『怖くて眠れない』と訴えています。あなたならどのように声をかけますか。」

2. 治療への拒否感を示す患者さんへの対応

例題: 「糖尿病の治療のため食事制限が必要な患者さんが『こんな食事じゃ生きている意味がない』と言っています。あなたならどう対応しますか。」

3. 子どもや高齢者など特定の患者層への対応

例題: 「初めて入院する5歳の子どもが泣いて親と離れたがらない場面での対応を考えなさい。」

4. 家族への説明や支援

例題: 「認知症の親の介護に疲れ果てている家族に対して、あなたならどのように声をかけますか。」

5. 多職種連携の場面での対話

例題: 「患者さんの退院計画について、医師との意見が異なる場面での対話を想定して記述しなさい。」

対話記述のための3つの基本ステップ

患者さんとの対話を適切に記述するためには、以下の3つのステップを意識しましょう。

1. 患者さんの心理状態を分析する

まず、問題文から患者さんの置かれている状況や心理状態を分析します。

例えば:

  • 不安の原因は何か(手術への恐怖、予後への不安、家族への心配など)
  • 怒りや拒否の背景にある感情(無力感、孤独感、自己価値の低下など)
  • 文化的背景や価値観の影響
  • 年齢や認知機能による理解度の違い

2. 対応の基本方針を決める

患者さんの心理状態を踏まえ、対応の基本方針を決めます。

代表的な方針:

  • 傾聴と共感を中心とする
  • 情報提供と説明を重視する
  • 自己決定を支援する
  • 具体的な解決策を提案する
  • 専門職として支持的な姿勢を示す

3. 具体的な言葉に落とし込む

基本方針に基づいて、具体的にどのような言葉で対応するかを考えます。この際、以下のポイントに注意しましょう。

  • 患者さんの言葉(感情)を否定しない
  • 専門用語を適切に言い換える
  • オープンクエスチョンを活用する
  • 具体的で実行可能な提案をする
  • 非言語的コミュニケーション(表情、姿勢など)にも言及する

対話記述の実践テクニック

1. 「傾聴→共感→情報提供→提案」の流れを意識する

効果的な対話には一定の流れがあります。まず患者さんの話をしっかり聴き(傾聴)、気持ちに寄り添い(共感)、必要な情報を提供し(情報提供)、一緒に解決策を考える(提案)という流れです。

例文: 「手術が怖くて眠れないんですね(傾聴)。不安を感じるのは当然のことだと思います(共感)。明日の手術の流れについてもう少し詳しくお話ししましょうか(情報提供)。リラックスするためにできることもいくつかありますので、一緒に試してみませんか(提案)。」

2. 具体的な表現を心がける

抽象的な言葉よりも、具体的な表現の方が伝わりやすく、説得力があります。

抽象的: 「何か力になれることはありますか?」 具体的: 「今夜眠るためにホットミルクをお持ちしましょうか?また、手術室の様子や麻酔の感覚について質問があれば、お答えできますよ。」

3. 患者さんの言葉を引用する

患者さんの言葉を引用することで、「しっかり聴いている」というメッセージを伝えられます。

例文: 「『こんな食事じゃ生きている意味がない』とおっしゃいましたが、食事の制限がとても辛く感じられているのですね。」

4. 非言語コミュニケーションにも言及する

言葉だけでなく、目線や姿勢、声のトーン、タッチングなどの非言語コミュニケーションも重要です。

例文: 「お子さんの隣に座り、目線を合わせながら、やさしい声で『お名前は何ですか?』と尋ねます。」

5. 患者さんの自己決定を尊重する表現を用いる

患者さんの自律性を尊重し、選択肢を提示する表現を心がけましょう。

一方的: 「この薬を飲んだ方がいいですよ」 自己決定尊重: 「この薬の効果と副作用についてご説明します。どのように判断されますか?」

NG表現と言い換え例

患者さんとの対話では、避けるべき表現があります。以下に代表的なNG表現と適切な言い換え例を紹介します。

1. 否定から入る表現

NG: 「そんなことを心配しても仕方ありません」 OK: 「そのような不安をお持ちなのですね。具体的にどのような点が心配ですか?」

2. 安易な励まし

NG: 「大丈夫、きっとうまくいきますよ」 OK: 「不安な気持ちはとても自然なことです。これまでの手術の経過を見ると、多くの患者さんは順調に回復されています」

3. 命令形の使用

NG: 「薬を必ず飲んでください」 OK: 「お薬を継続的に服用することで、症状の改善が期待できます。一緒に続けていきましょう」

4. 専門用語の多用

NG: 「心筋梗塞の再発リスクを低減するために、抗血小板薬の服用が必要です」 OK: 「心臓の血管が詰まる病気が再び起こらないように、血液をサラサラにするお薬が大切です」

5. 一般化された安易な同意

NG: 「みんな最初はそう思うものですよ」 OK: 「そのようにお感じになるのは自然なことだと思います。もう少し詳しく教えていただけますか?」

場面別対応例

場面1: 手術前の不安

状況: 翌日に初めての手術を控えた60代の患者さんが、夜間不安を訴えている。

対応例: 「明日の手術が心配で眠れないのですね(傾聴)。初めての手術ということで、不安になるのは当然のことだと思います(共感)。」

「具体的にはどのようなことが心配ですか?(オープンクエスチョン)」

(患者が麻酔の不安を話したと仮定して) 「麻酔についてのご心配なのですね。麻酔科の先生は経験豊富で、手術中はずっとあなたの状態を見守っています。また、痛みを感じないように細心の注意を払っています(情報提供)。」

