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思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド:第1回 「看護小論文の特徴と対策の基本姿勢」

こんにちは。あんちもです。

前シリーズでは小論文の基本的な考え方や様々なテーマ別のアプローチ方法をお伝えしてきました。皆さんからいただいた温かい反響に心から感謝しています。今回からは、新たなシリーズとして「思考力を鍛える小論文術:看護学科志望者のための実践ガイド」をスタートします。

看護学科を志望する皆さんにとって、小論文は単なる入試の一科目ではなく、将来の医療人としての思考力や倫理観を問われる重要な機会です。このシリーズでは、看護学科特有の小論文対策に焦点を当て、実践的なスキルを身につけていただくことを目指します。

なぜ看護学科の小論文は特別なのか

看護学科の小論文には、他学部・学科とは異なる特徴があります。それは「人間を対象とする専門職」としての資質を見極めようとする出題傾向です。

看護の小論文では、以下の要素が特に重視されます:

  1. 共感性と客観性のバランス:患者の気持ちに寄り添いながらも、冷静な判断ができるか
  2. 倫理的思考力:医療現場で生じる様々なジレンマに対する考え方
  3. 多角的な視点:患者、家族、医療者など異なる立場からの考察ができるか
  4. 具体と抽象の往復:具体的な事例と普遍的な価値をつなげられるか
  5. 問題解決思考:課題を発見し、実践的な解決策を考えられるか

これらは単に「正解」を書くことではなく、あなたの「考え方のプロセス」そのものを評価対象としています。

看護学科が求める人材像を理解する

看護学科の小論文対策の第一歩は、各大学・学校が求める人材像を正確に理解することです。多くの看護系大学・学校では、アドミッション・ポリシー(入学者受入方針)において以下のような要素を挙げています:

  • 人間に対する深い関心と理解
  • 他者を思いやる気持ちと行動力
  • 科学的・論理的思考力
  • コミュニケーション能力
  • 生涯学び続ける姿勢
  • チームで協働する力

志望校のアドミッション・ポリシーを丁寧に読み解き、そこで示されている価値観や能力を小論文の中で表現できるようにしましょう。

看護小論文の代表的な出題パターン

看護学科の小論文には、いくつかの典型的な出題パターンがあります。

1. 医療・看護に関する課題文型

医療や看護に関する文章を読み、その内容について考察を求める問題です。

例題

高齢化社会における在宅看護の役割について述べた次の文章を読み、あなたの考えを800字程度で述べなさい。

この型では、課題文の正確な理解と、そこから発展させた自分の考えのバランスが重要です。

2. 医療倫理型

医療現場で生じる倫理的ジレンマについて考えを問う問題です。

例題

終末期医療において、患者の希望と医学的判断が異なる場合、看護師としてどのように対応すべきか、あなたの考えを800字程度で述べなさい。

この型では、多角的な視点と倫理的思考プロセスの展開が求められます。

3. 時事問題関連型

医療や社会の時事問題と看護を結びつけて考えさせる問題です。

例題

新型感染症のパンデミックを経験した社会において、看護師に求められる役割と資質について、あなたの考えを800字程度で述べなさい。

この型では、社会の動向への関心と看護の専門性の接点を見出す力が試されます。

4. 志望動機・自己PR型

なぜ看護師を目指すのか、自分のどのような特性が看護に適しているかを問う問題です。

例題

あなたが看護師を志望する理由と、看護師になるためにこれまで取り組んできたことについて、800字程度で述べなさい。

この型では、自己分析と看護の本質理解の接点を見出すことが重要です。

小論文の基本構成を看護的視点で考える

小論文の基本構成(序論・本論・結論)は変わりませんが、看護学科の小論文では各パートに特有の要素を盛り込むことが効果的です。

序論の書き方

序論では、テーマへの問題意識と自分の立場を明確にします。看護学科の小論文では、以下の点を意識しましょう:

  • 医療・看護の文脈における問題の位置づけ
  • 患者や医療従事者など、複数の視点からの問題認識
  • 看護の理念や価値観との関連性

例文

超高齢社会を迎えた日本において、在宅看護の重要性はますます高まっている。病院中心の医療から地域・在宅ケアへの転換は、単に医療費削減の観点からだけでなく、患者のQOL(生活の質)向上の視点からも注目されている。こうした状況の中で、看護師には従来の病院内での役割に加え、患者の生活環境全体を視野に入れた新たな専門性が求められていると考える。

