共感と客観性のバランス:看護小論文における重要性
看護は患者や家族の苦痛や不安に寄り添う「共感性」と、冷静な判断で適切なケアを提供する「客観性」の両方が求められる専門職です。看護小論文でも同様に、この二つの視点をバランスよく文章に反映させることが重要です。
共感と客観性の意味と看護における重要性
共感(エンパシー)とは 共感とは、他者の感情や状況を理解し、その人の立場に立って考えたり感じたりする能力です。看護における共感は、感情的共感、認知的共感、共感的コミュニケーション、共感的行動などの要素を含みます。
客観性とは 客観性とは、個人的な感情や先入観にとらわれず、事実や証拠に基づいて状況を判断する姿勢です。看護における客観性には、科学的思考、批判的思考、公平性、専門的判断などの側面があります。
バランスの重要性 看護において共感と客観性のいずれかに極端に偏ると様々な問題が生じます。共感に偏りすぎると感情的巻き込まれによる燃え尽き症候群のリスクや客観的判断が曇る可能性があります。一方、客観性に偏りすぎると患者を「症例」としてしか見ず、信頼関係が構築できないことがあります。
小論文における共感性の表現方法
- 具体的な事例や状況の描写:抽象的な議論だけでなく、具体的な患者や家族の状況を描写する
- 患者・家族の視点からの考察:医療者側からだけでなく、患者や家族の視点を取り入れる
- 感情や価値観に関する言及:患者のQOLや尊厳に関わる感情面や価値観について触れる
- 言葉遣いや表現の工夫:「患者を管理する」ではなく「患者さんに寄り添う」など
- 自己の経験や感情の適切な開示:自分自身の経験や感情を適切に開示する
小論文における客観性の表現方法
- データや根拠の活用:統計データや研究結果を適切に引用し、主張に説得力を持たせる
- 多角的な視点の提示:様々な立場や観点から課題を検討する
- 論理的構成と明確な根拠づけ:感情に訴えるだけでなく、論理的な文章構成を心がける
- 専門的知識や概念の適切な活用:看護や医療の専門的知識や概念を適切に活用する
- 偏りのない中立的な表現:特定の立場に偏った表現を避ける
共感と客観性のバランスを取る具体的方法
- 「共感から客観へ」の展開パターン:導入部分では共感的な事例から始め、徐々に客観的な分析へと展開する
- 「客観から共感へ」の展開パターン:客観的なデータから始め、患者や家族の心情に焦点を当てる
- 並列型の展開パターン:同じテーマについて、共感的側面と客観的側面の両方を並列的に述べる
テーマ別のバランスの取り方
終末期ケアに関するテーマの場合:共感的側面をより強調しつつ、専門的知識も示す
医療安全や感染対策に関するテーマの場合:客観的側面をより強調しつつも、患者体験にも触れる
共感と客観性のバランスを評価するチェックリスト
共感性の評価
- 患者・家族の視点や体験について具体的に言及しているか
- 対象者の感情や心理状態について考察しているか
- 生活者としての患者の日常や価値観に触れているか など
客観性の評価
- 主張に対して具体的な根拠を示しているか
- 多角的な視点から問題を分析しているか
- 論理的な文章構成になっているか など
バランスの評価
- 共感的記述と客観的記述の両方が含まれているか
- 共感的理解から客観的分析へ、あるいはその逆の流れがあるか
- 主観的意見と客観的事実が明確に区別されているか など
小論文でよくある問題点
- 共感に偏りすぎる例:感情的な表現が多く、具体的な根拠や論理的思考が不足している
- 客観性に偏りすぎる例:データや理論が中心で、人間への温かみや共感的理解が感じられない
- 両者が分断されている例:共感的記述と客観的記述が別々に存在し、統合されていない
まとめ
看護における共感と客観性の両立は、質の高い看護の本質です。小論文でも、患者・家族の気持ちに寄り添う温かい共感性と、医療者として冷静に判断する客観性の両方を表現することが重要です。この二つの視点をバランスよく文章に反映させることで、看護師を志す者としての資質をアピールできるでしょう。