「今夜は、リラックスするために深呼吸の方法をご紹介しましょう。また、温かい飲み物も安眠に役立つかもしれません。どちらがよろしいですか?(提案と選択肢)」

「私も明日の手術に立ち会いますので、一緒に乗り越えていきましょう(支持)。何か他にご質問があればいつでも聞いてくださいね。」

場面2: 治療への拒否感

状況: 糖尿病の治療のため厳格な食事制限を指示された50代男性患者が「こんな食事じゃ生きている意味がない」と発言した。

対応例: 「『こんな食事じゃ生きている意味がない』とおっしゃいましたが、食事制限がとても辛く感じられているのですね(患者の言葉を引用した共感)。」

「食べることが楽しみだったのに、それが制限されることは大変つらいことだと思います(感情の理解)。」

「差し支えなければ、これまではどのような食事を楽しまれていたのか教えていただけますか?(患者理解のための質問)」

「糖尿病の食事療法は、全く楽しみを奪うものではなく、量や組み合わせを工夫することで、美味しく食べながら血糖値をコントロールすることができます(情報提供)。」

「栄養士と相談して、〇〇さんの好みを活かした食事プランを考えることもできますよ。一緒にできそうな方法を探していきませんか?(個別化した提案)」

対話記述の小論文を書く際の注意点

1. 自分の立場(役割)を明確にする

看護学生なのか、看護師なのか、どのような立場で対応するのかを明確にしましょう。立場によって使える言葉や提供できる情報が変わってきます。

2. 現実的な対応を心がける

理想論に走りすぎず、実際の医療現場で実行可能な対応を考えましょう。特に時間的・物理的制約を考慮することが大切です。

3. 患者の反応も想定する

一方的な声かけだけでなく、患者さんの反応も想定し、対話の流れを意識しましょう。患者さんの反応に応じて柔軟に対応する姿勢も示せるとよいでしょう。

4. 根拠を示す

なぜそのような対応をするのかの根拠(理論やエビデンス)を簡潔に示すと、より説得力が増します。

5. 自分の価値観を押しつけない

患者さんの文化的背景や価値観を尊重し、自分の価値観を押しつけないよう注意しましょう。

実践演習:対話記述の小論文を書いてみよう

以下のテーマで小論文を書く練習をしてみましょう。

テーマ:「初めて点滴を受ける5歳の子どもが怖がっている場面での対応について、あなたの考えを600字程度で述べなさい。」

解答例

初めての点滴に怯える5歳児への対応として、私は「安心感の提供」「説明の工夫」「主体性の尊重」「継続的な関わり」の四つの視点から関わりたい。 まず、子どもの目線に合わせて膝をつき、穏やかな表情と優しい声のトーンで「お名前は何かな?」と尋ね、ラポール形成から始める。怖がる気持ちを否定せず、「初めてのことで怖いんだね。そういう気持ち、わかるよ」と共感の言葉をかける。 次に、子どもの理解力に合わせた説明を工夫する。医療器具をそのまま見せるのではなく、「この小さなストローからお水のようなお薬が入って、体の中の悪い虫と戦ってくれるんだよ」など、子どもが理解しやすい表現を用いる。また、人形やぬいぐるみを使ったプレパレーションを行い、視覚的に理解を促すことも効果的である。 子どもの主体性を尊重する関わりも重要だ。「どっちの腕がいいかな?」「テープはキャラクターのがいい?普通のがいい?」など、選択肢を提示し、自己決定の機会を設ける。これにより、子どもは受け身の存在ではなく、治療に参加している感覚を持つことができる。 さらに、点滴中も定期的に訪室し、「とても上手にできているね」「○分経ったよ、あと少しだね」など、励ましと見通しを伝える声かけを続ける。点滴が終わった後には、「とても勇敢だったね。すごいよ」と具体的に褒め、達成感を感じられるような関わりを心がける。 このような関わりは、単に今回の点滴をスムーズに行うだけでなく、子どもの医療への恐怖心を軽減し、将来の治療にも良い影響を与えると考える。また、家族に対しても「お子さんの気持ちに寄り添っていただき、ありがとうございます」と声をかけ、親の不安軽減にも配慮したい。

ポイント解説

  • 冒頭で対応の基本方針を示しています
  • 具体的な声かけの言葉を「」で示しています
  • 非言語コミュニケーション(姿勢、目線、声のトーン)にも言及しています
  • 子どもの発達段階に合わせた説明の工夫を示しています
  • 選択肢を提供する形で子どもの主体性を尊重する姿勢を示しています
  • 点滴中・点滴後のフォローまで言及し、継続的な関わりを示しています
  • 家族への配慮にも触れています