本論の書き方

本論では、具体的な事例や根拠を基に論理を展開します。看護学科の小論文では:

  • 医療・看護の現場を具体的にイメージした例示
  • エビデンス(統計データや研究結果)の適切な活用
  • 複数の視点(患者、家族、医療者など)からの検討
  • 医療倫理の原則(自律尊重、無危害、善行、公正)を踏まえた議論

例文

在宅看護において特に重要なのは、患者の「生活者」としての側面に焦点を当てることである。病院では患者として画一的に扱われがちな人々も、自宅では一人ひとり異なる生活習慣や価値観を持つ個人である。例えば、糖尿病の食事療法一つとっても、病院食のように栄養管理された食事を提供するのではなく、その人の食習慣や家族構成、経済状況などを考慮した実行可能な食事指導が必要となる。 また、在宅看護では医療職だけでなく介護職や福祉職など多職種との連携が不可欠である。日本看護協会の調査(2020)によれば、在宅看護に携わる看護師の89%が「多職種連携のスキル」を重要視している。このことからも、看護師には医学的知識だけでなく、チームをコーディネートする能力や社会資源を活用する知識が求められていることがわかる。

結論の書き方

結論では、論点をまとめ、看護師としての展望や決意を示します:

  • 看護の専門性や価値観に基づいた自分なりの結論
  • 将来の看護師としての具体的な行動指針や目標
  • 医療・社会への貢献の視点

例文

在宅看護の役割は今後さらに拡大し、その質が問われていくだろう。そのためには、従来の医療モデルから生活モデルへの転換、すなわち「治す」から「支える」看護への意識改革が求められる。私は将来看護師として、患者一人ひとりの生活背景や価値観を尊重しながら、医療と日常生活の橋渡しとなれるよう、幅広い知識とコミュニケーション能力を磨いていきたい。それが、高齢化社会における看護の真の役割を果たすことにつながると確信している。

実践練習:小論文テーマ例

以下のテーマで400字程度の小論文を書いてみましょう。

テーマ:「看護師に必要なコミュニケーション能力とは何か、あなたの考えを述べなさい」

解答例

看護師に必要なコミュニケーション能力とは、単なる会話の技術ではなく、患者の言葉にならないニーズを察知し、適切に応答する総合的な対人関係能力である。まず基本となるのは「傾聴」の姿勢だ。患者の言葉だけでなく、表情や態度、声のトーンなどの非言語情報から真のニーズを読み取る力が求められる。 また、医療現場では専門用語を平易な言葉に置き換え、患者の理解度に合わせて説明する「翻訳者」としての役割も重要である。さらに、チーム医療においては他職種との効果的な情報共有や連携を促進するコミュニケーションも不可欠だ。 これらの能力は生まれつきのものではなく、意識的な訓練によって磨かれる。私は日常生活においても、相手の立場に立って考え、言葉を選ぶ習慣をつけることが、看護師としてのコミュニケーション能力向上につながると考える。そして、この能力こそが患者との信頼関係構築の基盤となり、質の高い看護を提供する鍵となるのである。

今後の学習のポイント

看護学科の小論文対策として、今後意識していただきたいポイントをいくつか挙げます:

  1. 医療・看護の基本的な知識と時事問題の理解:新聞やニュースから医療関連の話題をチェックする習慣をつけましょう
  2. 看護の専門雑誌や書籍に触れる:看護師がどのような思考で働いているかを知ることが大切です
  3. 多角的な視点を持つ練習:一つの出来事を患者、家族、医療者それぞれの立場から考えてみましょう
  4. 「なぜ?」を深掘りする習慣:表面的な理解にとどまらず、原因や背景を考察する習慣をつけましょう
  5. 看護の価値観を自分の言葉で表現する:看護の理念や目的について自分なりの理解を深めましょう

まとめ

看護学科の小論文は、単なる文章力だけでなく、将来の医療人としての資質や思考力を評価するものです。このシリーズを通じて、皆さんが「看護的思考」と「論理的表現」の両方を身につけ、自信を持って入試に臨めるようサポートしていきます。

次回は「医療・看護系キーワードの理解と活用法」について解説します。医療や看護の専門用語を適切に使いこなし、説得力のある小論文を書くためのコツをお伝えしていきますので、ぜひお楽しみに。

皆さんの小論文学習が実り多きものになることを願っています。