まとめと次回予告

今回は「患者さんとの対話を想定した記述」について解説しました。患者さんとの対話を適切に記述するためには、患者さんの心理状態を分析し、対応の基本方針を決め、具体的な言葉に落とし込むという3つのステップが重要です。また、「傾聴→共感→情報提供→提案」の流れを意識し、具体的な表現や患者さんの言葉の引用、非言語コミュニケーションへの言及、自己決定の尊重など、実践的なテクニックを活用することが大切です。

患者さんとの対話力は、看護師にとって最も重要なスキルの一つです。日常生活の中でも、相手の立場に立って考え、適切な言葉を選ぶ練習を心がけてみてください。そうした積み重ねが、看護師としての対話力の土台となるはずです。

次回は「チーム医療の視点からの考察」について解説します。多職種連携の重要性、チーム医療における看護師の役割、協働のための具体的なアプローチなどについて詳しく学んでいきましょう。

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思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第9回 「看護現場の課題発見と解決策の提案」

こんにちは。あんちもです。

前回は「なぜ看護師になりたいのか」の深掘りについて解説しました。今回は「看護現場の課題発見と解決策の提案」をテーマに、医療・看護の現場にある問題点を見つけ、それに対する解決策を提案する力を養う方法を解説します。

看護の現場では日々さまざまな課題が発生しています。長時間労働、人手不足、医療安全、患者とのコミュニケーション…。こうした課題に気づき、解決策を考え、実行できる力は、看護師にとって非常に重要なスキルです。また、小論文や面接でもよく出題されるテーマですよね。今回は、課題発見と解決策提案の考え方とコツを一緒に学んでいきましょう!

課題発見力を身につける意義

看護師を目指すみなさんが「課題発見力」と「解決策提案力」を身につける意義は大きく3つあります。

1. 看護の質向上への貢献

日々の看護実践の中で課題を見つけ、解決していくことは、看護の質向上に直結します。例えば、「高齢患者の転倒予防」「服薬管理の正確性向上」など、小さな改善の積み重ねが大きな成果につながります。

2. チーム医療での存在感

課題を的確に把握し、建設的な解決策を提案できる看護師は、チーム医療の中で重要な存在となります。医師や他の医療職と協働する際に、看護の視点からの気づきを伝えられることは大きな強みです。

3. 看護の専門性の発揮

課題を発見し解決する過程は、看護の専門的思考そのものです。患者の生活や心理面も含めた全人的視点から課題を捉え、解決策を考えることは、看護ならではの専門性の発揮につながります。

看護現場でよくある課題のカテゴリー

看護現場の課題と言っても、実にさまざまな種類があります。代表的なカテゴリーを見てみましょう。

1. 患者ケアに関する課題

  • 褥瘡(床ずれ)予防と管理
  • 高齢患者の転倒・転落防止
  • 認知症患者のケア方法
  • 終末期患者の苦痛緩和
  • 感染予防と管理

2. 業務・システムに関する課題

  • 記録業務の効率化
  • 夜勤・交代制勤務の負担軽減
  • 多職種との情報共有方法
  • 物品管理・医療機器の適正使用
  • 電子カルテの活用と課題

3. 人材・教育に関する課題

  • 新人看護師の育成と離職防止
  • ベテラン看護師の知識・技術の継承
  • 継続教育の機会確保
  • 看護師のメンタルヘルスケア
  • 専門性の向上と評価

4. 患者・家族との関係に関する課題

  • インフォームドコンセントの支援
  • 患者の権利擁護(アドボカシー)
  • クレーム対応と信頼関係構築
  • 多様な文化的背景を持つ患者への対応
  • 家族支援と退院調整

これらの課題は、実際の医療現場で日常的に直面するものばかりです。小論文対策としても、これらのカテゴリーについて平常時から考えを深めておくと、本番で慌てずに済みますよ。

課題発見のための3つの視点

では、課題を発見するためには、どのような視点を持てばよいのでしょうか?ここでは3つの重要な視点をご紹介します。

1. 患者・家族の視点

医療者の視点だけでなく、患者や家族の立場に立って考えることが大切です。

例えば: 「高齢患者への説明が理解されていないのではないか?」 「家族が医療者に質問しづらい雰囲気があるのではないか?」 「長時間の待ち時間が患者のストレスになっているのではないか?」

2. 安全・効率の視点

医療安全の確保と業務の効率化は常に意識すべき視点です。

例えば: 「与薬ミスのリスクが高まる場面はどこか?」 「記録業務に時間がかかりすぎて、直接ケアの時間が減っていないか?」 「夜勤での疲労が日中の判断力低下につながっていないか?」

3. システム・環境の視点

個人の努力だけでなく、組織やシステムの問題として課題を捉える視点も重要です。

例えば: 「情報共有の仕組みに改善の余地はないか?」 「物品の配置や動線に無駄はないか?」 「リソースの偏りはないか?」

課題分析のフレームワーク

課題を見つけたら、それを分析するためのフレームワークを活用しましょう。有名なものをいくつか紹介します。

1. SWOT分析

内部要因としての「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」と、外部要因としての「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」を分析するフレームワークです。

:「認知症患者の徘徊予防」というテーマでSWOT分析

  • 強み:経験豊富な看護師が多い、チームワークが良い
  • 弱み:夜間の人員が少ない、施設構造上の問題
  • 機会:センサー技術の発展、家族の協力的な姿勢
  • 脅威:患者の高齢化、身体拘束への法的・倫理的制約

2. 5W1H分析

「Who(誰が)」「What(何を)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」という視点から課題を整理します。

:「服薬管理の問題」を5W1Hで分析

  • Who:特に高齢患者、複数疾患を持つ患者
  • What:薬の飲み忘れ、重複服薬
  • When:特に退院直後、薬の変更時
  • Where:自宅での服薬管理
  • Why:薬の理解不足、生活リズムの乱れ
  • How:お薬カレンダーの活用、家族の協力

3. 特性要因図(フィッシュボーン)

問題の原因を「人」「方法」「機械」「材料」などのカテゴリーに分けて分析するフレームワークです。

:「褥瘡発生」の特性要因図

  • :知識不足、観察不足、ケア技術の差
  • 方法:体位変換の間隔、アセスメント方法
  • 環境:ベッドの種類、マットレスの質
  • 患者要因:栄養状態、皮膚の状態、活動性

解決策提案のポイント

課題を分析したら、次は解決策を考えます。効果的な解決策を提案するためのポイントを紹介します。

1. 具体性を持たせる

抽象的な提案より、具体的で実行可能な提案の方が説得力があります。

抽象的:「患者とのコミュニケーションを改善する」 具体的:「毎日の検温時に3分間、患者の話に耳を傾ける時間を確保する」「週1回のカンファレンスで患者の希望や懸念を共有する時間を設ける」

2. 複数の視点からアプローチする

一つの課題に対して、異なる角度からの解決策を考えましょう。

:「転倒予防」に対する多角的アプローチ

  • 環境面:床材の見直し、手すりの設置
  • ケア面:定期的な見回り、トイレ誘導
  • 教育面:患者・家族への転倒リスク説明
  • システム面:転倒リスクアセスメントの徹底

3. 段階的な実施計画を示す

大きな変革は一度に行うのが難しいことも。短期・中期・長期に分けた段階的な計画が現実的です。

:「電子カルテ導入」の段階的計画

  • 短期(1-3ヶ月):スタッフ教育、試験運用
  • 中期(3-6ヶ月):部分的導入、問題点の抽出と修正
  • 長期(6ヶ月-1年):完全導入、評価とさらなる改善

4. 費用対効果を考慮する

限られた資源の中で最大の効果を得るための視点も重要です。

:「感染予防対策」の費用対効果

  • 高価な設備導入よりも、手指衛生の徹底という基本的で費用のかからない対策が効果的
  • 高額な使い捨て製品の全面導入よりも、適材適所での使用が経済的かつ環境にも配慮

5. 評価方法も提案する

解決策と同時に、その効果を測定する方法も提案できると良いでしょう。

:「患者満足度向上」の評価方法

  • 退院時アンケートの実施(数値化)
  • 定期的な患者インタビュー(質的評価)
  • クレーム数の変化の追跡

実践演習:課題解決の小論文を書いてみよう

以下のテーマで小論文を書く練習をしてみましょう。

テーマ:「高齢者の転倒予防における看護の役割と具体的な対策について、あなたの考えを述べなさい」(600字程度)

解答例

高齢化社会の進展に伴い、高齢者の転倒予防は医療・介護の現場における重要課題となっている。転倒は高齢者の生活の質を著しく低下させるだけでなく、時に生命を脅かす事態を招く。私は高齢者の転倒予防における看護の役割として、「アセスメント」「環境調整」「教育」「多職種連携」の4つの側面から具体的対策を提案したい。 まず「アセスメント」においては、入院時または初回訪問時に転倒リスクを評価するツール(例:Morse Fall Scale)を活用し、個別のリスク因子を特定することが重要である。薬剤(特に睡眠薬や降圧剤)の影響、視力・聴力の低下、筋力低下などの身体的要因、認知機能の状態など、多角的な評価が求められる。 次に「環境調整」では、患者の動線を考慮した家具の配置、夜間の適切な照明確保、手すりの設置、滑りにくい床材の選択などが効果的である。特に病院から在宅へ移行する際には、生活環境の事前評価と調整が不可欠だ。 「教育」の側面では、患者本人への適切な靴の選び方や、転倒リスクの高い動作(急な立ち上がり、暗所での移動)の注意点、そして家族への見守り方法の指導が含まれる。また、筋力維持のための簡単な運動指導も看護の重要な役割である。 最後に「多職種連携」として、理学療法士による歩行訓練、薬剤師による薬剤調整の提案、ケアマネージャーとの環境整備の相談など、チームでアプローチすることが効果的である。看護師はこの連携の中心的役割を担い、情報共有と調整を行うことが求められる。 これらの対策を個々の高齢者の特性に合わせて実施することで、転倒の発生率を低減し、高齢者がより安全に、そして自立した生活を送ることができるよう支援することが看護の使命であると考える。

ポイント解説

  • 冒頭で課題の社会的背景と重要性を示しています
  • 「アセスメント」「環境調整」「教育」「多職種連携」という4つの視点から解決策を整理しています
  • 各視点について具体的な対策例を挙げています
  • 多職種連携の重要性にも触れ、チーム医療の視点を示しています
  • 最後に対策の目的と看護の役割をまとめています

まとめと次回予告

今回は「看護現場の課題発見と解決策の提案」について解説しました。現場の課題に気づき、分析し、解決策を提案する力は、看護師にとって非常に重要なスキルです。小論文や面接でこのテーマが出題された時は、ぜひ今回紹介したフレームワークやポイントを活用してみてください。

日頃から看護に関するニュースや記事に触れ、「ここに課題があるな」「こんな解決策はどうだろう」と考える習慣をつけることで、課題解決力は徐々に身についていきます。看護師を目指すみなさんが、将来、医療現場の問題解決に貢献できる人材になることを願っています!

次回は「患者さんとの対話を想定した記述」について解説します。患者さんとのコミュニケーションを文章で表現する方法、患者さんの心情に寄り添った対応の書き方などについて詳しく学んでいきましょう。

皆さんの小論文学習が実り多きものになることを願っています!

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ブログ 小論文対策 看護学科志望者のための実践ガイド

思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第8回 「なぜ看護師になりたいのか」の深掘り

こんにちは。あんちもです。

前回は「時事問題と医療・看護の関連性」について解説しました。今回は「なぜ看護師になりたいのか」の深掘りをテーマに、志望動機を説得力のある形で表現する方法を解説します。

「なぜ看護師を目指すのですか?」——これは看護学科の小論文や面接でほぼ必ず問われる質問ですよね。でも「人の役に立ちたいから」「看護師の仕事に憧れているから」といった表面的な回答では、あなたの本当の思いは伝わりません。今回は、みなさんが心の中に持っているはずの「看護師になりたい」という気持ちを、どう掘り下げ、どう表現すれば良いかを一緒に考えていきましょう!

志望動機を深掘りする意義

なぜ志望動機が重要なのか?

看護の道を志す理由は、あなたの看護観の原点となり、将来の看護実践の基盤となります。また、看護の道は決して平坦ではなく、困難に直面したときに踏みとどまる力にもなります。さらに、あなたならではの志望動機は、他の志願者との差別化にもつながるのです。

ありがちな志望動機の例

多くの受験生が書きがちな志望動機をいくつか挙げてみましょう:

  • 「人の役に立つ仕事がしたいから」
  • 「家族が病気になった時に看護師さんに助けられたから」
  • 「医療ドラマを見て憧れたから」
  • 「人と接することが好きだから」

これらの動機自体は決して悪くありません。でも、このままでは何千人もの志願者と同じ答えになってしまいます。大切なのは、こうした基本的な動機を掘り下げ、あなただけの物語にすることです。

志望動機を深掘りする5つの方法

1. 「原体験」を掘り下げる

看護師を目指すきっかけとなった原体験があるなら、その時の具体的な状況、あなたが感じたこと、考えたことを掘り下げましょう。

掘り下げ前: 「祖母の入院をきっかけに看護師を目指すようになりました」

掘り下げ後: 「祖母が入院した際、看護師さんが忙しい中でも祖母の話に耳を傾け、不安を和らげる姿に心を動かされました。特に印象的だったのは、祖母が夜間に痛みを訴えた時、看護師さんが単に痛み止めを与えるだけでなく、祖母の手を優しく握りながら『大丈夫ですよ』と声をかける姿でした。その時、専門的な医療行為だけでなく、患者さんの心に寄り添うことの大切さを実感し、私もそのような看護師になりたいと強く思うようになったのです」

2. 「なぜ?」を5回繰り返す

自分の志望理由に対して「なぜ?」を5回繰り返し問いかけることで、表面的な理由から本質的な動機へと掘り下げられます。

  • 「看護師になりたい」→「なぜ?」
  • 「人の役に立ちたいから」→「なぜ人の役に立ちたいのか?」
  • 「人が喜ぶ姿を見ると嬉しいから」→「なぜそれが看護という形なのか?」
  • 「直接的に人の支えになれる仕事がしたいから」→「なぜ直接的な支援が重要なのか?」
  • 「人生の大切な場面に寄り添える仕事に価値を感じるから」

このように掘り下げていくと、「人の役に立ちたい」という一般的な動機から、あなた固有の価値観や看護に対する思いが見えてきます。

3. 自分の強みと看護を結びつける

自分の強み、得意なこと、価値観と看護という仕事の特性を結びつけることで、あなたならではの志望動機が生まれます。

: 「私は小さい頃から観察力が鋭いと言われてきました。家族の小さな表情の変化に気づいたり、友人の悩みを察知したりすることが多いのです。この『気づく力』は看護において重要な要素だと考えています。患者さんの微細な変化や言葉にならないサインを見逃さず、早期に対応することで、より質の高いケアが提供できると思います。将来は特に急性期医療の現場で、この観察力を活かした看護を実践したいと考えています」

4. 看護の多様性を理解する

看護の仕事は病院だけでなく、在宅、学校、企業、国際協力など多岐にわたります。看護のどの側面に魅力を感じるのかを考えることで、志望動機が具体的になります。

: 「私が特に関心を持っているのは地域看護の分野です。私の祖父母が住む田舎では、高齢化が進み、医療機関まで遠い中で生活している高齢者が多くいます。そんな方々が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう支援する訪問看護の仕事に魅力を感じています。将来は訪問看護師として、医療過疎地域での在宅療養支援に携わりたいと考えています」

5. 看護の社会的意義を考える

看護という仕事が社会においてどのような意義を持つのかを考えることで、志望動機に深みが出ます。

: 「私は、医療が高度に専門化する現代社会において、看護師は『人間らしさ』を守る最後の砦になり得ると考えています。テクノロジーが進化しても、患者さんの不安や痛みに共感し、その人らしい生活を支える役割は、看護にしかできないものだと思います。特に超高齢社会において、単なる延命ではなく、一人ひとりの尊厳ある生を支える看護の役割はますます重要になると考え、その一翼を担いたいと思っています」

志望動機を表現する際のポイント

1. 具体的なエピソードを入れる

抽象的な言葉よりも、具体的な体験や場面の描写の方が説得力があります。「祖母の入院時に…」「ボランティア活動で…」「実際に看護師の方にお話を聞いて…」など、あなたの体験に基づいたエピソードを織り交ぜましょう。

2. 自己分析を深める

自分の性格、価値観、強み・弱みをしっかり分析し、それらが看護という仕事とどう結びつくのかを考えましょう。自己分析が深いほど、説得力のある志望動機になります。

3. 看護の理解を示す

看護という仕事の現実や課題についての理解を示すことで、単なる憧れではなく、現実を踏まえた上での志望であることをアピールできます。書籍、インターネット、オープンキャンパス、看護師へのインタビューなどを通じて知識を深めましょう。

4. 将来展望を含める

「看護師になりたい」という現在の思いだけでなく、看護師になった後どのような看護を実践したいのか、どのような分野で活躍したいのかなど、将来展望も含めると良いでしょう。

5. 素直な言葉で表現する

難しい言葉や飾り過ぎた表現よりも、あなたの思いが素直に伝わる言葉で表現することが大切です。読み手に「この人の言葉は本当だな」と感じてもらえる文章を心がけましょう。

実践演習:志望動機を深掘りしてみよう

以下の例を参考に、自分自身の志望動機を深掘りしてみましょう。

テーマ:「あなたが看護師を目指す理由と、どのような看護師になりたいかを述べなさい」(600字程度)

解答例

私が看護師を目指す原点は、中学生の時の祖母の入院体験にある。認知症を患っていた祖母は、環境の変化に混乱し、夜間に大声で叫んだり、点滴を抜こうとしたりしていた。そんな祖母に対し、担当の看護師さんは決して怒ることなく、祖母の目線に合わせて穏やかに話しかけ、不安を和らげていた。特に印象的だったのは、看護師さんが祖母の若い頃の話を引き出し、その会話の中で祖母が徐々に落ち着いていく様子だった。人は病気になっても、一人の人間として尊重されることで安心感を得られるのだと実感した瞬間だった。 この体験から、私は「その人らしさを守る看護」に強く惹かれるようになった。現代医療は高度に専門化し、効率性が重視される傾向にあるが、そうした中でも患者さん一人ひとりの個性や生活背景、価値観を大切にする看護を実践したいと考えている。 私は幼い頃から「聴く力」が得意だと言われてきた。友人の悩みを聞く際も、相手の言葉の奥にある思いを汲み取ることを心がけている。この力を活かし、患者さんの言葉にならないニーズや思いを察知できる看護師になりたい。 将来は、特に高齢者看護や緩和ケアの分野で活躍したいと考えている。人生の最終章を生きる方々が、最期まで自分らしく尊厳を持って生きられるよう支援することに、看護の深い意義を感じるからだ。そのためには、コミュニケーション能力だけでなく、確かな医学的知識や技術も必要であることを理解している。看護学を学ぶ中で、人間理解と科学的思考の両方を深め、「その人らしさを守る」という私の看護観を形にしていきたい。

ポイント解説

  • 具体的なエピソード(祖母の入院体験)から始まり、そこから得た気づきを説明
  • 「聴く力」という自分の特性と看護を結びつけている
  • 看護の中でも特に関心のある分野(高齢者看護・緩和ケア)に触れている
  • 「その人らしさを守る看護」という自分なりの看護観を示している
  • 現実的な理解(知識や技術の必要性)も示している

まとめと次回予告

今回は「なぜ看護師になりたいのか」の深掘りについて解説しました。表面的な志望動機から一歩踏み込み、あなただけの看護への思いを掘り下げることの重要性、そのための具体的方法について学びました。

志望動機は小論文や面接だけのためのものではありません。あなた自身の看護の原点として、これからの学びや実践の根幹となるものです。ぜひ時間をかけて、自分の看護師になりたい理由を深く掘り下げてみてくださいね。

次回は「看護現場の課題発見と解決策の提案」について解説します。医療・看護の現場にはどのような課題があるのか、そしてそれらの課題に対してどのような解決策を提案できるのかについて、具体的な手法を学んでいきましょう。

皆さんの小論文学習が実り多きものになることを願っています!

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ブログ 小論文対策 看護学科志望者のための実践ガイド

思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第7回 「時事問題と医療・看護の関連性」

こんにちは。あんちもです。

前回は「共感と客観性のバランス」について解説しました。今回は「時事問題と医療・看護の関連性」をテーマに、社会で注目されている問題と医療・看護を結びつけて考察する方法を解説します。

看護・医療の世界は社会と密接に関わっています。少子高齢化、災害、感染症、テクノロジーの進化など、様々な社会的課題が医療・看護の現場に影響を与えています。看護小論文では、こうした時事問題と医療・看護の関連性について問われることが多く、社会の動向に関心を持ち、それを看護の視点から考察する力が求められます。

時事問題を取り入れる意義と効果

1. 社会に開かれた視野を示す

看護は社会と密接につながっている専門職です。時事問題に関心を持ち、それを看護と結びつけて考察することは、社会に開かれた広い視野を持っていることを示します。

2. 現代的課題への対応力をアピール

新たな健康課題、制度改革、テクノロジーの進化など、常に新しい課題が生まれています。時事問題に言及することで、そうした変化への対応力をアピールできます。

3. 思考の具体性と説得力の向上

具体的な時事問題を例に挙げることで、思考に具体性が生まれ、論述の説得力が増します。

4. 時代感覚と問題意識のアピール

最新の時事問題に触れることで、時代感覚と問題意識の高さをアピールできます。

医療・看護に関連する主要な時事問題

1. 人口動態と社会構造の変化

  • 少子高齢化の進行と2025年問題
  • 核家族化と単身世帯の増加
  • 地域間格差と医療過疎

2. 健康課題と疾病構造の変化

  • 生活習慣病の増加とメタボリック対策
  • メンタルヘルスの問題と自殺予防
  • 新興・再興感染症と対策

3. 医療・看護の提供体制と制度

  • 地域包括ケアシステムの構築
  • 医療従事者の働き方改革
  • 医療安全と質の向上

4. テクノロジーと看護の未来

  • ICTと医療・看護の連携
  • 遠隔医療と看護の可能性
  • ロボティクスの活用

5. 多様性と倫理的課題

  • 多文化共生社会と看護
  • LGBTQと医療・看護
  • 生命倫理の課題

時事問題と医療・看護を結びつけるアプローチ法

1. 「社会現象から医療・看護への影響」アプローチ

社会で起きている現象が、医療・看護にどのような影響を与えているかを考察する方法です。

例:「デジタル技術の発展により、患者は受診前にインターネットで症状を調べ、SNSで情報交換することが一般的になっている。看護師には情報の選別や解釈を支援するナビゲーターとしての役割も求められるようになっている。」

2. 「医療・看護からの社会課題解決」アプローチ

医療・看護の視点や技術が、社会課題の解決にどう貢献できるかを考察する方法です。

例:「社会的孤立の問題に対して、地域看護の果たす役割は大きい。保健師による地域のサロン活動支援や、訪問看護師による定期的な健康チェックは、孤立した高齢者の発見と支援に貢献している。」

3. 「時事問題から看護の本質を考える」アプローチ

話題になっている社会問題を通して、看護の本質や価値について深く考察する方法です。

4. 「過去と現在の比較」アプローチ

過去の出来事や状況と現在の時事問題を比較することで、医療・看護の発展や変化を考察する方法です。

5. 「多角的視点からの考察」アプローチ

一つの時事問題を、医療者、患者、家族、社会など様々な立場から多角的に考察する方法です。

小論文で時事問題に触れる際の注意点

1. 正確な情報と理解に基づく言及

時事問題について触れる際は、正確な情報と理解に基づいて言及することが重要です。

2. 一面的な見方や思い込みに注意

時事問題には様々な側面があり、一面的な見方や思い込みに基づく考察は避けるべきです。

3. 社会問題と看護の関連性の明確化

単に時事問題に言及するだけでなく、それが看護とどのように関連するのかを明確に示すことが重要です。

4. バランスのとれた論述

特定の政治的立場や価値観に偏った主張は避け、多様な価値観や立場に配慮したバランスのとれた論述を心がけましょう。

5. 時事問題の押し込みに注意

問題と関係ない時事問題を無理に押し込むことは避け、テーマに関連する時事問題を自然に取り入れましょう。

看護の視点から考察すべき最新の時事問題例

1. 新型コロナウイルス感染症のパンデミック経験

  • 感染対策と患者ケアの両立
  • リモート・非接触ケアの可能性と限界
  • 医療従事者の心理的ストレスとレジリエンス

2. 医療DXと看護業務の変化

  • 電子カルテの普及と情報活用
  • AIやロボティクスの看護への応用
  • デジタルリテラシーと情報倫理

3. 多文化共生社会と看護

  • 在留外国人の増加と医療アクセス
  • 言語・文化的障壁の克服
  • 異文化理解とカルチュラルコンピテンス

4. 超高齢社会と地域包括ケアシステム

  • 地域包括ケアシステムの構築
  • 在宅医療・看護の充実
  • 多職種連携とケアマネジメント

5. 気候変動と健康問題

  • 気候変動による健康影響
  • 災害看護と防災・減災
  • サステナブルヘルスケア

実践演習例

テーマ:「デジタル社会の進展に伴う健康課題と看護職の役割について」

・デジタル社会の健康課題:ストレートネック、ブルーライト影響、SNSのメンタルヘルス影響、リモートワークでの運動不足や孤立 ・看護職の役割:学校保健での健康教育、産業保健でのオンライン保健指導 ・デジタル技術の活用:ウェアラブルデバイスの活用、オンライン看護相談 ・看護の本質的役割:テクノロジーと人間性の橋渡し、デジタルデバイドへの配慮

次回予告と今回のまとめ

今回は「時事問題と医療・看護の関連性」について解説しました。社会で注目されている問題と医療・看護を結びつけて考察する方法や、時事問題を小論文に効果的に取り入れるためのアプローチ法について学びました。医療・看護は社会と密接に関わる分野であり、時事問題への関心と考察は、看護職を目指す者として重要な資質です。

次回は「なぜ看護師になりたいのか」の深掘りについて解説します。志望動機を掘り下げ、説得力のある形で表現する方法について詳しく解説していきます。

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ブログ 小論文対策 看護学科志望者のための実践ガイド

思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第6回 「共感と客観性のバランス」

共感と客観性のバランス:看護小論文における重要性

看護は患者や家族の苦痛や不安に寄り添う「共感性」と、冷静な判断で適切なケアを提供する「客観性」の両方が求められる専門職です。看護小論文でも同様に、この二つの視点をバランスよく文章に反映させることが重要です。

共感と客観性の意味と看護における重要性

共感(エンパシー)とは 共感とは、他者の感情や状況を理解し、その人の立場に立って考えたり感じたりする能力です。看護における共感は、感情的共感、認知的共感、共感的コミュニケーション、共感的行動などの要素を含みます。

客観性とは 客観性とは、個人的な感情や先入観にとらわれず、事実や証拠に基づいて状況を判断する姿勢です。看護における客観性には、科学的思考、批判的思考、公平性、専門的判断などの側面があります。

バランスの重要性 看護において共感と客観性のいずれかに極端に偏ると様々な問題が生じます。共感に偏りすぎると感情的巻き込まれによる燃え尽き症候群のリスクや客観的判断が曇る可能性があります。一方、客観性に偏りすぎると患者を「症例」としてしか見ず、信頼関係が構築できないことがあります。

小論文における共感性の表現方法

  1. 具体的な事例や状況の描写:抽象的な議論だけでなく、具体的な患者や家族の状況を描写する
  2. 患者・家族の視点からの考察:医療者側からだけでなく、患者や家族の視点を取り入れる
  3. 感情や価値観に関する言及:患者のQOLや尊厳に関わる感情面や価値観について触れる
  4. 言葉遣いや表現の工夫:「患者を管理する」ではなく「患者さんに寄り添う」など
  5. 自己の経験や感情の適切な開示:自分自身の経験や感情を適切に開示する

小論文における客観性の表現方法

  1. データや根拠の活用:統計データや研究結果を適切に引用し、主張に説得力を持たせる
  2. 多角的な視点の提示:様々な立場や観点から課題を検討する
  3. 論理的構成と明確な根拠づけ:感情に訴えるだけでなく、論理的な文章構成を心がける
  4. 専門的知識や概念の適切な活用:看護や医療の専門的知識や概念を適切に活用する
  5. 偏りのない中立的な表現:特定の立場に偏った表現を避ける

共感と客観性のバランスを取る具体的方法

  1. 「共感から客観へ」の展開パターン:導入部分では共感的な事例から始め、徐々に客観的な分析へと展開する
  2. 「客観から共感へ」の展開パターン:客観的なデータから始め、患者や家族の心情に焦点を当てる
  3. 並列型の展開パターン:同じテーマについて、共感的側面と客観的側面の両方を並列的に述べる

テーマ別のバランスの取り方

終末期ケアに関するテーマの場合:共感的側面をより強調しつつ、専門的知識も示す
医療安全や感染対策に関するテーマの場合:客観的側面をより強調しつつも、患者体験にも触れる

共感と客観性のバランスを評価するチェックリスト

共感性の評価

  • 患者・家族の視点や体験について具体的に言及しているか
  • 対象者の感情や心理状態について考察しているか
  • 生活者としての患者の日常や価値観に触れているか など

客観性の評価

  • 主張に対して具体的な根拠を示しているか
  • 多角的な視点から問題を分析しているか
  • 論理的な文章構成になっているか など

バランスの評価

  • 共感的記述と客観的記述の両方が含まれているか
  • 共感的理解から客観的分析へ、あるいはその逆の流れがあるか
  • 主観的意見と客観的事実が明確に区別されているか など

小論文でよくある問題点

  1. 共感に偏りすぎる例:感情的な表現が多く、具体的な根拠や論理的思考が不足している
  2. 客観性に偏りすぎる例:データや理論が中心で、人間への温かみや共感的理解が感じられない
  3. 両者が分断されている例:共感的記述と客観的記述が別々に存在し、統合されていない

まとめ

看護における共感と客観性の両立は、質の高い看護の本質です。小論文でも、患者・家族の気持ちに寄り添う温かい共感性と、医療者として冷静に判断する客観性の両方を表現することが重要です。この二つの視点をバランスよく文章に反映させることで、看護師を志す者としての資質をアピールできるでしょう。